53話 ロクvsレッド
作戦『鬼ごっこ』で二手に分かれることになった僕とウンスイくんは、それぞれ敵を引きつけることになった。僕の相手はレッドなのだが、時間稼ぎが目的なのでこの場から脱出しようと通路に逃げようとするが、一足先に通路に回り込み、僕を逃すまいとその場所を陣取っている。
「どうした、逃げるのか?ホワイト!逃げるなら俺を倒してからにするんだなぁー!」
そんなのできたらとっくにやってるよ!でもどう考えたってレッドが僕より強いのは明白だし、魔法だって仮面のせいで……?そういえば、どうしてあの時、僕の魔法は無効化されなかったんだ?仮面は打ち消しの効果があるはずなのに僕の魔法はレッドに通じた。その理由が分かればこの状況を打破することができるかもしれない。
僕は牽制の逆風をレッドに放つ。レッドはその攻撃を避けず、両腕を身体の前でクロスし受け止めようとするが、レッドに当たる直前、逆風は霧散して消えてしまう。やっぱり消えている……仮面の効果がなくなった訳では無かった。あの時打ち消しが無効化されたのはなぜだ?
「その程度か?俺が防ぐまでも無かったな。今度はこっちから仕掛けるぜ〜!!」
レッドの姿が消えたと思ったら、突然目の前に現れる。
「うわ!?」
瞬間移動とも呼べる早業に咄嗟に後ろに飛んでレッドの間合いから離れる。
「くっそ〜流石に空中じゃ遅くなるな!!」
十分速いんだけど!?けど今がチャンスだ。僕を攻撃しようとしたことで通路がガラ空きだ。このまま逃げて撒いてしまおう。空いた通路に最大速度で飛んで逃げた。やったぞ、これで……!
「だからよう…逃げるなら俺を倒してからにしろって……」
「な、なんで!?」
通路まであと腕一本分、ギリギリといったところで真横からレッドが現れる。空中からここまで移動してきたっていうのか!?明らかに異常だ!速すぎる!
「言ってんだろ!!」
振り下ろした腕が僕を床に叩きつけ、止められる。
「うぐっ!!」
またも意識が暗転しかける。霞んだ視界でレッドの丸太のような脚が振り上がっているのが見え、このまま踏み潰すつもりなのだと直感が告げていた。
「うおおらっ!!」
凄まじい轟音がなり、今まで傷らしい傷が無かった床がレッドの踏みつけで軽くクレーターができていた。
「よく避けれたな…。すばしっこさは大したもんだな。まあ、もう虫の息みたいだが」
……直撃は免れたが、衝撃までは防ぎきれなかった。その衝撃で肋も何本か折れているのか呼吸するだけで痛い。もう全力で飛ぶのも難しくなってしまった…。
「仲間だったよしみだ。最期に言い残したい事を言ってみな、墓に刻んでやるぜ?」
ゆっくりと近づき、僕の前に立つレッド。もう逃げるのは無理そうだな……。
「……なら、最期に一つだけ。この仮面を返すよ。……もう僕には要らないものだから……」
仮面を外して手に持つ。それを見たレッドは仮面なのになんだか少しだけ寂しそうな表情に見えた。
「そうだな。お前にはその仮面は相応しくない。……じゃあな、ホワイト」
両腕を頭上に振りかぶり振り下ろす直前、僕は手に持っていた仮面をレッドに投げつける。両腕が塞がっていたレッドは払い除けるのが遅れ、その仮面はレッドの仮面に当たる。
「なん…!」
『縮地』
動揺した一瞬の隙をついてレッドの懐に潜り込む。レッドの腹に手を当てあの時と同じように全力で逆風を放つ。
『逆風!』
「グアアアア!!」
全力の逆風は無効化されることなくレッドを壁まで吹き飛ばし、その威力は頑丈な壁にレッドがめり込むほどだった。
「……!!……ぶほっ!!いって〜、な、何が起こった〜!?なぜ俺がまた吹き飛ばされ……ってアイツいねぇ!?………!!」
大広間で一人で叫んでいるレッドの声を聞きながら僕は通路を通り、命からがら逃げることに成功した。
「おい、殺すのはえ〜よ!もう終わっちまったじゃねーか」
「俺だってあんなことが起きるなんて思わなかったんだよ……」
「せめて残った身体でも拾っておこうぜ。狩りの撒き餌に使おう!」
「お前なぁ……天才かよ!?」
吹雪荒れ狂う山の中、青と黄色2人の鬼面は馬の死骸とバラバラになった男の手足を拾い集め、自分たちのアジトに帰って行った。




