52話 鬼ごっこ
……何が起きた?目の前に影が現れたと思ったらその時にはもう吹き飛んでいた。
反対側の通路の扉まで吹き飛ばされ、周りにはセッキ族が俺を逃がさないように取り囲んでいる。いきなり絶体絶命だ。
「この扉、確かあの赤鬼が声で開けていたな。音声認識か遠隔で誰かが開けているのか…」
「へっ!無駄だぜ!その扉は俺たちの声じゃないと開かないんだ!」
「…ほう?なんて言えば開くんだ?」
「そりゃ『開け…」
「おいバカ!罠だよ!」
「!?危ねぇ!…コイツ!!」
ちっ、流石にそこまでバカでは無かったか…さて、ここからどうやって突破するか……。
徐々に距離を詰められ、反射的に後ろに下がったとき、背中が扉に当たった。
『バタン!』
扉に触れた瞬間、いとも簡単に倒れた。予想外な出来事に誰もが時が止まったかのように固まっていた。一番早く動いたのは俺だった。
「な、なんで扉が壊れ…」
「おい、逃げたぞアイツ!!捕まえろ!」
逃げた俺を全員で追いかけてくる。
「あまり急ぐと危ないぞ?」
追いかけていた先頭にいる者が転倒した。それにつられて後ろにいた奴らも順々に転んでいく。
「何やってんだ! どけろっ・・・っておおお!!?痛って〜〜!!」
「床が凍ってやがる!? あいつ! ふざけた真似を〜!!」
これで少しでも時間が稼げるはずだ。魔力感知で周囲の状況を把握する。……大広間からこっちに向かってきているのが2人・・・1人はロク、もう1人は、ピンクの仮面の男か。なぜだかコイツは俺に向けてくる殺気がすごいな。俺を吹っ飛ばしたのも恐らくコイツだろう。
「ロク!!『鬼ごっこ』だ…いいな!」
「………!了解!」
…さて、俺は後ろの鬼たちを何とかしないとな。
ウンスイくんからの合言葉で僕は大広間の方へ方向転換し、別の経路で逃走した。こんなこともあろうかと予め、僕たちの間で合言葉を決めていた。『鬼ごっこ』は敵を引きつけ分散させるという意味だ。ウンスイくんが無事なのは確認できたし、僕はこの男を相手しなければならない。何事もないかのように立ち上がって来たレッドだ。
もちろん、正面から相手する気はないが、この人の身体能力はあのコーラ先生並みだ。簡単にここから逃げられると思わない方がいいだろう。
「ホワイト……まさか俺に勝てるなんて思っちゃいないだろうな?」
「負けるつもりは無いけどね……!」
「お二人は大丈夫だろうか……?」
私は今、野生の雪冬馬に乗って山を駆け上がっている。
あの後、ネズミのおかげで出口の場所も分かり、開け方も隠しボタンで開閉することが分かった。外に出られた私は最後に、ちょっとしたお願いをした。他のネズミ達に頼んで全ての扉を壊して欲しい……と。そのお願いがウンスイ様やロクくんの役に立てば良いが……いや、私の役割は一刻も早く里から応援を呼ぶこと。それが1番の助けになるはずだ。
「もう少し待っていて下さい…必ず助けを」
「……いいや、待つのはお前の方だぜ……あの世で先に待っていな」
「ヒヒーンッ!!」
「なっ!?」
馬の脚が貫かれる。追いついてきたのか!?馬は態勢を崩し倒れてしまう。落馬した私は落下の衝撃を受け、全身に激痛が走った。
「うっ!!」
早く立ち上がらねば、そう思い、顔を上げる。その目の前には青と黄色の鬼面がいた。
「お頭が言った通りだったな、今日逃げ出す奴がいる……ってな」
「クッチャ、クッチャ…おお、昨日あんだけボコボコにして動けるなんて根性あるなぁ!見張り番で退屈してたんだ、腹ごしらえに遊んでやるからすぐ死ぬなよ?」
ウンスイ様、ロクくん、すみません。助けを呼ぶの遅くなりそうです。




