51話 かく乱大作戦
牢屋のカギと鎖に繋がっていた手錠を開錠し、ウンスイくんと御者さんを解放させると、グリーンと看守から奪った仮面を2人に手渡した。
「この仮面を被って!これで魔法を打ち消せるから」
「やはり、そうだったか」
やはり…ということは、
「あの手紙、ウンスイくんが書いたやつでしょ?」
「ああ、魔法が仮面に当たる直前に不自然な魔力の揺らぎが見えたからな。気を失って運ばれてる時にこっそり書いてお前のバッグの中に捻り込んだ」
薄々気付いていたけど、ウンスイくんも魔力感知を使えるみたいだ。それにしても、あの少しの戦いで相手の謎を暴いていたなんて…とんでもないな。
「これで何とか最悪の状況は回避されたな…だが、依然悪い状況なのは変わっていない。問題はここからだ」
ウンスイくんの言う通りだ。
「問題は、どうやってこのアジトから抜け出すか…ですね?」
「うむ……」
ウンスイくんが珍しく頭を悩ませている。僕は思いつく中で一番可能性が良さそうな案を伝える。
「僕がお頭の振りをして脱出するのはどう?僕の格好はお頭と瓜二つなんだ。人質を連れ出しても不思議じゃないし」
「確かにそれが一番安全に抜け出せる方法だろうな。…俺達だけはな」
「あっ…!」
そうか…僕たちが脱出したら、今度はヒサメさんが人質になってしまう。
そうなった場合、助けるのにこのアジトに侵入するのは至難の業だ。未だにどうやって入るのかも分かってない。
助けるなら今しかない…ということになる。
この場にいる全員が黙っていると、
「…では、これならどうでしょう?一人がヒョウゲツの里に行って援軍を呼び、残った二人で内部をかく乱し、混乱状態にするというのは」
「…俺もそれぐらいしか思いつかなかった。この作戦は上手くいけば最上の結果を得られるが、全員がとても危険なリスクを背負うことになる。…お前たちにまで危険な目に合わせるのは忍びないが、どうか俺の妹のために一緒に戦ってほしい、頼む」
ウンスイくん…。頭を下げてまで頼みごとをするウンスイくんは学園でも一度も見たことが無かった。それだけ本気ということか。
「ウンスイ様、顔を上げてください。私は最初から貴方がたのためなら命を懸けることを当然に思っていますので、むしろこちらからお願いしたいくらいです」
御者さんがそう言うとこちらを向いて頭を下げた。
「ロクくん、君が巻き込まれて一番の被害者なのは理解しています。…それでも、私たちだけでは正直厳しい。どうか、力を貸していただけませんか?」
「えっと、はい、いいですよ」
僕の返事を聞いて、二人は顔を勢いよく上げたと思ったら目を丸くして固まっていた。
「…え?い、いいんですか?」
「はい、僕もそれでいいと思います」
「き、危険なんですよ?」
「はい。そうですね…気を付けないと…」
「いや、そうですねって…そんなあっさり…」
「プフッ!フハハハハハ!!」
「ウンスイさま!?」
突然、ウンスイくんが笑い出した。今笑う場面ではないだろう、おかしくなったのか?
「そうだった。お前はそういう奴だったな。フフフッ…あー腹痛い。ただでさえ腹が痛いのに笑わせるな」
僕そんな面白いこと言ったか?結構真面目に答えたつもりだったんだけど…?
「…ロク、ありがとう。お前が居てくれて良かった」
「…!うん、とりあえずは作戦を成功させてからにしよう。ウンスイくん詳しい作戦は?もう考えてるんでしょ?」
「ああ、任せてくれ。まずは……」
作戦をザックリまとめるとこうだ。
僕とウンスイくんが残って暴れ回って、御者さんが援軍を呼びに行くという感じだ。
「本当は、この中で一番機動力が高いロクが助けを呼びに行くべきなんだが、里の場所を知らない上に里の者ではない。信じてくれるかどうかわからない以上、説得に時間を使いたくない。それなら俺かハコビになるという話だが、ハコビが適任だろう」
「はい。申し訳ありません…私も戦えれば良かったんですが…」
「いや、この作戦において一番重要なのは、ハコビ、お前だ。お前の力を信じてこの振り分けなんだ……頼んだぞ」
「…はい!」
話が終わり、牢屋の外に出るとそれぞれ散って動いた。
よし、作戦開始だ!
ウンスイ様と別れ、ロク君に出口を教えてもらった。 その情報を頼りに進むと途中で扉が道を塞いでいた。
「この扉…取っ手がない。押してもダメだ。何か特定の方法があるのか…?」
その時、ダクトの方から物音がした。誰かいるのか!? 即座に身構え攻撃 に備えるが、
「…ネズミですか。びっくりさせないでくださいよ…。いや、ちょうどいい、君はこの扉がどうやって開くか分かりますか?」
「チューチュチュ」
「ホントですか!?ぜひ、お願いします」
私がお願いするとネズミはダクトの中に入っていき、数秒待つと、
「ガタン』
扉が物音を立て、奥の通路へ倒れた。このネズミは以前、この扉の上にあるコードをかじって扉が倒れたのを覚えていたらしい。いたずら好きのネズミで助かった。
「ありがとうごさいます、この先の扉もお願いできますか?」
「チュー!」
「何?ハコビの魔法?」
「うん、助けを呼ぶのに適任って言ってたから気になっちゃって」
「あいつは霊魔法が使えるが少し特殊なんだ」
「特別?」
「対象が動物限定なんだ。その代わり、動物の考えていることが分かったり、簡単な命令を出すことができる」
「おお〜! 結構すごいね」
「まあな、もしここが外だったらハコビー人でも余裕だっただろうな」
そんなにすごいのか・・・。やっぱり霊魔法の使い手はすごい人ばっかりだ。
「あ…!あそこ!みんな集まってる」
「だがお頭とやらはいないみたいだな……好都合だ…!行くぞ!」
ウンスイくんは氷魔法を照明に向けて放つ。大広間の明かりが消え、ガヤガヤと混乱の声が響き渡る。
「な、なんだ!?電気が消えた!?」
「おい!誰だ!こんなことをしたのは!?」
「痛て!俺の足を踏むな!あ、仮面が!ごあっ!!」
「お、おい……なんか飛び回ってる音するぞ……ま、まさか、幽霊か?」
照明が消えた数十秒後、淡いオレンジの光が再び大広間を照らす。その場の光景にセッキ族は驚愕した。
「なんだこりゃあ!?お前ら誰にやられた!?」
半分近くのセッキ族が床に倒れ、意識を失っていた。
「ッチ!思ったより予備電源に切り替わるのが早い。もっと削っておきたかったが仕方ない。ロク!こっちだ!逃げるぞ」
「了解!」
態勢を立て直そうと通路に逃げようとした時、ウンスイくんの目の前にピンクが現れ、ウンスイくんを大広間の反対側まで吹き飛ばした。
「ウンスイくん!!」
「その仮面、アンタがグリーンを殺ったのね!?グリーンの仇は私が殺す!!」
助けに行こうと逆方向に飛ぼうとしたが進まない…いや、進めない。後ろを見ると、レッドが僕の手をがっしり掴んでいた。
「ホワイト……俺はがっかりしたぞ。せっかくお前をかっていたのに……裏切るなんてなぁ」
「レッd……」
『ドゴォン!!』
「うがっ……!」
『ドン!』『ドン!』『ドン!』『ドン!』『ドン!』『ドン!』『ドン!』
何度も何度も床に叩きつけられ、意識が飛びかける。この戦隊、抜けてるけど強さは別格だ。強すぎる。
「あの時、お前が殺されなかったのはボスの命令があったからだ。その気になればいつだってこんな風に!お前を!殺せるんだ!ぞ!!」
『ブニュッ』
「あ?なんじゃこりゃ?」
即死級のパンチが僕の腹を貫こうと飛んでくるが、寸前のところで空気の膜を張り、攻撃を受け止めた。膜は凄まじい衝撃を受け破裂した。
「……お前の攻撃なんて、裏山の狐以下だ……」
「ウハハッ……テメェ…!この状況でも笑わせてくれるなんて、本当に面白い奴だったよ。…じゃあな」
もう一度防御を……ダメだ!間に合わない!こうなったら破れかぶれだ!
殴りかかるレッドに最大出力の突風をうち放つ。
「魔法なんざ効か…な!?何!?のわあああ!!!?」
『ドオォン!!』
「あ、当たった…?」
打ち消しの仮面を被っているのにその効果を貫いた。打ち消しが発動しなかった?…そんな事は後で考えよう。急いでウンスイくんの元に向かった。
作戦の補足
大広間で暗闇の中、2人だけが動けた理由は魔力感知で相手の場所を把握できたからです。ロクが仮面を取り、ウンスイが仕留める事で相手を一方的に無力化させることが今回の作戦でした。
ちなみにグリーンは死んでません。




