50話 復讐開始
目が覚めて、時計を見る。
「5時か……」
窓がないので朝になったのかも分からない。いつもは窓から朝日が漏れて起きるんだけど、不思議と眠気は無かった。
いよいよ今日、戦いが始まる。止めることはもうできないだろう。どうなるかはその時に決めるしかない。覚悟を決めろ。
スッーっと扉が開き、グリーンが入ってくる。
「おーっす。起きろよ…ってもう起きてたのか。服と仮面まで付けて準備万端じゃんか。どうした?」
「おはよう、グリーンさん。今日は大事な日だから気合い入っちゃった」
「おーそうか、お前案外好戦的なんだな。入隊2日目でこんなことになるなんて可哀想だなーって思ってたが、そんな心配は無用みたいだな。んならまあ、行きますか!」
「……うん、行きましょう」
「ついに、今日でセッキとヒョウゲツの長かった因縁に決着が着く。……不完全燃焼ではあるがな。お前はどう思う?ヒサメ」
「……分からない。あんまりそういうの興味ないから……でも」
「…でも?なんだ?」
「本当にそれが…『復讐』が目的なの?」
「なにっ?どういう意味だ?」
「……おじいさんは、何かを…誰かを待っているんじゃな」
「もういい、黙れ」
「?……ごめんなさい」
「……それは、もう終わったことだ。後は、復讐だけだ…準備をする、ついてこい」
「…はい」
「さあ、復讐開始だ」
「無事か?ハコビ」
「ええ、なんとか全身打撲の骨折で済みました。ウンスイ様もご無事ですか?」
「ああ、溝尾に大きな青アザが残った位だ。…それより、これからとんでもないことが起こるみたいだな」
「そのようですね……。ここの看守はおだてれば何でも話してくれますから、計画が駄々漏れなのが救いですね。まあ、里に伝える手段は無いんですけど…」
「お頭に女の子が付き従って、おバカ戦隊がメンバーを追加。そして、今日には…」
「私たちの処刑……ですね」
「はぁ…全く、なんだってこんな損な役回りが俺達に来るのか……」
「……大丈夫です。ウンスイ様だけは命にかえても庇いますから」
「お前は巻き込まれただけだろ。この人質は里長の息子である俺だからこそ成立するものだ。お前は抵抗せず大人しくしてればいい」
「そんな!?ダメです!!私は里長から貴方を御守りするよう命じられたのですから」
「それは俺ではなくヒサメの方だろ…。『勝手にフラフラ出歩かせるな』とな。お前に命を張って貰う必要はない……それにまだ諦めるには早いぞ?」
「里長に何とかして貰うのですか?…いくら里長でも自分のご子息が人質に取られていたらなにもできないと思いますが…」
「フッ……違うぞ?まだ残っているだろう?台風の目が」
「台風の目?何です、それは?」
「それはな…むっ?」
「……お疲れっす!お頭!……」
『バキッ!!』
「グハアッ!?」
『コツン、コツン、コツン、コツン』
白マントに白の面。異様な雰囲気の男が目の前で止まる。
「グリーンさん、肩に羊みたいに特大モコモコ糸屑がありますよ?」
「マジか!?ここか?いや、こっちか?それとも、ここか!」
肩をバシバシ叩きながらあっちこっち動き回るグリーン。背中にも手を回して必死に糸屑を探す。相当気になってるみたいだ。
「ホワイト、取ってくれ!取って俺にもモコモコ糸屑を見せてくれ!」
そ、そんなに見たいのか?…モコモコ糸屑。
「いいですよ。ちょっと背中登りますね」
「おう、いいぞ!早く俺に羊見せて…カハッ!!?」
「……すみません、グリーンさん。羊は夢の中で見ててください」
「ホッ…ゴ!何を…!!……」
無防備だったグリーンの首に完璧に入った『牛頭落とし』をお見舞いする。渾身の牛頭落としは3秒と経たずにグリーンの意識を刈り取った。
ちょっと卑怯で気が引けたが、そんなことを言っている場合じゃない。気絶したグリーンの鬼面を取って服の中に入れる。初めて見たグリーンの顔は白目と泡を吹いてて、とても見れたもんじゃなかった。
「本当にごめんなさい……」
自分の部屋にグリーンを運んだ後、ある場所に向かおうとした時、
「あれ?おーい新入り!なにしてんの?グリーンは?どこ行ったの?」
マズイ!?ピンクが来てしまった!どうしよう!
「……ねえ、そこにいるのグリーンだよね?……なんで寝てんの?……新入り、答えてよ?ねえ」
「……イヤ、ボ…オレハシンイリデハナイ」
「あれ?もしかしてお頭?ごめーん、間違えちゃった!新入りと格好にてるからさ。……それで?なんで新入りを迎えに行ったはずのグリーンが寝てるの?新入りもいないし……説明してよお頭」
明るい声に怒気が混ざっているような喋りで僕ににじりよってくる。流石にバレたか……。
「オレモイマキタバカリダカラ、ワカラン。オマエハグリーンヲカンビョウデモシテオケ」
「…そっか。ごめんお頭疑って。これやったの多分新入りだよね?アイツ裏切ったんだね……見つけたら殺すか」
「……ソウダナ。オレモシンイリヲサガス」
「ありがとう、お頭!やっぱり優しいね」
「……ウム」
……ピンクをギリギリで振り切り、ある場所の前にやってきた。
中に入ると、1人のセッキ族が椅子に座っていたが、僕を見た途端、すぐに立ち上がり元気良く挨拶する。
「お疲れっす!お頭!ここに来たってことはついにやるんですね!」
「んん!!…ソウダ、イマハオマエヒトリカ?」
「そうですが…何か?」
「……ソウカ、ワルイナ」
僕は、隠し持っていたパイプ管を看守の顎めがけて一閃する。
『バキッ!!』
「グハアッ!?」
看守から仮面と牢屋のカギを取り、目的の場所まで歩いていく。
「遅かったじゃないか。待ちくたびれたぞ」
「まさか……ロクくんですか?」
「……おまたせ、ウンスイくん、御者さん。助けに来たよ。さあ、復讐開始だ」




