48話 鬼ヶ地下
お頭が僕と同じ子供だって?そんな事だれが予想できるだろうか。
「お頭の名前はなんて言うんですか?」
「んー知らん、皆『お頭、お頭』呼ぶからお頭しか覚えてないぜ」
「そもそも、お頭って学園に通ってないんですか?子供なら通う決まりがあると思うんですけど…?」
「…行ってねーな。お頭、普段はずっと部屋こもってっからよ、俺たちも何やってんのか分からんのよ」
「なんで、お頭は僕らを殺そうと…」
「あー!もう、うるせぇ!うるせぇ!後は直接聞きやがれ!…ここだ、着いたぜ」
目の前を見ると山の中腹にぽっかり空いた洞穴だった。馬車に乗ってるとき、今まで何度か洞穴を見かけたがこの洞穴もなんの変哲もない洞穴だった。ずいぶん原始的な生活をしているんだな……
『ガシャン!!』
ガシャン?こんな雪山で聞き慣れない音だ…な!?
「な、何だこれ!?」
洞穴の下、見た目は完全に岩肌の地面。だけど、その地面が両側面にスライドして行き、そこに現れたのは…鉄で出来た地下への階段だった。
「ようこそ俺たちのアジト、『鬼ヶ地下』へ…!」
「………」
「おお!驚いてるな!そうだろ!俺も初め見た時はびっくりしちまってよ、他にもあると思って堀りまくったもんだぜ……」
「良い思い出だな、レッド。おかげで沢山洞穴出来たもんな……」
途中で見た洞穴、全部この人たちのせいだったのか…。
「ほれ!早く行った行った!お頭が待ってるぜ」
「え、はあ…」
気になることだらけだけど、お頭って人が全ての疑問に答えてくれるはずだ。行ってみるしかない。
意を決して僕は鬼ヶ地下に足を踏み入れた。
階段を降りるとそこは予想していた地下とは思いもよらない光景が広がっていた。
灰色と白の頑丈そうな鉄の壁に沢山の配管が付いていて、赤と緑のランプがチカチカと光っている謎の装飾が付いている。先に進むと頑丈そうな扉があり、レッドがその扉に向かって
「俺だ!開けてくれ!」
と言うと、扉はスーッと横に開き、壁の間に入って行った。
「す……すごい魔道具だ…!手も触れないで開くなんて!!」
「そうだろ?これ全部お頭が作ってんだ。どうだっ!!」
…なんでこの人が威張っているのかは分からないけど、本当にすごい技術だ。王都でもこんなものは見たことがない。お頭は本当に子供なのか?
しばらく奥に進むと、十字路があり、それぞれ行き先が天井に吊るされている箱に光の文字で浮き出ていた。これも魔道具?
「レッド、俺たちは後から行くから先行って待っててくれ」
「おう」
イエローがレッドにそういうとピンクと一緒に右の方に曲がっていった。行き先を見ると『牢屋』と書かれていた。
「ちょっと待って、ウンスイくんたちもお頭の元に連れて行かないの?」
「はぁ?」
その言葉を発した瞬間、空気が変わった。
「お前、何勘違いしてんだ…?お前がお頭に会えるのは、俺たちの仲間になったからだ。こいつらはお頭が捕えろと言ったから生かしてるだけなんだよ。そうじゃなきゃ……」
「お前ら、全員殺してるよ」
「っ!?」
僕は認識を間違っていた。過去は色々あったけど、今は緊張感のない愉快な人たちだと思っていた。セッキ族は変わったと思っていた……この人たちはまだ、昔のセッキ族なんだ。
「おいおい、ホワイト。安心しろって、今は俺たちの仲間なんだから殺されることなんてないって。……それとも俺たちを裏切るつもりでもあるのか?」
「………」
「……ホワイト、お前……」
「そんなこと、ある訳無いじゃないですか。……早く、僕をお頭の元に案内してくださいよ!楽しみです!」
「……そうだよな!お前ならそう言ってくれると信じてたぜ!じゃあ、行くとするか!」
……今は、これでいい。ウンスイくんと御者さんが人質に取られている以上、下手に動くのは危険だ。それにまだ、彼らの力の秘密が分かっていない。僕一人では逃げられることはできても、勝ち目がない。行方の分からないヒサメさんだけど、絶対に生きているはずだ。彼女を信じて僕は僕のできる事をしよう…!
十字路を進み、何度かまた不思議な扉を抜けると、一つの部屋の前に辿り着いた。これまでの扉以上に分厚く、大きな扉だった。上の光る文字には『研究室』と浮かんでいた。
「お頭〜!!馬車に乗っていた奴ら、捕らえましたぜ!それと、新入りがいるんでご挨拶に伺ったんでさあ。入っていっすかね?」
めちゃくちゃな敬語でお頭に確認を取るレッド。ついに会えるのか?謎だったあのお頭に。返事が無いまま、しばらく待っていると、
『ガシャン!!』
階段が現れた時と同じ音がして、扉がゆっくりと開く。そして中から出てきたのは……白い肌に白銀の髪、そして近づくとひんやり冷たい……
「な、何で、ここに!?ヒサメさん!!」
「……?誰?どこかで会った事あった?」
「い、いや僕だよ!ロク!……あ、そっか!仮面してたから気付かなかったんだよね?だから……」
「……ロク?」
良かった、ヒサメさんが生きていた!これなら、まだ何とかなるかも……!
そう思っていた僕に、更なる絶望が襲いかかった。
「ロクって……誰?」
「……えっ?」




