44話 夏の終わり、冬の訪れ
実家で暮らすこと早2週間。大好きなチャンプとも遊んで、お父さんに冒険譚を聞かせてもらったりしていた。そんな日常を過ごしていたある時、
『ピンポーン』
昼食後の昼寝前に玄関からチャイムが鳴る。
「はーい?」
お母さんが玄関に向かう。来客なんて珍しいな。お父さんの酒場の知り合いかな?
「えー!!そうなのー!?上がって上がって!」
お母さんがとても嬉しそうに家に向かい入れる。誰きたんだ?
「ロクー!お友達来たわよーー!!」
「えっ!?だ、誰!?」
さっきまで眠かったのが全部吹き飛んだ。ちょっと待って…心の準備できてないよ…!部屋から降りてきて居間に通された友達と対面する。
「ロク、調子はどうだ?」
「…えっ!?ウンスイくん!?…と」
「…ロク、遊びにきたよ…?」
「ヒサメ、さん…!?」
「な、なんでここに?というか2人は知り合いだったの?」
「……?何を言っている?俺とヒサメは兄妹だ」
「え?えええっ〜〜!!?」
「ちょ、ちょっと待ってよ……!そんな大事な事なんで言ってくれなかったの?」
「まさか……ヒサメから何も聞いてないのか?……おい、ヒサメ。ロクに俺たちが兄妹だってこと伝えたんじゃ無かったのか?」
「……言ってなかったっけ?」
「いや、全く」
「…ごめん、忘れてた」
「「………」」
ウンスイくんは両手を肩の前で開き、やれやれといった様子で顔を横にふる。
「それで……何して遊ぶ??やっぱり、戦う…?」
ヒサメさんは手から冷気を放出し、パキパキと弾かせる。あれ?おかしいな?夏なのにここまで寒くなるなんて……ははっ、悪寒が止まんないや。
「それなら良い所があるぞ」
「な!?」
僕はウンスイくんにだけ聞こえるように小声で話す。
(止めてよ!お兄ちゃんでしょ!?)
「歳は変わらん。それに、お前……」
ウンスイくんが僕をジロジロと見回す。
(な、何?)
「案外、やってみたら面白い結果になりそうだぞ?……だから、ほら」
『ガシッ』
「ちょっ!?」
右腕をヒサメさん、左腕をウンスイくんにがっちりロックされ、半ば強引に外に引きずり出された。なんでこう言う時は息ぴったりなんだ……。
外に出ると、白銀の大きな馬車が家の前に停まっていた。
「えぇ……何これ……?」
「俺たちの馬車だ。故郷が過酷な土地だから特別製なんだ」
「中も快適……。寝る事もできるよ」
馬車の装飾は雪の結晶をモチーフにして神秘的な造りになっている。中に連れ込まれると、クッション付きの椅子に座らされる。確かにこれは快適だ。ウンスイくんが御者さんに行き先を伝えて村の外に出発した。
連れてこられた場所はその周辺だけ木がない開けた原っぱだった。広さは代表戦の試合場と同じくらいで再選するにはうってつけの場所だ。
「お前の村に行く途中、偶然ここを見つけてな…こんなこともあろうかと覚えておいた」
「ウンスイ……流石」
こういうときまで用意いいなこの軍師。
僕とヒサメさんは自然の試合場の中心に立ち、相対する。この状態、代表戦を思い出す。けど不思議と恐怖はなく、なんだか楽しみが勝っていた。せっかくだし、試したかったことをやってみるか。
「ヒサメ、ロク、言っておくが、これはあくまで遊びだ。代表戦のように本気でやるなよ?」
「「うん」」
「……はあ。……まあ、怪我だけはするなよ」
ウンスイくんの始めの合図がなった瞬間、勝負は一瞬で決着がついた。僕はヒサメさんの首元に振り抜いた手を寸止めする。
「……ハハ、なんだそれ?お前、いつの間にこんなに強くなったんだ?」
「……反応できなかった。……何したの?ロク」
「えっと、『縮地』と『居合』だね」
「なんだ?いつそんなもの練習したんだ?」
「教えてもらったんだ…友達にね」
あの時、リュウタンが言っていた土産というのはリュウタンの記憶と経験……今まで学んだ技術をわざと僕に残してくれたのだ。特に降霊していた時に使っていた『縮地』と『居合』は身体が動きを覚えていたのですぐに真似ることができた。
「……ねえ、もう一回やりたい」
「いいよ、ちょっとズルかったしね」
そこから陽が落ちるまで何度も手合わせした。結局何度も戦うにつれてヒサメさんに対策されてどんどん負けていった。やっぱり、学年1位は強い。
「もうそろそろ帰るぞ。続きは明日にでもやればいい」
ウンスイくんも呆れながら僕たちに終わるよう催促する。名残惜しいけど今日はこれで終わりだな。
待っててくれた馬車に乗って、ペリネ村に帰って行った。
村に戻って家の前まで着くと僕のお母さんが待っていた。
「ロクおかえり。お友達も遊んでくれてありがとう。…良かったら今日は家に泊まって行ったらどう?」
「いえ、俺たちは近くの宿屋に泊まるのでお気遣いなく」
「あら?この村に宿屋はないわよ?たまに旅人が来たりするけどその時は集会所を貸し出してるだけだし、それならウチに泊っちゃいなさい?私も学園でのお話いっぱい聞きたいし!」
「そうですか……ならお言葉に甘えて、よろしくお願いします」
「よろしく…お願いします」
「……あなたがヒサメちゃんね?」
「……?うん」
お母さんがヒサメさんの方を見た後、僕の方を向いてムフフと笑う。この人これが狙いだったんだな……。
お風呂に入った後、皆で夕食を食べて学園での話をした。
「ロクは……私を助けてくれた……。すごい……強い」
「へええ〜!!良かったね〜ロク?」
ニヤニヤしながらこっち見てくる。恥ずかしいからやめて……。
「この指輪もその時もらった……」
あ、それまだ付けてたんだ。
「キャ〜〜!!もうそんな関係まで!?女の子に指輪あげるなんて……ロクったら見ない間にこんなたらしになっちゃって!」
「違うよ!?あれは魔力を抑えるためにあげたの!」
「でもまだ付けてるってことは……そういうことよね?ね?」
ああ〜〜!!やめて〜!!これ以上恥を晒さないで〜!!
「……」
ヒサメさんが下を向いて黙っている……。ま、まさか……怒っている!?不味い!無理矢理にでも話を逸らさないと……!
「そ、それより!明日は何する!?ちょっと遠いけどモチヅキ神社っていう所があってそこに……」
「それなんだが、ロク。それにご両親。迷惑でなければロクを俺たちの故郷、『ヒョウゲツの里』に招待したいのですが……どうでしょうか?」
「え?いいわよ。楽しそうじゃない!お父さんもいいわよね?」
「ああ、いいぞ!せっかくの夏休みだ。行ってきな」
「ありがとうございます。……ロクはどうだ?」
ヒョウゲツの里か、ウンスイくんたちの故郷ってことはヒョウガ地方にある里だよな?ということは夏でも涼しいだろうし避暑地としてもいいかも!何より、友達のところに遊びに行くのは楽しそうだ!
「うん!いいよ」
「フッ…なら決まりだな」
こうして、ウンスイくんたちの故郷、ヒョウゲツの里に行くことが決まった。
裏小話
実は、ウンスイは夏休み前、ロクをヒョウゲツの里に誘うつもりでした。その後、妹のヒサメからロクの村に遊びに行く話を聞き、ロクを改めて誘うつもりで自分も行くことを決めたのです。




