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42話 モチヅキ神社の狐面

「お父さん」

「……」

「ねえ、お父さん」

「…………」

「ごめんって。お父さん馬車のこと教えてくれなかったことにイラついちゃって…つい」

「『つい』じゃないだろぉ……!俺がどれだけ苦労をかけて手に入れたか……!!」

「…うん、本当にごめん。もうしないよ…」

酒のことになるとこんなに落ち込むの、我が父ながら見てられないよ…。

「もういいでしょ?貴方だってロクに帰り方教えてなかったんだからこれでおあいこで」

「……そうだな。お父さんも悪かった。ごめんな、ロク」

「うん、僕もごめん」

「ああ、これでこの話は終わりだ。…それで、なんか聞きたい事でもあるのか?」

「僕が馬車でモチヅキ神社まで行ったの話したでしょ?そこに狐面の人がいたんだけど、あそこってどんなところなの?」

「狐面?あんまり行かないから分からんが、あそこには神主のおじいさんしか居なかったような…?まあ、誰かアルバイトでも来てるんじゃないか?」

おじいさんが鳥居の上に登れる訳ない。となると本当に誰かアルバイトで来ているんだろうか?

「…ねえ、今日モチヅキ神社に行っていい?」

「ええっ〜!?ここからどれだけ距離あるかロクだって分かるでしょ?ダメ!」

「大丈夫!遅くなる前に帰るよ。それに、僕飛べるし」

「「は?」」



「行ってきまーす!」

そう言って追い風で飛んでいく。今日は重たい荷物もないし、もっと早く辿り着けるだろう。

王都では学園内以外で不必要な魔法の使用は禁止されているのでこんな風に大空を飛ぶことはなかった。いざやってみると案外気持ちいいものだ。

「たしか、この辺に…ってあそこだな」

高いところに鳥居と神社が建っているなんてモチヅチ神社くらいしかない。空から見ると一目瞭然だった。

30分くらいで到着して、そのまま神社の境内に着地する。身軽っていいね。

鳥居には昨日の狐面の人はいなかった。今日は来てないのかな?すると、境内の裏から装束を着たおじいさんが歩いてきた。

「あ、おはようございます」

「おや?こんな朝から来客なんて珍しい…。おはよう…参拝かな?」

優しそうな雰囲気のおじいさんだ。垂れ目で坊主頭。歩き方はぎこちなくて腰は曲がっていることからあまり体は良くはないみたいだ。昨日会った狐面さんは背筋が綺麗に真っ直ぐだった。そもそも、狐面をしていないからこのおじいさんではないだろう。

「おじいさん、ここに狐面の人っていますか?」

「……会ったのかい?」

「ええっと、会ったというか…昨日その人が僕を見ていたんです。それが気になって…」

「そうか…あの子が姿を現したということは、君は悪い子ではないということだろう……。分かった、こっちに来なさい」

訳が分からぬまま神社の中に案内されると奥にある一室の前まできた。

「入るよ」

おじいさんが戸を開けるとそこに居たのは、スラっと背の高い狐面の人がいた。



狐面さんはこっちを見ると少し驚いたように身体を動かすと同時に警戒態勢をとる。その行動に僕も驚いたが、おじいさんがこの場を(なだ)める。

「落ち着きなさい…。この子は昨日、お前さんが見ていた子なんだろう?気になったみたいで連れてきたよ。お前さんも気になるところがあったんだろう?話しだけでもしてあげたらどうだい?」

おじいさんの落ち着くような声での説得で警戒態勢を解く狐面さん。あのおじいさんの声は不思議と気持ちを安らかにしてくれる力がある。神主の力なのかな?

「……仕方ないな。わかったよ、私も気になる事があったし…」

そう言って狐面を取る狐面さん。その素顔は…とても綺麗な顔をした、薄緑色の髪の女の人だった。

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