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3話 初めての実習

 魔法適性が終わった生徒たちは受付まで戻り、隣の掲示板に貼られたクラス分けを確認して自分のクラスに向かう。僕も自分のクラスはどこか探そうと掲示板を確認する。

「やっと見つけた……」

1クラスに54人、それが20クラスもある。約1000人もの名前の中から自分の名前を見つけるのは大分(だいぶ)しんどかった。

「1ー18か」

後ろから探した方が絶対早かったと思いながら、教室がある東側へ向かう。そりゃこんなに生徒いたら学園も広いはずだよ……。

 教室に着くともうすでに何個かのグループが出来上がっており、自己紹介を兼ねた会話が繰り広げられている。僕の村には唯一(ゆいいつ)の友達であるチャンプ(隣家の犬)はいるが、同年代の友達はいなかったので、なんて話しかければいいか分からず、そのまま自分の席に座って近くの会話を聞いていた。

「……ねえねぇ、魔法適正どうだった?」

「火と水だったー。クーちゃんは?」

「私はねー、水と風と霊だったよ。ほら」

クーちゃんと呼ばれた女の子は魔法適性が書かれた紙をもう一方の子に見せていた。僕は他の人の適性が気になり、横目でチラッと確認してみた。

      火 D


 霊 C       水 B


   土 E   風 B

 優秀なのかバランスがいいのか分からないが、少なくとも僕の適性はズレているという確認は取れた。

だってEが1つしかないんだもん。僕は4つだぞ?

「はーい皆、席について。HRホームルーム始めるよ」

また異様に若い男教師さんがやってきた。担任だろうけど、この学園の先生は皆若い。童顔(どうがん)だけ採用しているのかな?

「じゃあ、皆いるか名前呼ぶから元気よく返事してなー?1番…………54番ロク」

「…はい!」

最後に僕の名前が呼ばれてできる限り大きく返事した。

「よし、皆いるな、それじゃあ先生の自己紹介から始めるぞ。先生の名前はコーラっていいます。好きなものはラーメンで体動かすことはなんでも好きだからいつでも遊びに誘っていいからな。これからよろしく!」

この無性に喉が渇きそうな名前のコーラ先生は、すごくのどごし…じゃなくて物腰(ものごし)(やわ)らかで(さわ)やかな感じだ。

早速(さっそく)だけど授業を始める。今日はレストレイント王国の歴史について勉強するぞ」

うえー……なんだか難しそうな内容だ。周りの反応も僕とあまり変わりなかった。どうせなら世界の不思議集とかの方が楽しそうなんだけど。

「……と思ったけど、皆魔法適性を調べて気になってるだろう。なので!今から外で実習を行います!」

クラスの皆がプチパニック状態になってはしゃいでいる。僕も内心ワクワクしていた。ついに魔法が使えるんだ!


 外の訓練場は何クラスか使用しているため空いているスペースに集まり、コーラ先生が説明を始めた。

「魔法はイメージが大切だ。火なら松明(たいまつ)を点けるようなイメージで火を生み出すみたいにな。イメージを付けやすくするために技名を考えるものも多い。それぞれの属性でどう動かしたいのかを考えることで色んな使い方ができる。まあ、まずは習うより慣れろだな、さあ、やってみよう!」

 そう言って先生は手を叩いて僕達に実践を促した。その合図を皮切(かわき)りに皆はそれぞれの方法で練習し始めた。風の魔法か……そういえば風の勇者っていう物語があったな。勇者の得意技は……確か……。

「……『追い風』?」

 その瞬間、僕の背後からものすごい突風が吹き、僕の記憶はそこで途切れた。


 ……知らない天井だ…じゃなくて一体どうなったんだ?魔法を使おうとしたら急に後ろからど突かれたんだけど?いや、あのとき確か勇者の技名を呟いて……まさか?

「ロクくん起きたの?大丈夫?すごい勢いで吹っ飛んだって聞いたけど?」

声が聞こえた方に顔を向けると、昨日の受付のお姉さんが座っていた。

「あ、受付の…」

「ええ、あの時は臨時の事務でね、本当は保健室担当なの」

つい声に出してしまった。

「保健師のメディスよ、呼び方はメディス先生でも保健の先生でもいいよ」

鶯色(うぐいすいろ)(緑がかった茶色)の編み込んだ髪を前に持ってきている受付のお姉さんがまさか保健の先生だったなんて。

「体は痛くないです」

幸いにも()り傷やアザとかは見当たらなかった。結構派手に吹っ飛んだ気がするけど大丈夫だったのか。

「よかった、回復が効いたみたいね。じゃあ担任の教師には私が言っておくから、午後から参加しようか?」

「回復?」

「うん、回復魔法。水と霊属性の混合魔法ね。意外と難しいのよ?」

え、そうなんだ?属性は合わせることもできるのか。どうりで傷が無いと思った。

「ありがとう先生」

「ううん、これが私の仕事だからね」

そう言った先生の顔は(ほこ)らしげだった。ちょっと嬉しかったのかな。

「とりあえず、午後の授業が始まるまではゆっくりしてなさい」

「はい」

言われるがまま、僕はベッドに横になり、午後の授業まで休むことにした。

混合魔法か〜なんかかっこいいな、僕も使え……なかったな、属性1つしかないから。

残酷な現実を受け止めながら僕は目を閉じた。



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