32話 七不思議巡り
『カツーン、カツーン』
僕たち以外誰もいないはずの学園内に僕たち以外の足音が鳴り響く。その足音は確実にこちらに向かってきている……。警戒態勢を取りながら足音の正体を確認しようとじっと見守っていた。段々と足音の主の姿が見えてきた…肌色の体に丸見えの内臓……それは紛れもない実験室に置いてある人体模型だった。人体模型はギギギと顔を向け、目を赤く光らせ勢いよくこっちに向かって駆け出してきた。
「「ギャアアアア!!」」
ヤバい、ヤバい、ヤバい!!捕まったら死ぬ!僕は脇目も振らず逃げ出していた。
「はあ、はあ……」
気づいたら人体模型はいなくなっていた。だけど、2人とも逸れてしまった。どうしよう……もう帰りたいが2人を置いて帰ってもし何かあったら申し訳ない。あと、置いて帰ったと知ったベニエさんが僕をボコボコにする未来が脳内で再生されて帰るに帰れなかった。僕は意を決して2人を探すことにした。
「み、皆〜、どこにいるの〜?」
本当は声を出したらいけないのだろうが、早く誰かと合流したい。頼む、早く見つかってくれ。
すると、職員室の横を通り過ぎようとした時、
「グスッ…グスッ」
な、泣いてる?もしかして2人のうちの誰かか?少し安心して扉に手をかけた時、ふと七不思議を思い出した。
『職員室の海鳴り』
職員室でなぜか水音が聞こえることから七不思議の一つになった。そして決まって水音が聞こえる時に一緒に聞こえてくるのは、『女の声』だという。入った者は記憶と大事なものが奪われると言われている。
……どっちだ?これはベニエさんかイリネスさんなのか?それとも……。
「グスッ……怖いよ…助けて……」
「…!ベニエさん?僕だよ、ロク。大丈夫?」
「………ロク?」
扉の向こうでこちらに向かってくる気配がする。ベニエさんだと分かっていても万が一を考えてしまい、心臓の鼓動が早まる。本当に……ベニエさんだよな……?そう考えているうちに扉がガラッと開き、中にいたのは…………泣き顔のベニエさんだった。
「う、うえぇーん!」
誰かに会えて安心したのかその場で泣き出してしまうベニエさん。とりあえず落ち着くまで待つことにした。
「ご、ごめん……もう大丈夫」
「そ、そう?なら良かった」
「ねえ?」
「ん?何?」
「見つけてくれて……ありがとう」
「……うん」
変な空気になり、しばらく沈黙が流れたので僕は、
「………えっと、そろそろイリネスさん探さない?」
と提案した。
「そうね、早く見つけましょ」
こうして僕ら2人は探索を再開し、イリネスさんが行きそうな所を重点的に探すことにした。
最初に1組の教室をくまなく探したが、声を掛けても反応はなかった。
あと行きそうな所といえば…七不思議の出現場所か?他に手掛かりがないため、七不思議の場所に向かうことにした。
『3階トイレ』
戻ってきているか確認してみたが、特に何もなかった。
あの音も鳴り止んでいた。
『音楽室』
扉の前で何か聞こえてくる……。
誰かが歌っている?ここからではよく聞こえない。怖かったがここで時間をかけても仕方ないので扉を開いてみる。すると、中で微かに聞こえていた音が鮮明に聞こえた。
「……し………を………………………ともに…………いこう」
しをともにいこう?……死を共に行こう。聞いてしまった。『死の呪文』を。
七不思議では聞いた者は死んでしまうと言われている、あの呪文を。
「…?ちょっと待って?あそこから聞こえてこない?」
ベニエさんが指さしたのは楽器を仕舞う棚だった。確かにあそこから聞こえてくる。……開けても大丈夫なのか?
▶︎開ける 開けない
僕は覚悟を決めて開けてみることにした。恐る恐る棚を開けると、中から音の正体があらわれた。
「これは……録音機?」
音の正体は録音が出来る魔道具で、『レイント学園校歌』とラベルが貼られていた。
「はああああ……」
僕は緊張の糸が切れ、大きなため息をついた。七不思議の正体が魔道具の誤作動だったなんて。本物の死の呪文じゃなくて良かった。
気を取り直して音楽室を探してみたがイリネスさんは見つからなかったので別を探すことにした。
『実験室』
扉が開いている……!警戒しながら中を覗いてみると、何も変わった所は……いや、ある。実験室の奥に人体模型が置いてあるはずなのだが、そこには何もなかった。やはりあの時見たのはここにあった人体模型で間違いなさそうだ。他に何かあるか調べるために中に入る。
中に入って一通り探してみるが、イリネスさんはいない。何も手がかりはなさそうなので次に向かおうとした時、
「あれ?なんか落ちてる?」
ベニエさんが何かを見つけた。これは……カギ?持ち手には『屋上』と書かれている。なんでこんな所に?明らかに怪しすぎるが、七不思議が出現する場所は屋上が最後のため、このカギが必要ではある。どうしようか悩んでいると、
「………ねえ、急いだ方が良いかも」
「え?何で?」
「分かんないけど……屋上にイリネスさんがいそうな気がするの」
直感的なものか……。でもこの状況なら何が起きてもおかしくない。僕も嫌な予感がするし、ここは従う方が良さそうだ。
「分かった…行ってみよう」
実験室を後にし、僕らは屋上へ急いだ。
『屋上』
屋上に着いて、扉を確認する。……カギがかかっている。実験室で手に入れたカギを使って開けてみると簡単に開いた。
扉を開けて最初に目に入ったのは………。
イリネスさんが柵を越えて飛び降りる瞬間だった。
上手く時間が取れず、投稿遅くなりました。すみません!
投稿は遅くなっていますが、続ける意欲はあるので失踪はしないように気をつけながら書いていきたいと思います。




