31話 学園の七不思議
夏休みの初日の夜、肝試しの約束があった僕は、寮の裏にある広場に向かった。ベニエさんから『ここに集合』と言われたからだ。到着するともうすでにベニエさんとイリネスさんが集合していた。僕が声を掛けるとベニエさんが体をビクッと震わせながらこっちを見る。
「ヒィッ……んん”!!ちょっと!声掛けるならもっと存在感出してから話しかけてくれる!?」
「えぇ……」
別に普通に声掛けただけなんだけどな。イリネスさんはというと目を輝かせながらブツブツと何かを呟いていた。何だろう、すごく怖い。
「やっと揃ったわね。なら、行きましょう……」
露骨にテンションが低いベニエさんと対照的なイリネスさん。そもそも何で肝試しなんてしようと思ったのだろう?途中で聞いてみるか。
学園は、夜8時を過ぎると正面の扉とその他の裏口が閉められ、侵入できないようになっているが、今日の朝に18組の窓を開けていると話すイリネスさん。普段とは違うウキウキした様子は何だかピクニックにでも来たような感じに見えた。窓の前まで移動し、開けてみる。幸いにも鍵は空いていたので無事に学園に侵入する事が成功した。……後ろで、特大のため息が聞こえたような気がした。
学園内に侵入するといつもと違って真っ暗で寂れた雰囲気が漂っていた。歩くたびにコツ、コツと足音が反響して自分たちしかいないということが感じられた。歩きながら僕は学園の七不思議について質問する。
「ところで、『学園の七不思議』って何があるの?」
「ロクくん!まだ知らなかったのですか?良いでしょう!私が教えてあげます!」
今日のイリネスさんは絶好調だな。そのまま七不思議についての説明を聞くことにした。
「まず、『実験室の人体模型』ですね。自身が失った肉体を求めて彷徨うと言われています。何でも、夜中に遭遇してしまった生徒が、その人体模型に追いかけられ、体の半分の肉を奪われて、次の人体模型になってしまうのだとか……」
なるほど、人体模型か、確かにあれは七不思議になってもおかしくないな。見た目が不気味だし。
「次に〜〜」
イリネスさんが話してくれた七不思議をまとめるとこんな感じだった。
1 『実験室の人体模型』
2 『音楽室の死の呪文』
3 『トイレのハナコさん』
4 『職員室の海鳴り』
5 『屋上の飛び降り男』
6 『ドッペルさん』
「……って、あれ?7つ目は?」
「そうなんです。…ロクくん、よくぞ聞いてくれました!やはり、気が合いますね ///…七不思議なのに1つないのが不思議なところなんです。噂では7つ目を知ってしまったら死んでしまうと言われていますのでそれが7つ目と考える人もいます。」
「…ですが、それなら本来の7つ目が存在しないとそれは成立しません。だって『7つ目』を知ったら死んでしまうのですから……。なので!今回は七不思議を検証しながら、『7つ目』を探すのが目的です!」
鼻息を荒くしながら僕に力説するイリネスさん。なるほど、それで肝試しを計画したのか。
「今回の目的が分かったところで、まずはどこに行きます?」
「え?僕が決めるの?」
「はい、どこに行きます?」
何で僕が決めるんだ?まあ、いいけど。
改めて七不思議を思い出す。今は18組の教室前だから、ここから近いのは職員室と、トイレかな。
「じゃあ……トイレのハナコさんから行こう」
「ト、トイレ……!?」
ベニエさんの表情が青ざめていた。対してイリネスさんは元気そうに、
「良いですね!行きましょう!!」
と張り切っていた。
「確か、3階の女子トイレに現れるって話だったよね?」
「はい、イジメられていたハナコさんという女の子が3階の女子トイレで閉じ込められ、そのまま忘れられてしまってトイレの中で死んでしまったという話ですね。その後、トイレの個室から『出して…ここから出して……!!』とガリガリ扉を引っ掻く音と共に声が聞こえてくるそうです……!」
「……」
「…ベニエちゃん、どうしたんですか?」
ベニエさんの方を見ると、耳を塞ぎながら歩いていたが、僕らが注目していることに気づき、
「な、何が……?どうもしてないけど?」
と何事もなかったかのように振る舞った。ベニエさんやっぱり苦手なんじゃ……?
「ここですね、噂の女子トイレ。入りますよ……?」
イリネスさんが先陣を切り、恐る恐るドアを開ける。キィィと音を立ててゆっくり開かれ、その緊張感に僕は息を止めていたのか心臓の鼓動が早まっていく。中が完全に見えると静かな空間の中に蛇口からポタポタと水滴が落ちてくる音が聞こえてくるだけだった。奥に進むと僕らは目の前の光景にゾッとした。一番奥の個室の扉が木の板で打ち付けられていたのだ。中に入れないようにしている……あるいは『何かを閉じ込める』ために……。
僕らが完全に固まっていると、
『ガリ……ガリ』
何か引っ掻く音が聞こえてくる……!ほ、本当にいるのか!?
イリネスさんと顔を見合わせ、扉をノックした。……すると、
『ガタガタガタッ!ガリガリガリガリ!』
「「うわあぁ(キャアァ)!!」」
ここにいるのは危険と感じ、急いでトイレから脱出した。
「もう帰ろう!?いたじゃん、幽霊!!もう十分でしょう!?」
「ベニエちゃん、お、落ち着いて……?」
「落ち着いてるよ!だから冷静に帰ろう……って…………」
「?どうし……!!」
急に2人が会話を止めた。その理由は明白だった。なぜなら、
『カツーン、カツーン』
廊下に響く足音がこちらに向かってきていたからだ。




