30話 夏休み!!
「それでさ……もし、夏休みの初日、予定ないなら……肝試し……行かない?」
「へ?」
僕が誘われるとは思わなかった。ベニエさんならクウナさんやリキくんがいるからそっちを誘うはずと思っていたからだ。いや、もしかしたら他の皆もいるかもしれない。
「それってベニエさんとイリネスさん以外は誰かいるの?」
「え?……それが……誰も来てくれないの。クーちゃんとリキは『夏休みは予定があるからって行けない』って言ってて、ウンスイは『そんなものに興味は無い。そういう話ならロクが付き合ってくれるはずだ』って言って断られたの。だからアンタなら来てくれるかなって思って誘ったんだけど……」
ウンスイくん、面倒事は全部僕に回すからな……。でも、興味あるのは本当だ。その辺を分かっているから僕に押し付けるのかもしれない。
「……うん、分かった。僕も行くよ」
僕の了承を聞いた瞬間、イリネスさんだけでなく、ベニエさんまでが机に身を乗り出してきた。
「え!ホントに!!後から行けないとかやめてよ?絶対来てね!?」
「ロクくんもやっぱり興味があるんですね……!あなたからは私と同じ匂いがすると思っていたんですよ……!私たち、仲良くなれそうですね/// 」
え?何でこんなに必死なんだ?逆に怖いんだけど。あと同じ匂いは心外なんだけど!?
「ロク」
「あ、ウンスイくん。どうしたの?」
肝試しのお誘いから1週間後、夏休みまであと、3週間というところで休憩時間にウンスイくんから話しかけられた。
「お前、夏休み暇か?」
「え?う〜ん、夏休みは家に帰るつもりだからこっちにはいないよ」
「……実家帰省か。なら仕方がないな。悪い、何でもない」
え?なんだ?何か頼み事でもあったのかな?聞こうとしたけど、ウンスイくんはいつの間にかいなくなってしまった。
「ロクくん、お祭りに行かない?夏中期(8月)下旬にあるんだけど、どうかな?」
クウナさんから急にお祭りに誘われた。ど、どうして僕に……?意図が分からず、ドギマギしていると、
「……アンタ、何勘違いしてるの?」
「え?ベニエさん?」
「どうせ、クーちゃんと2人きりで行くと思ってるんでしょ?全く……。せっかくだし、代表戦メンバー皆で行かないか話してたの」
あ、そうだったのか……。勝手に一人で浮かれてて凄く恥ずかしい……!ベニエさんは呆れていたが、クウナさんはまだ理解してないみたいだ。それだけが救いだ。
「……それで、どうかな?ロクくん。ちょうど夏休みの終わり頃にあるし、夏休み最後の思い出に行かない?」
「うん、行ってみたい!」
クウナさんからのお誘いなら断る理由はない。ウキウキで了承した。……ベニエさんの僕を見る目が冷たくなったような気がした。
夏休みまであと1週間となったところで、ヒサメさんに声を掛けられた。
「ロク…夏休み遊ぼ?」
「え?う〜んでも、僕、実家に帰っちゃうからタイミングが無いかも」
「……そっか、わかった……実家どこ?」
「ん?エバーグリーンのペリネ村ってところ。地図の東端にある小さな村だよ」
授業で地理の学習があった時に自分の出身地を調べることがあった。そこで僕の村は大分辺境の地だったことが分かった。
「そうなんだ…じゃあね」
「あ、うん」
…そういえばヒサメさんはどこの出身なんだろう?遊びに誘ったということは、もしかしたら今年は帰らないのかな?
そしてあっという間に夏休み前最後の授業が終わり、帰りのHRが始まった。
「皆、もう夏休み気分になっているだろうが、最後に先生から宿題を用意した!」
『宿題』というワードを聞いたとき、クラスで大ブーイングが起こった。その嵐の中、コーラ先生は話を続ける。
「まあまあ、落ち着いてくれ、夏休みといえば宿題だろ?今回の宿題は……」
皆がゴクリを息を呑んだ。
「夏休みの思い出を1つ、先生に教えること!」
再びクラスで声が上がる。しかし、今度は歓声の嵐だった。
「最後に、これから夏休みに入るけど、危ないことは絶対にするなよ?また元気な姿を夏休み後に見られることを先生は願っているからな」
先生は、いつもより優しく、それでも力強い口調で話を締めくくった。生徒を心から思ってくれているのが伝わってきた。
「じゃあ、皆、夏休み後にまた会おうな。解散!」
こうして、僕の夏休みが始まった!




