表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/90

28話 優勝決定戦終

「大将、前へ!」

 呼ばれて前に出る僕とヒサメさん。対面して緊張すると思っていたがそうでもなかった。

「……ロク、やっぱりここまで来たね…」

「…うん、皆のおかげでね」

「……」

「……」

 お互い顔見知りであっても、話す言葉はとても短かった。それだけで十分だった。

「試合開始!」

 僕は『疾風』をヒサメさんに当てる。吹き飛ばされたヒサメさんだったが、壁に当たる直前、()てつく風が威力を相殺(そうさい)した。僕は追い風を使って接近する。再び、疾風を使おうと近づいた時、周りの温度が極端に下がっていることに気づき、嫌な予感がして進路を変えた。すると、ヒサメさんの周辺から氷が侵食してきた。侵食してくる冷気を逆風で(はじ)く。…うん、大丈夫だ。僕の逆風なら氷の侵食を押し留められる。後は、いかに氷に触れずに倒すのかが問題だ。

 大きな氷柱(つらら)を僕に飛ばしてくる。僕が避けると、数をどんどん増やしてくる。このままでは避けきれない……!逆風を放って飛ばそうとしたが、氷柱は風をものともせず、僕の元に突き刺さろうと迫ってくる。

「くっ……しまった」

 咄嗟(とっさ)に追い風で回避しようとしたが、氷柱が(かす)ってしまい、左脇腹が氷に侵食された。

 冷たい、というより痛みの方が勝る。これは、早く決着を付けないと不味(まず)い……。



 冷気が段々周りを(おお)ってきている。ヒサメさんに攻撃するには疾風ではなく、魔剣術で直接攻撃を当てるしかない。それにはまず、この侵食する冷気を吹き飛ばす必要がある。ぶっつけ本番だけど、やってみるしかない。

 冷気を放出している張本人の元へ追い風で急接近し、目の前で止まる。そして、僕の体を侵食してくる冷気を、僕を中心に全方向の『逆風』を繰り出す。

「……っ!」

 全身包帯くんが霊魔法の束縛を放出で抜け出したように、僕の風で再現して冷気を吹き飛ばす。逆風の風圧に(ひる)んだヒサメさんに『魔剣術』で追撃をかける。その時、

『ピシッ!』

 と鋭い音がした。ヒサメさんの手にはいつの間にか剣が握られていた。僕の魔剣術はヒサメさんの氷の刃に止められたのだ。

「ここまでで…まだ倒れてないのはロクが初めて……!」

 こっちは常にギリギリなのに、向こうはまだ本気じゃなかったってことか。それでも、このチャンスを逃す訳にはいかない!冷気がまた放出されてきているため、早く魔剣術で倒さなければこっちの負けだ。

「おおおおおお!!!」

 倒し切ろうと速度を上げ、攻撃を続ける。ヒサメさんの剣筋も他の子と比べるととても速いが、魔法で底上げしている僕の方が速く、ヒサメさんの手元に攻撃し、氷の刃を手放させた。今だっ!

 渾身の一撃をヒサメさんに叩き込んだ……が、

「やっぱり凄かった……!私の剣『1本』…見切られた…。だから……ここから『2本』で行く……!」

 もう片方の手に持っている別の氷の刃で止められた。



 まだ本気じゃなかったのか!?これは不味い…一旦、距離をとって様子を……

「逃がさないよ」

「!?」

 思考を読まれ、動揺した僕の元に2本の剣が向かってくる。必死に魔剣術で対抗し、なんとか食らいつくが、さっきと同じ速度、威力が2倍の手数で襲ってくる。魔剣術でも追いつけないなんて強すぎる…!

「ぐうぅぅ…うわ!?」

「隙あり…」

 僕の剣が上に弾かれ、ヒサメさんの剣が腹部に当たる。刃が潰れているため、深く切れはしなかったが傷口が凍る。

「いっ!!」

 血液と混ざって赤い氷が、僕に激痛と体温を奪ってくる。冷気もまた覆ってきて絶望的な状況だ。

「ロク…楽しかったよ。またね……」

「……」

 ヒサメさんが剣を振り下ろした。しかし、僕の身体にその剣が当たることなく、地面に当たる。

蜃気楼(しんきろう)

 きっとこれが僕の最後のチャンスだ。ここで決める。

牛頭(ごず)落とし』だ。魔剣術が効かなかったならもうこれしかない。ヒサメさんの華奢(きゃしゃ)な首に腕を絡ませ、絞めあげる。体に触れた時、人間とは思えない冷たさを感じた。もう構うもんか、全身凍りついたって絞めあげる!

「あ……ロ……ク……」

 痛い…あの時の地獄をまた味わうなんて。感覚が無くなってきて、力が入っているのかどうかすら分からなくなった。僕の意識が遠くなっていく。早く……早く、倒れてくれ……!そう願いながら、僕の記憶はここで途切れてしまった。



「…………きろ」

「………起きろ」

「ロク、起きろ!」

「うわっ!!」

 目の前にウンスイくんの顔があって、びっくりして飛び起きる。その際、ウンスイくんと頭をぶつけ合い、その痛みに悶絶(もんぜつ)する。

「〜〜っ!!やっと起きたか……」

「いてててっ……あ、あれ試合は!?」

「……負けたよ」

 そんな……!?皆が頑張ってくれたのに……僕のせいで……。心配そうに僕の顔を覗き込むリキくんとベニエさん。それに見かねたのかウンスイくんが僕の(ほお)をつねる。

「お前がそんな顔するな。一人で責任を負う必要はない。俺たちはチームで負けたのだから」

「そうだぜ!俺が勝ってたら優勝できてたんだからな!ロクだけが悪い訳じゃない!」

「……私も皆の足を引っ張ってばっかりでごめん……だから私に、私たちに責任を感じないで。……きっとクーちゃんもそう思うはずだから」

 皆の優しさに我慢できず、涙が溢れてきてしまった。泣かないように必死に我慢していた分、溢れた時の反動は大きかった。こんなに泣いたのは小さい頃、お父さんに怒られた時以来だ。

「ご……ごめ…ん、ほん…と……う…に!ううっ、うあぁ……!」

 こうして、僕にとって長かった代表戦が終了した。

最終結果はこのようになりました。

挿絵(By みてみん)

1組対11組は4対1で1組が勝ちました。11組で唯一勝ったのは先鋒の厨二くんでした。相手の金眼の子は体が痛いという理由で棄権しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ