27話 優勝決定戦6
「副将、前へ!」
クウナさんが前に出る。その後ろ姿は死地に赴く兵士のようで、頼もしくもあったが恐怖を感じたりもした。何もなければいいんだけど……。
相手は、両腕に包帯を巻いていて、赤いタスキを巻いた灰色の髪の褐色男子だ。ん?よく見ると両足にも包帯を巻いている。そして、なぜか裸足だ。11組の先鋒(右腕包帯男)よりも重症じゃないか!皆回復嫌いなのか?
「試合開始!」
クウナさんはいつもの金縛りを使う。全身包帯くんは動きを封じられ目を丸くしている。そして、そのままクウナさんの必殺コンボに繋がる。……はずだった。
「はっ!!」
全身包帯くんの大きな声が響いたと思ったら、クウナさんが吹き飛ばされていた。
クウナさんの金縛りを解いた……今まで解いたことがある人は、僕が知るところではコーラ先生しかいない。
「うむ…中々の霊魔法だが、ワシには効かん!なぜなら、ワシも霊魔法をつかえるからな!解除するのは容易いものよ」
全身包帯くんも霊魔法を使うのか。ここまで勝ち上がったチームなら使える者がいてもおかしくない。……よく考えたら霊魔法の使い手同士の戦いはこれが初めてなんじゃないか?どんな戦いになるのだろうか?
「お主も拳術を使うのだろう?先ほどの動きでわかったぞ。……ならここは、実技での勝負といこうではないか!」
「……いいよ」
クウナさんが相手の誘いに乗った。どう見ても体格では全身包帯くんの方が強そうだが、勝算はあるのだろうか?
クウナさんは強化した腕で正拳突きを打つが、全身包帯くんはそれを受け止めた。打撃音とは思えない爆裂音が響き、それが普通であれば受け止められるようなものではないと分かってしまう。その後も目で追えるギリギリの速さで攻防を繰り返す2人。す…凄すぎる。霊魔法が強いのは分かっていたが、こんな人間離れの格闘戦ができるほどだとは思っていなかった。僕はこんなことが可能な選手たちに勝ってきたのか……。僕は自分がいかに運が良かったのかを痛感した。
互角そうに見えていた戦いだったが、クウナさんの動きが少し遅くなっているような気がする。やはり僕の印象が正しかったのか徐々にクウナさんが押され始めてる。ついに体力の限界がやってきたのかクウナさんの動きが止まってしまった。全身包帯くんは攻撃の最中だったがそれに気づき、彼も動きを止める。
「……うむ、そろそろ限界か?もうこの辺りにして降参したらどうだ?……お主、だいぶ無理をしているだろう?」
「ハァ……ハァ……ハァ……ッ!」
息がだいぶ荒い。全身包帯くんも疲れてはいるがまだまだ戦えそうだ。だけど、クウナさんは無言のまま再び構え始める。
「途中から左腕を庇っておっただろう。……折れているのではないか?」
「…………これくらいなら……っ我慢できる……友達のためなら……」
そう言っているクウナさんだが表情は苦しそうだ。クウナさんの友達のために戦う覚悟はここまで固いのか……。
「うむ、そうか……お主の覚悟はようく分かった!ならワシはその覚悟に全力で応えよう!」
全身包帯くんも構えを取りクウナさんを待ち構える。クウナさんは息を整え、再び戦い始める。しかし、片腕が使えない状況で戦うには相手が悪すぎる。もはや相手の攻撃を防ぐのが精一杯だ。
『バゴンッ!!』
「いっ!!うぐっ…」
全身包帯くんの蹴りをまともに食らってしまい、吹き飛ばされ壁に激突するクウナさん。追撃されると思っていたが、全身包帯くんはその場を動かず、クウナさんを待っていた。
そこからは、向かっていっては吹き飛ばされを繰り返して、とても試合と呼べるものではなかった。まるでゾンビのように何度も起き上がるクウナさんに全身包帯くんは、
「お主がそこまでするほどの友とは一体誰なんだ?」
と問いかける。
「……」
ヨロヨロ歩きながら残った右腕で殴りかかるクウナさん。それを受け止め、
「お主はなぜそんなにボロボロになってまで戦おうとする?」
再度、クウナさんに問いかける。
動けなくなったクウナさんは振り絞るかのように声を発する。
「……ベニちゃんを泣かせた」
「何?」
「……ベニちゃんが…あなたたちのチームの女の子に泣かされた……だから、ベニちゃんをいじめたあの子を、あなたたちを…私は許さない……」
「……ああ、あの女子か。そうか……それは、すまぬことをした。あやつはワシらの中でも手を焼いていたが、あんな行動をする奴とは思わなかった。本当にすまない」
「…………」
「……お主は、まだ諦めるつもりはないのだな?」
「私は…あなたたちに勝つまで…絶対に…諦めない!!」
「…ハハッ、ハッハッハッハッハッハ!」
「…ふう、降参だ!」
会場中が予想だにしなかった展開にどよめきが起きた。それは、僕らも一緒で、18組は困惑、1組のチームメンバーからはブーイングが飛び交っている。
「…どうして降参したの?このまま行けばあなたの勝ちだったのに」
「まあ、そうだな。…だが、あのままやっておればお主は死ぬまで諦めなさそうだと思ったんでな、その気持ちにワシが負けただけのことだ」
「……」
「あの女子には、イリネスの方から謝るようにしっかり言っておくから許してくれ」
そう言って、振り返って手を振りながら試合場内から出ていく全身包帯くん。出ていった瞬間、不良くんに思い切り頭を叩かれていた。向こうで結構揉めている。というか、不良くん氷漬けから元に戻ったんだ。あんな状態だったのに元気なのは氷に耐性があるからなのだろうか?…いや、それよりも…僕は担架で運ばれていくクウナさんに駆け寄った。
「クウナさん、大丈夫!?」
「ごめん、私勝てるって言っておきながらこんな不甲斐ない結果で……」
「そんなことはないよ!最後まで戦って自分の戦いを貫いたじゃないか!」
「……!……ふふっ、そうだね、ありがとう。ねえ、ロクくん?」
「な、何?」
「頑張ってね」
「うん!ありがとう…!」
そう言ってクウナさんはいつもの優しくて癒やされる笑顔を見せてくれた。
……後は、僕の試合だけだ。
「大将、前へ!」
お知らせ
7月から投稿頻度が遅くなると思います。ここまで見てくださった人には本当に申し訳ございません。
これまでのように毎日投稿は出来なくなると思いますが、続けていきたいという思いはあるので失踪だけはしないように頑張っていきたいと思います。




