25話 優勝決定戦4
「次鋒、前へ!」
1組との次鋒戦が始まる。相手は長い紺色の髪を垂らして、片目が隠れており、何だか自身なさげな表情をした女子だ。何だかシンパシーを感じるな。同じクラスだったら気が合ってたかもしれない。
「試合開始!」
ベニエさんは炎の弾幕を展開し、目隠れさんに発射する。だが、その子に炎弾が当たることなく全て空振ってしまった。外した?でもどちらかというとあの子を避けるような軌道だった気がする。
ベニエさんもその違和感を感じ取ったのか今度は広範囲に炎の波を打つ。すると、明らかに炎の動きが目隠れさんを避けるように動いた。何かに守られているような不思議な挙動だった。
「私の魔法が通らない……?どうなっているの?」
ベニエさんも動揺しているようだ。その時、
「キャア!」
突然、ベニエさんがその場で倒れる。押し潰されている?相手の魔法が全く分からない。
潰されているベニエさんの顔を見て、この試合で初めて目隠れさんが言葉を発する。
「わ、私……初めてあなたを見た時からずっと気になっていたの……。さっきの試合の泣くのを我慢している表情……!その表情が忘れられないの!もっと……もっと私に見せて……/// 」
……やっぱり仲良くなれないかもしれない。苦しんでいるベニエさんを見てハァハァと息を荒げている。違う意味で恐怖を感じる。
「……っこの!」
「キャッ!」
ベニエさんが高圧の水鉄砲で目隠れさんを撃ち、それに怯んだ影響でベニエさんを押し潰していたものが消えた。
「キモいんだよ!!さっさと倒れろ!」
ベニエさんがキレた……。高圧水鉄砲を連発し相手に攻撃の隙を与えない。だがやはり、目隠れさんの前には謎の壁がある。この壁が何なのか分からない限りは攻撃が当たらない。
「ひぃ!ご、ごめんなさい!悪気があったわけじゃなくて……つい口に出ちゃったの……!許して……!傷つけないで……」
さっきとのギャップが凄すぎる。どっちが本当の性格なんだろうか?
「はあ!?意味わかんない!なら棄権すれば?」
「それは……ダメです。ここで活躍しないと見捨てられちゃう……」
「な、何?どういうこと?」
「わ、私、いじめられているんです……。皆が『気持ち悪い』っていじめるんです。だから、ここでいいとこ見せないと私の居場所がなくなっちゃう」
衝撃的な言葉にベニエさんが手を緩めてしまう。その瞬間、また上から押し潰されてしまい、倒れるベニエさん。
「いっ……いたっ……」
「はぁっ…/// それ、その表情!いい!!」
「わ、私!あなたとお友達になりたいの……!さっきも私のことを気にかけたのよね?あなたと私は相性ピッタリだと思うの…… ねえ?お友達になりましょう? 」
ギリギリと潰されていくベニエさん。もう腕を上げることもできない。これ以上は危険だ。
「ベニちゃん!!もういいよ!棄権して!」
クウナさんが耐えかねて危険を促す。僕も同意見だ。ここで負けてもまだ逆転の余地はある。ここまで意地を張るほどの場面ではない。
「こ……こうさ」
そうだ、それでいい。あとは僕たちに任せてくれればいい。
「降参……はしない……ぜっ…たい…に……!」
そんな……いったいどうしてなんだ。
「ベニちゃん!!大丈夫!私たちは気にしない!だから…」
「私が…!許せないの……!!」
「私だけが……足を引っ張ってる……それが……うっ…く、悔しいっ……!」
……。ベニエさんの目には涙がこぼれかけていた。
「ベニちゃん……」
「それに…アイツが……リキがあんなに頑…張った…のに、私が……諦めるわけには…いかない!!」
僕はどうするべきなんだろう……。クウナさんのように止めるのが正しいんだろうが、ベニエさんの気持ちも分かってしまう。自分に劣等感を持っているのは僕も同じだから。僕は、ここの選択を誤ってしまうと取り返しのつかないような気がしてならなかった。どうすれば、いいんだ……。
「ぐっ……!!ああああっ!!!」
メキメキと骨が軋む音がする。まずい!
「……ベニッ!!!降参しろ!!」
この声は!声のした方を振り返ると、まだ全身傷だらけのリキくんがいた。
「ベニッ!!無理すんな!!あとは俺たちの仲間に託そうぜ?」
その言葉を聞いた瞬間、ベニエさんの口から、
「うっ……うっ………こう……さん…」
泣きながら降参するベニエさん。
「勝者、イリネス!」
後味の悪い勝敗に僕ら含め、誰も何も言わなかった。だけど、あんなに悔し泣きしているベニエさんを見てしまうと今まで感じたことのない怒りにも似た感情が湧き上がってくる。それはクウナさんとウンスイくんも同じのようだ。
僕らの闘志はさらに強くなったところで、中堅戦が始まる。
〜ベニエさんが降参して少し経った時〜
「スンッ……ごめん、勝てなかった……」
「いいって、俺のために頑張んなよ」
「なっ/// ばっ! バッカじゃないの!?アンタのためじゃ……ないから!」
「いや、お前自分で言ってただろ、『リキがあんなに頑…張った…のに』って」
「真似すんな〜!!!」
「痛って!!痛てててっ!やめろ!重症だぞこっちは!」
「うるさい!!」
完全にリキが主人公のようになってて困ってます(冗談)。ロクの出番が減らないことを祈ります……。




