21話 『雪獄姫』
目が覚めると、知らない天井……ではなく、見慣れた天井だった。どうやら保健室に運ばれたようだ。
「あら?目が覚めたみたいね?」
「あ、メディス先生」
「ロクく~ん?あまり無茶しないのって私言ったよね??血だらけのキミが運ばれた時、すごくびっくりしたんだから」
笑顔で凄んでくる……こんな怖い笑顔は初めて見た……あ!そうだった!試合、あれからどうなったんだ?
「先生、あの後、どうなったんですか?」
「あの後?代表戦の話?それなら今、Cブロックの決勝ね。Aブロックはとっくに終わったわ」
「え!?」
終わった?Aブロックが?決勝はどうなったんだ?僕抜きでしたってことか?考えがまとまらずオロオロしていると、
「とりあえず、体は大丈夫?」
とメディス先生が少し呆れ笑いして聞いてきた。
「……多分大丈夫です。」
体に不調がないか確認しようとベッドから起き上がろうとした時、軽く目眩が起きた。
「血を流しすぎたのかもね。はい、これ、貧血に効くから」
「あ、ありがとうございます」
「もう、全く…回復魔法も万能じゃないから無茶しないでね?」
貧血に効く錠剤をもらい、保健室を後にした。
試合場に戻ると、チーム18の4人を見つけた。皆も僕に気付いたみたいですごい勢いで駆け寄ってきた。
「ロクくん!?もう大丈夫なの?回復しても目が覚めないから心配したんだよ?」
「ロク、悪い!俺のせいでお前に無茶させちまった」
「それは本当にそう!……でも私も負けちゃってごめん」
「あ、え、え?」
一度に色々言われてなんて答えればいいかわからず混乱していると、
「皆、落ち着け。ロク、体は平気か?」
「あ、う、うん。もう大丈夫」
「そうか。あと、決勝戦のことなんだがな」
「Aブロックの決勝戦なんだが、ロクとベニエ2人が参加できる状態じゃなかったから3人で出場することになったんだ」
「そんな……」
「俺たちは……」
「そっか、仕方ないよ、次の代表戦で頑張ろう」
「何言ってるんだ?3人で勝って上位1チームになったから体調整えておけよ」
「え?勝ったの?」
「ああ」
なんだ、てっきり負けたのかと思ったよ。しっかり3人で勝ってることからやっぱり、僕らが2敗もした8組の実力が非常に高かったことがよくわかる。
「Cブロックの決勝を見てみろ。お前も気になるはずだ」
「え?うん、まあね」
正直、そんなに気になっていないけど、ウンスイくんがそう言ったのが気になった。今行っている試合を見てみると、僕がよく知っている人物が戦っているところだった。白銀の子だ。
「またしても、相手は手も足も出ません!あの噂は本当でした!1年でありながら、混合魔法である氷魔法を使う生徒がいると。氷のような美しさに相手を氷結地獄に追い込むその様はまさに『雪獄姫』と呼ばれているのも納得の強さです!」
『雪獄姫』?そんな凄そうな異名つけられていたのか、あの子。でも僕だったら恥ずかしくて絶対呼んでほしくない。
「あの子は一体?」
「は?お前、ヒサメのこと知らないのか?」
ヒサメ?あの子の名前か、やっと名前を聞いたとこだよ。
「あ、いや、一応知ってるけど。名前は今聞いた」
「……そうか、お前はアイツと戦わなければならない、よく見ておけ」
「……」
もう見る必要がないくらいあの子の魔法の恐ろしさは身をもって体験している。
対戦相手は炎弾を放ちながら、剣を振るう。しかし、炎弾は届く前に消失し、ヒサメさんは相手の剣を避けると同時に一緒に腕ごと凍らせていく。
「ギャーーー!」
凍らされた子は腕を押さえながら凍傷の痛みに悶絶する。それでも構わず、氷で作った刃を相手めがけて
飛ばしていくヒサメさん。
流れた血でさえ凍りつき、白銀の世界に赤い氷が侵食していく様は『雪獄』と呼ばれるのも納得しかなかった。
「あれが、僕の相手……」
今までの相手でも僕より強い人は何人もいた。だけど、ここまで戦う前から勝てるビジョンが浮かばなかった相手は今回が初めてだった。
0対5の完勝で1組の上位1チーム入りが決まり、不安を残したまま、僕らの優勝決定戦が始まろうとしていた。




