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20話 特訓の成果

「大将、前へ!」

 僕の番がやってきて前へ進む。ここまでで2対2ということでもあり、会場は大盛り上がりを見せている。

 18組の皆が2階の観客席で応援しているのが見える。皆の為にもここは負けられない。

「試合開始!」

 審判の合図と共に僕は一瞬で相手選手との距離を詰める。そして1回戦と同じく、着地と同時に相手に向けながら『逆風』を放った。これが僕の先手必勝の初見殺し技だ。追い風と逆風を組み合わせて一瞬で相手を吹き飛ばすこの技は『疾風』と名付けた。

『疾風』を受けた相手は壁に激突し、またしても一瞬で決着がついた。……ように思われたが、砂埃の中、まだまだ余裕そうに歩いてくる相手選手。ものすごいタフなのか?

「またしても、ロク選手の秒殺かと思いきや、フミ選手耐えました!とんでもない耐久力です!」

 フミと呼ばれた相手の大将は、女の子にしては体格がしっかりしていて、僕より10cm以上は大きい選手だ。前回の試合では、確か、じゅ…『ガシッ!』

「なっ!」

 決して油断していたわけではない。さっきまで歩いてきていたフミさんがいきなり僕の目の前に現れた。そして、僕の襟元(えりもと)を掴むと、思い切り、地面に叩きつけた。

「あがっ!!」

 どうなった!?意識が飛びそうになるほどの衝撃を受け、力が抜ける。息が!苦しい!肺に息が入りづらい。僕はここで初めて投げられたと認識した。そうだ、彼女は柔術だけで相手を倒した実力者だ。

 何とか、起き上がりすかさず、追い風で距離を取る。まだ、完全に力が入らないが、止まればまたあの技が飛んでくる。痛みを我慢して追い風を使い、撹乱(かくらん)させる。

 彼女の後ろを取ってもう一度『疾風』をぶちかます。またもすごい勢いで飛んでいき、壁に激突する。だが、激突する瞬間、僕は彼女が手を壁に当てているのが見えた。

「またこの技?もう痛くないよ、受け身の取り方分かったからね。今度はこっちの番だよ!」

 また一瞬で僕との間合いを詰めてくるフミさん。なぜこんなに早く動けるんだ?僕は追い風で掴みかかってきた腕を回避する。その速度には流石について来れないみたいで距離を開くことができた。

「ちょこまかと鬱陶(うっとう)しいねー、そんなそよ風じゃアタイを倒すなんてできないでしょ?こっちに来な」

 そういうと空中で何かを掴む動作をし、自分の方へそれを引き寄せた。すると、僕の体がフミさんに引き寄せられ、再び僕の襟元を掴んだ。

「ハイ、終わり」

『ズドンッ!!』

 ……痛い……どうなったんだ?僕の体は、全身が激痛で悲鳴を上げている。何とか意識は保てたが、もう一撃食らえばもう立ち上がれる気がしない。よろよろと立ち上がると、フミさんは意外そうな顔から不機嫌な顔に変わった。

「まだ意識あるの?アンタ見た目によらず頑丈(がんじょう)だね。けどもう終わりにしようか?面倒だし」

 そう言って空中を掴んで引き寄せると、また僕の体が引っ張られる。最初は分からなかったがこの体の自由が奪われる感じ、霊魔法だ。この人は強靭(きょうじん)な肉体と身体能力を強化できる霊魔法のハイブリットなんだ。

 分かったところでこの引き寄せの対処ができる訳でもない。呆気なくフミさんの元に引き寄せられ、首元をまるで蛇のように腕を(から)み付かせる。

「ぐっ!!」

 急激に絞める力が上がり、対抗しても全く動かない大蛇のような腕が、もうここから抜け出すことはできないと嫌でも分からせてくる。

「私の『牛頭(ごず)落とし』は名前の通り、ミノタウロスでも引き剥がせないよ。もう諦めな?」

 次第に意識が薄れていく。もうダメなのか……。苦しみと痛みが引いてきた時、夢を見た。



『狩人は風を操り、ある時は追い風を起こして目にも止まらぬ速さで盗賊を倒し、

 またある時は逆風を起こして吹き飛ばしてしまいました。』

 これは……お母さんが読み聞かせしている時の記憶だ。このお話は…風の勇者だ。なぜ今、こんな夢を見るのだろう?

『……とうとう追い詰められてしまった狩人は蜘蛛に捕まってしまいました。もうダメだ。そう思った時、』

 !確かこの先の話は図書室で見た時はページが破れていて見えなかった!どんな話だったっけ!?

『なんと、狩人の体から切り裂くような鋭い風が吹いてきたのです。狩人は、その…隙…ついて風…を………』

 あ!待って!もう少し話を!



 意識が夢から現実に戻されると、僕の首を絞めていたはずのフミさんが僕と離れたところに立っている。体は僕の血で赤くなっている。…と思ったが、よく見ると、彼女も体の至る所に切り傷があった。これは……あの夢の話と……。状況はわからないが、今やることだけはハッキリしている。

「勝つ……!」

 僕は痛みを忘れ、追い風で加速し、フミさんをまた撹乱させる。『疾風』では彼女に受け身を取られ、倒すことができない。なら、もう一つの技を使うしかない。まだ未完成だけど、ここで成功させる!

 この技は使うタイミングが重要だ。タイミングを伺っていると、

「いったい何なんだよ?アンタの風は普通じゃない!もうここで終わらせる!」

 フミさんが空中を掴み、僕を引き寄せてきた。まだだ、もう少し。

「終わりだ」

 そう言って、僕の襟を掴んだ。……はずだった。襟元を掴もうとした手はまた虚空(こくう)を掴んだ。

「何!?」

蜃気楼(しんきろう)だよ」

 僕のもう一つの魔法、『蜃気楼』これは、風の勇者の姿を消す魔法を再現しようとして偶然編み出した魔法だ。空気の層をずらして相手の見えてる光景の位置をずらす。空気を風で留めるのが大変で成功率は25%程だったけど、上手く行ったようだ。

 完全に無防備となった相手に、僕は『魔剣術』で追い打ちをかける。これが今の僕にできる最強技だ。

「うあああああ!!!」

 痛みはとっくに無くなっていた。ただ目の前の相手を倒すその一心でひたすらに剣を振い続ける。

「ああああああ!!!」

 叫びながら剣を振るう。振るい続けて意識が薄くなってくる。貧血なのか酸欠なのかわからないが構わず剣を振い続けた。

 やがて、僕の体に限界が来た。その場に剣を突き刺して立つのがやっとだった。彼女は……相手はどうなった?

 彼女はまだ立っていた。ズンとコチラに歩みを進める。これでも倒せないのか……!もう僕に力は残ってない。諦めかけたその時、彼女の歩みが止まった。審判が彼女の容体(ようだい)を確認すると、

「気絶している……」

「勝負あり!!勝者ロク!」

 立ったまま気絶したのか、ボロボロになりながらも最後まで膝をつかないその姿に神々しささえも感じながら、僕もそのまま気絶した。

後に、絞められた時の胸の感触はどうだったのか感想を求められ、ロクはこう語りました。

「2つの山が並んでいた、岩肌の」

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