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15話 戦いの意味

「ロク!このままじゃ負けるぞ!」

「え!?何急に?」

 リキくんが唐突(とうとつ)に負けるぞ宣言しだした。放課後になり、いつものように練習に誘うと思いきや一体どうしたのだろう?

「クウナだよ!今日もまた断られた。ベニエは『今日は参加する』って言ってたけどさ、いつもはほとんど『クーちゃんが断るから』って言って、来ないから3人でやるのが多くなってるだろ?これじゃ俺たちのチームまともに戦えねーよ!」

「別にそんなことないと思うけどなぁ」

 団体戦とはいえ、対戦形式は個人戦だ。複数人で連携して戦う訳でもないし、最悪、個人で練習できれば十分だと思う。

「お前もそっち派かー、ウンスイもそう言って聞かないんだ」

 ウンスイくんも多分僕と同じ意見だろう。でも、リキくんの言い分はともかく、僕もこのままクウナさんが参加しないのも良くないと思う。

「う〜ん、じゃあ今日は僕が説得に行ってみるよ」

「お!助かる、俺も説得したけどダメだったんだよな。ウンスイが『ロクなら仲良いからできる』って言ってたから頼みに来たんだ」

 ウンスイくん面倒なこと僕に丸投げしたかっただけなんじゃ……。まあ、いずれ説得しようとは思ってたからいいんだけど。

「できるだけ頑張ってみるよ」

「おう、頼む」

 リキくんと別れてクウナさんを説得するべく、寮に向かった。



 レスト寮は左側が男子寮、右側が女子寮になっていて食堂以外は基本一緒になることはない。だからこそ右側の女子寮に入るのは謎の勇気がいる。廊下を歩いていると周りの女子たちが僕を見てヒソヒソ話している……ような気がした。は、早く用件済ませなきゃ!

 907号室と書かれた部屋の前に着くと早速、ノックして返事を待った。すると、

「は〜い?誰〜?」

 と気の抜けたような返事がして扉がガチャリと開いた。

「ロクくん!?どうしたの?てっきり他の娘だと思って」

 まあ、女子寮に来る男子は白い目で見られるからね。男子が来るとは考えないだろう。

「ごめん、今大丈夫?」

「ちょっと待ってて今着替えてくる!」

 え、ここで放置されるのも中々つらいんだけど……。すれ違う女子たちに(にら)まれながら縮こまって待っていると、

「ごめんね、いいよ」

 と言って僕を部屋に通してくれた。はあ、助かった。



 クウナさんの部屋は可愛い動物たちの人形に囲まれていた。人形好きなのは女の子らしいと思った。

「それで?どうしたの?女子寮まで来て、大事な用事?」

「いや、大したことじゃないんだけど、聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」

 説得する前にクウナさんに確認したいことがある。

「うん、この前の休日でクウナさんが代表戦嫌だって話をしたよね?」

「……うん、そうだね」

「それでさ、戦うことについてどう思っているのか聞きたくて」

「どう思っているって?戦いは怖いものって思うけど」

「そうなんだけど、う〜ん……クウナさんは戦いにどんな意味があると思う?」

「え?意味?どっちが強いか優劣をつけるためかな?」

 そうだよな、それも正しいと思う。だから強さに執着がなさそうなクウナさんは戦うことが苦手なんだろう。

「うん、そうだね。でも僕の考えは違うんだ。僕が思う戦いの意味は『自分を変えること』だと思う」

「どういうこと?」

「僕は引っ込み思案(じあん)で力も弱くて大したことのない人間だって思ってる。けど、僕は誰かのために戦う勇者や英雄みたいに強い人になれるようになりたいとも思ってる」

「だから、僕にとって戦いは『弱い自分を理想の自分に近付ける』ものなんだ」

「クウナさんは、戦ってお互いが傷つくだけだと思っているけど、多分皆それぞれ、戦いに意味を持って戦っていると思うんだ。自分のためでもあるし、誰かのためでもある」

「だから、クウナさんも自分の戦いの意味を探してほしいなって思っているんだ。そうすれば戦いが苦手でも戦える意志が生まれると思うよ。僕も一緒に探すの手伝うからさ」

「……」

 クウナさんは何を言う訳でもなく、ただ一点を見つめて考えているようだった。人の嫌なものを変えるのはとても難しい。ならば、嫌でも頑張れる理由を見つけることしか僕には考え付かなかった。

 クウナさんが答えるまで僕は待つことにした。やがて、

「……私は……友達が好き。……だから友達が傷つくのは嫌……」

「うん」

「だから、私の大事な人を守れるように強くなりたい……!」

「うん、すごくいいと思う」

 実際、誰かのために戦う人は強くなれるって物語でも定番だし。それはともかく、これでクウナさんも代表戦に前向きになってくれるだろう。

「ロクくん、ありがとう」

「え?」

「ロクくん、あの時の話真剣に考えてくれたんだね。嬉しかった。だから、もしロクくんが困ってたら今度は私が助けてあげるね」

「う、うん」

 顔が熱い。恥ずかしげも無くそんなこと言えるなんてクウナさんは男殺しの才能がある。

 この後はクウナさんと一緒に武道館に向かい、練習試合に参加した。また総当たりで行った結果、0勝4敗した。

 ……あれ、僕もしかしてこの中で最弱なのか?また顔が熱くなった。

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