9話 勉強会?
僕は今、図書室に来ている。なぜかウンスイくんと勉強会をすることになったからだ。
そして、肝心の勉強はというと、
「そこは違うぞ、答えはBだ」
「それも違うな、21だ」
勉強会というより、補習みたいになっている訳だけども。それなら、なおさら僕を勉強に誘ってくれた理由が分からない。そろそろ頭も痛くなってきたし休憩がてらその疑問をぶつけてみることにした。
「ウンスイくん、どうして僕を勉強に誘ったの?僕と勉強したらウンスイくんが勉強できないんじゃ……?」
「ああ、そのことか。ちょっと知りたいことがあったもんでな。そのついでに勉強を見ようと思ったんだ」
あ、ついでだったんだ。そっか……。でなければ僕を誘う理由はないもんね。別に悲しくないし。
「そ、そうなんだ。知りたいことって何?」
「……ロクは代表戦に出たいと思っているか?」
「代表戦?」
意外な問いかけに少し面食らった。どうだろう?冒険もので主人公が強敵を戦うのを見るのはとても好きだ。かっこいいし。でも、僕自身が戦うのはあまり想像していなかった。どちらかというと未知の探索の方が胸が躍る。
「お前がもし、代表戦にやる気があるのなら俺も手伝おうと思う」
「……え!?なんで!?」
代表戦は集団戦ではなく、団体戦だ。つまり、試合は1対1になる。ウンスイくんが手伝うメリットはないどころか自分が代表戦に選ばれる可能性を落とすデメリットでしかない。
「俺は、お前の戦い方に興味がある。先生との実習でお前は先生に攻撃できた唯一の存在だ。頑なに風魔法を使っているのも気になる。それ以外にも理由があるが……」
「先生に攻撃できたのはたまたまだよ。クウナさんのおかげでもあるし」
あと、風魔法を使っているのはそれしか使えないからなんだよな……。
「そうだな。だが、それを考えたのはロク、お前だ。お前が代表戦に選ばれれば、一番勝率が高そうだと考えたのもその発想力があるからだ」
なんだろう?なんかやけに僕に対する評価が高いな?嬉しいけど、僕はそんな優秀ではない。現にこうしてウンスイくんに勉強を教えてもらってるし、選択した剣術と短剣術は演武練習で「う〜ん、まいっか、合格!」と渋い顔して言われた。あのコーラ先生に。
「やっぱり僕じゃ選ばれないと思うよ。僕を誘ってくれたのは嬉しかったけど、ごめん」
「……そうか、いや気にすることはない。お前がそうしたいのなら仕方がない。話は終わりだ、そろそろ勉強を再開しよう」
「…………」
断っても僕の勉強見てくれるのか。ついでと言っていた割にはしっかり見てくれる。約束を守る義理堅い人なんだな。
ウンスイくんの特別授業が終わり、試験範囲の大半をしっかり叩き込まれた。やっぱりクラスの優等生なだけある。僕はいつものように風呂から上がるとベッドに直行する。
「代表戦かぁ」
寝言のようにボソッと呟く。もし出れるか出られないか選べるとしたらどうだろう?正直、クラスの代表として戦うのは、世界の命運を託された英雄のようで憧れる。でも僕がそんなことしたら場違いと思われそうで怖い。
いつも僕は僕のやりたいことを押し殺してきた。村ではみんな僕のことを聞き分けのいい良い子だと言っていたが、そう言われて嬉しかったのは最初だけだ。あとは良い子のレッテルが剥がれて失望されるのが怖くて頑張っていただけだ。もちろん村のみんなは良い人たちだ。けど、良い人たちだからこそ嫌われるのが怖かった。
だからこそ、物語の冒険の世界はとても楽しかった。冒険の世界は自由に溢れている。誰も取り繕うとせず、自分のやりたいことをやっていた。僕が冒険に憧れているのは自由を求めているのからなのかも知れない。
『お前がそうしたいのなら仕方がない』
ウンスイくんの言葉が頭の中で反響する。……僕が本当にやりたいこと……。
翌日、僕はウンスイくんの席へ向かった。ウンスイくんは顔を上げて言った。
「おはよう、どうした?ロク」
「ウンスイくん、おはよう。えっと」
言わなきゃ。
「その……」
言うんだ。
「や……や」
言え。
「やっぱり、代表戦に出たい……!」
言ってしまった。顔が熱い。湯気出そうな勢いだ。もう後戻りはできない。チラッとウンスイくんの方を見ると、キョトンとしていたが、
「フッ、分かった、任せろ」
そう言ってメガネを上げて不敵に笑っていた。
こうして僕の勉強会が始まった。
ウンスイくんは実はモデルがいるのですが、実際に小学生の頃にこんな感じのキャラがいて、すごいかっこいいなと思っていたわけなんですが、その子の一人称が「オラ」のため、しんのすけと呼ばれていました。
流石にウンスイくんに「オラ」と呼ばせるのは違和感あったので苦渋の決断で「俺」にしました。




