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プロローグ 風の吹き始め

 僕は、冒険に憧れている。

 夜もキラキラ輝いている街、誰も見つけたことのない未知の魔法道具、そして、一晩で一つの大陸を滅ぼした伝説の存在のドラゴン。


 何もない村で育った僕にとって、唯一(ゆいいつ)の楽しみは絵本や、たまに訪れる旅人の冒険話だった。

と言ってもコミュ障の僕は、知らない人に声なんて掛けられないので、僕のお父さんが、経営している酒場で聞いた話を僕に聞かせてくれる。


「……それでな、星だと思った赤い光はなんと、こっちを見つめる化け物の目だったんだ!」

「うわぁぁ!!」


 お父さんが、僕に向かって腕を大きく振り上げて驚かしてきた。びっくりした僕はその腕を避けるかのように後ろに仰け反り、椅子ごと倒れた。


「大丈夫か!?ロク」

「大丈夫?お父さん、食事中なんだからロクをびっくりさせちゃダメでしょう?」


僕を次々に心配してくれるお父さん(カイト)とお母さん(ミーラン)。


「ごめんな?思ったより聞き入っていたからつい」

「いや、やめてよ。僕のフォークどっかいっちゃったよ」

「ん〜?どれどれ〜どこに行ったかな……っ!?」


 お父さんが突然硬直した。どうしたのだろうとお父さんが見つめている先に目を向けると、そこには赤い血ような涙を流した酒樽(さかだる)さんがあった。お父さんの1番のお気に入りである秘蔵の果実酒が突き刺さったのであろうフォークの穴からドクドクと流れ出ているではないか。その穴はまるで……

「赤い目だ……」



「ちゃんと荷物は持った?物は届くのに時間がかかるから忘れ物しないようにね」

「うん」


 玄関で大きなバッグを両手いっぱいに持っている僕に、お母さんはあれこれ持ったかどうか(せわ)しなく確認してくる。今日は王都にある『レイント学園』に入学するために、お父さんがわざわざ王都から馬車を呼んでくれた。


 レイント学園は6歳を迎えた子供が集まる王立の学校だ。そこで3年間学ぶことがこの国の義務教育なのである。在学中は寮生活になるため、こうして荷物をまとめている訳だ。


「いっぱいお友達できるといいね」

「……うん」

 僕が一番気にしていることを言わないで……。


「頑張ってねー!つらくなったら手紙に書くのよ!すぐに会いに行くからねー!」


 馬車が到着して乗り込んだ僕に激励(げきれい)の言葉をくれるお母さんと覇気のない手を振って見送るお父さん。

 荷台の後ろから2人に向かって大きく手を振る。姿が段々小さくなって見えなくなると若干(じゃっかん)の寂しさを感じつつも、新たな冒険が始まる予感に胸をときめかせながら、そよ風に吹かれていた。




これより、第1章 学園編スタートです!

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