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4 ユーチューバーのキムラン、ヒモになる

 家の中は、RPGでよく見る素朴な民家と同じだった。簡素な作りの木のテーブル、丸太を伐っただけの椅子。


 気圧されるまま椅子に腰を下ろすと、向かいにオッサンが座る。

 さっきの女の子が、木をくりぬいて削ったコップをオレの前においた。

 飲めってことかな。コップに入っている赤茶の液体は、甘酸っぱい匂いがする。


「ハルルのみつ、おなかのくすりダ」


 オレが腹壊してるって見ててわかったのか。女の子はたどたどしい口調で教えてくれる。


「ありがとな」


 ハルルのみつを口に含む。はちみつのように濃厚な深さのある甘みだ。けれどべたつくことはなく、サラリと喉を流れる。痛かった腹と喉がちょっと楽になる。


 オッサンはオレが飲み終えるのを待って、話しはじめた。


「俺はこの村のまとめ役、ゴルド。その子はミミ。いきなり見知らぬところに来て戸惑っているだろう」

「オレはキムランです。助けてくれてありがとう。下手したら死ぬところだった」


 ユーチューバー名で名乗る。異世界って苗字持ってる人イコール貴族って展開がよくあるから、うっかりはできない。


「そうか。キムラン。お前さんはナガレビトだろ」

「ナガレビトとは?」

「ナガレビトは、異界からながされてきたヒトのことだ。ここの海はいろんな世界とのサカイと繋がっているらしくてな。何年かに1人くらいの割合で、異界の人が流れつく」

「そうなんですね」


 いろんな世界ってことは、地球以外にもこの海と繋がっているところがあるんだな。


「ゴルドさん達がオレの国の言葉を話しているのはなぜです?」

「この村の住人はみんな、翻訳スキルをもっているからナ。異界から流れ着いた人がこの世界で暮らせるよう導く……アマツカミからそういう役目を与えられている」


 わー、いいなぁ翻訳スキル、超便利じゃん。ここってやっぱりスキルがある世界なんだ。てことはオレも頑張れば魔法使えるんじゃね?


「元の世界に帰る道なんてありませんか」

「さあ。俺は他の世界に行こうなんて考えたことないからわからない。キムランのように異界から来て、元いたところに戻る方法を探す旅に出た者も何人も見てきた。この村にとどまるも、他の町に行くもお前の自由だ」


 例えば魔法が発達している国に行けば、元いた地球……ひいては日本に帰る方法もあるかもしれない。

 可能性はゼロじゃない。それを信じて旅立った者は何人もいるんだから、その人たちの残した足跡もあるだろう。


「……オレは」


 迷うオレの背中に、ポンと小さな手がそえられる。


「だいじょぶだ、そんちょ。キムランはわたしがひろってとたのんだ。わたしが、せきにんをもってそだてる」


 どーんと胸を張るミミ。ネコの子を拾った責任を取るようなことを…………。

 え? オレ、ちゃんと人間として認識されてる?? 二足歩行のネコかイヌと思われてない?

 ゴルドさんもじゃっかん引いてるぞ。


「そ、そうかそうか。ミミの心意気はワカッタ。だが、キムランの気持ちを聞いてからにするんだぞ」

「けってい、キムランはわたしがそだてる」


 え、ええええ………。ミミに袖をがっしり掴まれていて、振り払って旅に出ますなんて言えない空気だ。


「お、おせわになります……?」

「まかせろ」


 キムラン27才。

 幼女に養われることが決定したもよう。


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