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39 旅の醍醐味グルメ巡り。新名物蒸しスライムはいかが?

 ガロガロゴトン、ガロゴトン。

 メーメー。

 羊車がゆっくり進み、木の車輪がデコボコ道をかむ音と羊の鳴き声が響く。


「る~る~る~、ふんふんふんす」


 羊車の荷台に座るミミが、そこらで摘んできた花を片手に、変な鼻歌を歌っている。

 羊の鳴き声とミミの鼻歌、不思議ハーモニー。

 ミミの隣に座るユーイさんが指で眼鏡を押し上げ興味津々。


「あら! ルースフローじゃない。いいもの見つけたわね、ミミ」

「ん。おいしそうだからとってきた」

「ルースフロー? っていうのか、その花」


 逆さにした金魚鉢の真ん中にビー玉をくっつけたような形状の花。生まれてこの方、透明な花なんて見たことがない。異世界すげー。

 ナルシェがお兄さんらしくミミに注意する。


「ミミちゃん、いくらキレイだからって、ルースフローを食べちゃだめだよ。飴みたいだけど食べられない花だから」

「ざんねん」

「食べられはしないけど、夜道では灯りになるから持っているといいわ」


 食べられないと知ってしょんぼりするミミに、ユーイさんが補足してくれる。


「へー。ちょうちんみたいなもんか。わりと村の近くに咲いているのに、村で灯りとして使っているのは見たことないな」

「その花、一度摘むと2日くらいで枯れちゃうから、日常使いには向かないんだヨ」

「そっか。モンスターも出るし、毎日摘みにくるわけには行かないもんな」


 ファクターは旅の途中でちょくちょく摘んでいるらしい。使い切りの魔法具を買うと高いから、花で済むときは摘むんだって。

 そんな話をしているうちにヴェヌスに着いた。

 ファクターとはここでお別れだ。


 ファクターはうちの村で仕入れた物を、ヴェヌスより東にある町に行商に行くんだって。


「それじゃまた今度村によるから、ヨロシクね。あの水が無限に出るジョウロ商品化したら絶対オイラが仕入れるから」

「ありがとな、ファクター。がんばって交渉して、商品にできるようにするぜ」

「まずはノーシスで水の魔法具を入手しないとですね、キムランさん」

「だな~。コトリさん、ここから先どう行けば……って、あれ。コトリさんとミミがいない?」


 さっきまで近くにいたはずなのに、二人の姿がない。ユーイさんは肩をすくめて露店の建ち並ぶ区画を指す。


「コトリ。あれうまそう」

「ほほう。見たことのない食べ物だ。店主。すまないがそれを10個もらおうか」

「あいよ! お嬢ちゃん可愛いから1個オマケつけとくよ」

「やった。オマケ!」


 ………屋台巡りしていた。

 食べ物屋台の調理場には、蒸気のあがる蒸し器がある。

 いや~、オレが推した地球のものが異世界で流通してるってなんか感慨深いや。


 二人は食べ物の詰まった紙袋を抱えてこちらに戻ってくる。ミミはもうかぶりついていた。


「コトリさん、何買ったんです?」

「蒸しスライムと言うらしい。今月から発売開始したばかりで、ヴェヌスの新名物にするんだそうだ。みんなの分も買ったから食べてみないか」

「蒸しスライム……」


 渡された蒸しスライムは肉まんサイズで、見た目はスライムに似ている。水まんじゅうみたいな透明感ある艶やかさ。

 水まんじゅうみたいでも蒸されているから、熱い。


 どんな味なのか、想像もつかなくて一口目をためらってしまうが、ミミが無心に食べているからたぶんうまい。

 ナルシェとユーイさんも初めて見る食べ物に、戸惑っている。


「わあ! おいしい。蒸し器ってキムランさんがプレゼンしたあの鍋ですよね。こういうものが作れるんですか」

「う~ん、せっかくもらったんだし、あたしも食べてみるしかないわね。………はぐ。なにこれ、おいしい!」


 二人が食べたんだし、オレも恐る恐る、口をつけた。


「うんまーー!」


 これはたしかにスライムだ。口当たりが見た目の通りつるんとしていてのどごしがいい。

 ステーキにすると白くなるが、蒸せば透明感を保ったままなのか。

 中心にはひき肉にしたスライムのあん(・・)が詰まっていて、歯ごたえがいい。しょうゆ系の、お茶が欲しくなる良いしょっぱさ。この肉あん、何を混ぜて作ったのか気になる。


 味わおうと思っていたのに、気づけば完食していた。スライムの肉まんめちゃくちゃ美味かったです。合掌。


 なおコトリさんもハマったらしく、屋台に戻って残る蒸しスライムを買い占めていた。セレブってすごい。


 腹ごしらえも済んで、目指せノーシス。

 ここからは全員徒歩の旅の始まりである。

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