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3/66

3 良い子は絶対に真似しないでくださいってテロップが入るやつ

「ぐおああああああっ! 死いぬうううううっ!」


 やぁ、キムランだよ! キムランチャンネル視聴者のみんな見てるー?

 オレは今、腹痛と戦っているところだ。

 いやーまいったね。生水はキケンってなんで忘れてたんだオレ。

 ゴロゴロとなりやまぬ腹、ケツから絶え間なく吹き出す汚物。吐きすぎて口の中が胃液で酸っぱい。


「ぐ、くあああ、薬、もしくは薬草、薬草ぅぅ!」


 ゲームでよくある調合スキルでもあれば、こういうとき都合よく拾った薬草で薬を作れるのに。転移するならあの何してもスキルレベルが上がるスローライフなファンタジーゲームの世界が良かったです、カミサマ。

 まじいってぇ。

 手近な葉っぱをむしってケツを拭う。

 昨日から何も食べてないのに、出るもんはもりもり出る。

 これって宿便排出ってやつかな! そんなつもり無かったのにダイエットになってんじゃん。

 チャンネル視聴者には絶対勧められないけども。


 鑑定スキルがあれば、目の前の草に解毒効果があるとか、麻痺を解除できるとか薬効がわかるのに。


 吐いて吐いて下からも出したせいで、めちゃくちゃ腹が減った。


 へろへろになりながらもひたすら歩く。

 このままじゃのたれ死ぬ。

 せっかく異世界に来たのに第一異世界人(いせかいびと)に遭遇することなく召されるなんて嫌だ。


 頭が熱いのに悪寒はひどい。意識が飛びそうになりながら歩き続けて、ついに視界が広がった。

 森の外、平野の向こうに見えるのは人工的な建物のシルエットと、煙突から昇る煙。


「家だ、きっとあそこに人がいる。うおおおおお」


 残った力を総動員して、その集落目指して足を動かす。

 あと少しで建物につく……というところで、足がもつれて倒れ込む。

 近くに小さな人影がちらりと見えた。

 5歳くらいの女の子だ。黄緑色の髪……さすが異世界だわー。

 女の子と視線が合った。

 と思ったら…………。


「っーーーーー!!」


 声にならない声を上げて、一目散に走り去った。


「え、えええ、待ってくれよーー!」


 もう歩く力も残ってないオレは、追うことができない。1分もしないうちに、女の子がゴリラみたいないかついオッサンを連れて戻ってきた。

 オッサンは黒いなにかをオレに投げてきて、視界が柔らかい黒で覆われる。


「これを着ろ。話はそれからダ」


 オッサンの言葉がわかる。

 方言の訛りとはまた違う、微妙なイントネーション。だけど、聞こえたのは確かに日本語だった。

 頭に乗っかっている布を広げてみると、服だった。

 武闘チャンネルで見たクンフーの道着みたいな、異国情緒あふれる服。

 下着はないけど、素っ裸のままよりはずっといい。

 ありがたく道着に袖を通す。

 それからオッサンに担ぎ上げられ、小さい家に連れ込まれた。


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