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2 異世界に日本のルールは通用しなかった

 ぐぅ~~~、と大きな声で腹の虫が鳴いた。


 ただでさえ土地勘がないのに、日が暮れた森の中を歩き回るのは危険だ。断食健康法なんてのがあるくらいだし、一食抜いたくらいじゃ死なない。

 このまま寝ちまおう。明るくなってから何か探そう。

 あとは、魔法が使えるか検証しないとな。



 外気温は裸でいても少し暑いと感じる程度。日本だと五月の終わりぐらいの気温だろうか。

 そこら辺に積もっていた落ち葉をかき集めて、その上に寝転がる。

 こういうのもなんか楽しい。日本に帰れたらサバイバル生活動画の配信するのもありだな。




 夜が明けて、喉の渇きで目が覚めた。

 飯は食わなくてもいいけど、水分は欲しい。

 海があるなら、そこへ続く川があるはずだ。川を探そう。水辺なら、ついでに食えるものも見つけられるかも。


 耳を澄ませて水の音がしないか探る。

 ガサガサと、草木を揺らす小さな物音がする。昨日のティラノ(仮)のような巨大生物ではなく、ウサギなんかの小動物が立てる音っぽい。


 音源に向かって歩くと、そこにはプッチンするプリンみたいな形のスライムがいた。

 半透明で薄緑。目や口は無い。体の真ん中に黒い玉が入っている。

 スライムはシャ! と短く鳴いて姿勢低くする。


「ああぁ、待ってくれスライム。オレは怪しいやつじゃない。敵じゃないヨー。ちょっと水辺を教えてくれないか。ほら、全裸だから武器も何も持ってないって」


 両手を降参のポーズにして、戦う意志がないことを知らせる。

 この世界で地球ルールが通じるとは限らないけど、何もしないよりは………………。


〈シャアーーーーーー!!!!!!〉

「うお!! スライムが増えた!?」


 スライムが仲間を呼んだ。ざっと見て10匹以上。

 グルルルとうなり、みんながみんな臨戦態勢になっている。とてもじゃないが、友好的に見えない。


〈ゴゴシャー!!!〉

〈ギシャーーーーー!!〉

「ひいいぃあああああああ!!!」


 はい、何もしないほうがマシでした。

 オレもうこの世界で降参ポーズしない!!


 もうどうにでもなれ! そこら辺に落ちていた太い木の枝を拾う。


「ふ、ふふふふ!! スライムっつったらレベル1でも勝てるトラクエ最弱モンスターだからな! けちょんけちょんにしてやるぜ、てやあああ!!」


 振り下ろした木の枝がポヨヨンと弾かれた。


「エエエェェェ。ゼリーみたいな見た目のくせに弾力抜群じゃん。今のは動画的には刺さるとこだろ! 視聴者の欲しがるとこ理解してくれないと」

〈げしゃーーー!〉

「すんません調子乗りすぎましたああああ!!」


 スライムの下にあった枯れ枝や枯れ葉が、じゅわ、と溶けている。溶解液ようかいえき……! ポケモ○で見たやつやーん!!

 溶けて死ぬなんて勘弁! 今のオレのレベルと装備じゃスライムに勝てないのは理解した。(装備てかマッパだし)

 こうなったら逃げるが勝ちだ!

 逃げて逃げて走り抜いた先に、川があった。


「おお、ああああああ! 恵みの水だあああ!!!」


 川に頭を突っ込んで水をガブ飲み。

 渇いた喉に水が染み渡る。


「ぷっはー! 生き返ったぁ!!」


 腕で口を拭って、その場に足を投げ出す。

 昨日はステータスを出せなかった。この世界ではステータス画面は出ない仕様なのか。


「ま、ステータスが出なくても魔法くらいは使えるよな。基本中の基本、ふぁいやーー!!」


 だが、何も起こらなかった。


「メラ!」


 だが、何も起こらなかった。


「ヴァーン!!」


 だが、何も起こらなかった。


「考えろ、考えるんだ。ゲームでよくある設定を。大事なのは想像力だ。炎が手のひらに集まるイメージをしながら──イフリぃぃート!」


 だが、何も起こらなかった。

 思いつく限りゲームの炎魔法を唱えてみたが、何も起きない。


「ふむ。オレに炎魔法の才能は無いようだな。では他の属性を。メテオスウォーーム!!」


 だが、何も起こらなかった。


「ライトニング! さんだぁ~ぼるとぉ! ポイズン! ウインドブレード! ネオジオン!!」


 だが、何も起こらなかった。

 ただただ、森の中にオレの声が響いて消えた。

 どの属性の才能もないかぁ。

 トラクエみたいに、特定のレベルにならないと覚えない仕様か。はたまたモンスターをハンティングする狩猟ゲームのように、レベル制度はなくプレイヤー本人の戦闘センスにかかっているか。

 どっちにしても、今のオレには魔法が使えないことはわかった。



 この世界について詳しくは、人のいるところを探して聞いてみようか。手探り状態のままより、地元民に聞くのもまた必要だ。

 そしてオレは人里を探して歩き回り、途中で予想外の敵と戦うこととなった。

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