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10 冒険のあとは、キバ魚の香草蒸し焼き!

 日暮れ前に村に着いた。

 収集したものは村の倉庫に集めて、確認と選別は明日することとなった。

 短い旅をともにした仲間たちに挨拶して、小さな家族の待つ家に帰る。


「ミミ、たっだいま~! キムランが帰ってきたよー!」

「おかえりキムラン」


 キッチンにいたミミが、踏み台から降りてかけよってくる。


「はいミミ、お土産取ってきた」

「おみやげ、なに?」


 麻袋を開いて、ミミの目が輝く。

 オーパーツ収集とは別に、ナルシェに聞きながら野に生えている香草を収穫してきたんだ。

 肉料理に向いているもの、魚料理に向いているもの。見たことない植物ばかりでテンション上がりまくりだったぜ。

 ミミは魚料理に良いという香草の束を手に取る。

 

「そんちょのおくさんからキバさかなもらった。キノコとハーブでむしやきする」

「魚の香草蒸し焼き!!! すっげー美味そう!! オレも手伝っていいか?」

「じゃあ、さばいて」


 まな板にドンと置かれた魚は、体長がゆうに50cmはある。体表をおおうグリーンのウロコ、口には鋭い牙が生えていて目つきが狂犬。こんな魚初めて見たぞ。一歩間違うとこっちが食われそうなツラをしている。


 村長の奥さんはハラワタを抜いといてくれたらしい。お腹はすっぽり空洞になっている。


「ウロコとって、みをにまいにする」

「おっけー」


 たしか捌き方はなんとかお兄さんの料理チャンネルで見たぞ。覚えているかぎりやってみよう!


 包丁の背でウロコをぐ。

 頭を落として、尾のほうに包丁をあてて、っと。

 身は赤い。クリスマスのようなカラーリングだなこの魚。骨を取って身を分けた。


「そしたら、これでくるんで、むす」

「おお! ミミ先生、切り分けた魚の半身を、座布団になりそうな大きさの葉に乗せました! 魚の身に塩を振って、香草とキノコ、短冊に切った根菜、それから豆粒サイズの木の実を手ですり潰しながらかけるーーーー! これは神技だ!」

「キムランうるさい」


 クセで実況したら叱られますた。

 しょうがないから心の中で静かに実況していよう。


 ミミは葉っぱで魚をくるくると巻いた。

 それを二段の石棚、上段部分に入れて鉄の扉を閉めた。

 これがこの世界の石窯らしい。下段にはコンロに使われているのと同じ、炎魔法の石版が入っている。


「あとは、やけるまでまつ」

「うおお、この時点でむっちゃいいにおい! 絶対美味い!」

「とうぜん」


 うるさいと言いながらも、褒められるのは嬉しいらしい。ミミの口元がへにゃ、とゆるんでいる。


 魚が焼けるまで、ダイニングのテーブルに着席して、摘んできた香草で煮出した茶を飲んで待つ。


「おおおお! なんだこれ、ワインみたいだ。色も紫だしワインっぽい!」

「わいん、てなんだ?」

「オレがいた世界の飲み物」

「そうか。これはモモスケっていう。いまのじきしかとれないハーブ」

「へ~! すごいな!」


 味はワインだけどアルコール分はなさそうだ。ミミも普通に飲んでいる。

 オレがまだ知らないだけで、ビールの味の茶とかジュースの味の茶とか、おもしろアイテムがたくさんありそうだ。明日選別の仕事が終わったら探してみようかな。

 そんな話をしている間に魚の焼けるいい匂いが漂ってきた。


 葉っぱごと大皿に取って、巻いていた葉をナイフで切り開く。プシュッと葉の中にくるまれていた蒸気が吹き出す。

 身はうすピンクでふわふわに。香草の爽やかな匂いが食欲をそそる。


「だいせいこう」

「イエーイ! キバ魚の香草蒸し焼きできたぜーー!! これから実食ターイム!」

「キムランうるさい」

「ごめーん」


 お祈りのあと、ほぐした魚とキノコをスプーンで一気にすくい、口の中に。


「うわ! ふわとろ! むっちゃうめええええ!!」

「うむ」


 魚の旨味が染み込んだ根菜とキノコ、芳しい魚。魚のあぶらもしつこくない。ミミが砕いて乗せていたのはコショウ的なものだったようだ。それらが魚と野菜の風味を引き締めてくれている。

 ワインぽいお茶との相性も抜群だ。


 見た目凶悪な魚でも味は五つ星。

 最高に美味い魚に舌鼓を打っていると、隣の家から地の底から響くようなナルシェの悲鳴が聞こえてきた。


「……ミミ。魚はもう半身焼いてあるし、ナルシェのとこにおすそ分けしてやらない?」

「いいよ。スープ、もらったし」


 ミミの許可が出たことだし、キバ魚の香草蒸し焼きをお隣さんに届けた。

 応対に出てきたオリビアさんは笑顔。反して、ナルシェは奥に見えるテーブルに突っ伏して撃沈している。何か(・・)が盛られた皿。遠目に見て色がヘドロ。

 ………………一体何を食わされたんだろう。聞かないほうが良さそうだった。


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