表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/66

1 異世界転移しちゃったユーチューバー

挿絵(By みてみん)




「──ってなわけで、今日のキムランゲームチャンネルはここまで。投げ銭(スパチャ)ありがと。楽しかったらチャンネル登録と高評価お願いしまっす!」


 いつもの挨拶をして、ネットの配信を切る。

 自分で言っちゃうけど、オレはユーチューバーだ。

 新作ゲーやレトロゲーを隅から隅まで検証して全クリする、ゲーム実況系、アバターで配信するいわゆるブイチューバー。

 チャンネル登録者がようやく5000人超えたところだ。超人気な大物ユーチューバーになると100万人のファンがいる。

 いつかはオレもあの高みに行きたいぜ。


「ふー。深層ダンジョン探索する前に、ひとっ風呂浴びるか。あと配信の編集してポイッターで告知して……」


 ボロアパートのユニットバスは、トイレと風呂が一室にまとめられた極狭。無いよりはまし。

 浴槽にお湯を張ってバスボムを投げ、風呂に飛び込む。


「ラスボスのドロップ素材が何種類あるか確かめたいし、武器をいくつかリュックに入れておいて、回復アイテム縛りプレイもしたいな」


 今攻略配信をしているゲームは、一応ストーリー上のエンドはあるがゲーム自体は永遠に続けられるもの。

 選べる武器種も豊富。

 冒険するだけでなく、住人と結婚したり子どももできるから男女問わず人気が高い。


 実況のことを考えていると、突然お湯に魔法陣らしきものが浮かび上がった。


「は!? なにこれドッキリ!? CG!? カメラどこカメラ!!」


 逃げる間もなく魔法陣に吸い込まれて、気がつくとオレはどこかの海岸にいた。


 よせて返す波、水の色はオレンジ。

 水面からでかい生き物が上がり、オレを食わんと口を大きく開けた。図鑑で見たティラノサウルスのような体で、背中にはコウモリ系の翼が生えている。

 ティラノ(仮)の牙は、一本一本バット並みのサイズある。


〈グギャオオオオオオオォーーーーン!!!!〉

「どう見ても異世界転移です。ありがとうございましたぁああああ!!」


 キムランこと木村セイヤ。全裸のまま異世界転移を果たす。



 頭だけでオレの背丈の2倍あるティラノ(仮)が、地響きを起こしながら追いかけてくる。

 考えるより先に足が動いていた。


「ひぃーー!! 来るな来るな来るな来るな!! オレはひょろいから食べるとこ少ないし美味くないって!!」


 濡れた海岸の砂に足を取られて、思うように進まない。

 せめて姿さえ見えなくなれば逃げられるんじゃないか。目の前に見える森に駆け込む。

 落ちている枝や小石やらが足の裏にクル。裸足で裸だから木の枝もバシバシ当たって痛ってえ!!


 茂みに潜り込んで突っ伏し、息を殺す。

 ズン、ズシン、と迫ってくる足音が、少しずつ遠のいていった。


「た、たすかった……のか?」


 近くにヤツの気配がなくなった。

 左右を確認して、茂みの中から這い出る。


 この世界にはああいうのが普通に闊歩しているのか、それともレアモンスターに遭遇してしまったのか。


 モンスターが出るような世界ってことは、これまでプレイしてきたゲームのようにステータス画面が出たりスキルとか魔法が使えたりするんだろうか。

 とりあえず異世界転移のテンプレに従い、両手を掲げて叫んでみる。


「ステータス、オープン!!」


 だが、何も起こらなかった。


「ポーズの問題かな。そいじゃ、片手を目の前にかざして、ステータスオープン!!」


 だが、何も起こらなかった。


「ふむ。発音が悪かったのかもしれないな。スティタアス、オゥプウーーーン!!」


 だが、何も起こらなかった。


 ふふふ。そうか、そうきたか。

 ゲーム実況ユーチューバーの血が騒ぐじゃないか。

 巻き舌でも駄目なら、文言が違うのか。


「ステータス!!」


 だが、何も起こらなかった。


「オープン!」


 だが、何も起こらなかった。


 こうしてステータスの検証をしているうちに、日が暮れてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
kdask31u89szfiksdisciqnlcdwa_l9c_lc_sg_asby.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ