多磨子の場合
標的は道明寺 千佳。
高校2年生から同じクラス。
勉強も良く出来て、家柄も良い。
読モに選ばれるような可愛らしさは無いけれど、古風な凛とした凛々しさが漂うお嬢様タイプ。
裏を返せば、普通の庶民や成り上がりの家柄では絶対に辿り着けないオーラを纏っている。
そうであるにも関わらず、自分の家柄や容姿を鼻に掛けるようなことはしない。故意に振舞っているのでは無くて、自然とそれが出来てしまうのだから癪に障る。
私も最初は憧れ半分、妬み半分。
『生徒会長に推薦して、落選でもすれば自分を見直すかしら?』
同じクラスだったので、本人が嫌がらないことを良いことに、生徒会長選挙へ推薦した。実は私だけでなく、多くの人から愛される存在であることと、今年は最上級生の最後の任期ということから3年生の立候補者へ票が集まった。
私も揶揄い半分の気持ちはあったけれど、そのときは一生懸命にサポートして選挙応援演説なんかも進んで立ち会った。
結果、千佳は生徒会長に就任……。
『こんな完璧な人がいるの?』
私には嫉妬や憧れとは別の感情が湧き始めた。
傍で一緒に見ていたい……。
それからは一緒に過ごす時間を長くとれるようにと、生徒会役員に立候補して、新生生徒会のメンバーになった。お昼休みは千佳と一緒に過ごせるように生徒会室でお昼ご飯を食べるようなった。
私は会長を支える名目で、常に会長の仕事を把握して、先回りして支えることで会長と一緒に生徒会の仕事ができる時間を増やした。
と、会長と同体化した時間を半年も過ごしたあるとき、憧れと支えの中で新しい感情が芽生えた。
『千佳を独占したい』
そこから私から千佳への気持ちが壊れていったのかもしれない。
先ずは千佳が私に依存して貰う方法を考えた。
『困っている千佳を助ければ、私を頼りにしてくれるのでは?』
容姿端麗、家柄も良く、人に愛されている。
何も無い私に信頼を寄せてくれるには……。
『有り得ない緊急事態での支援』
よく、ストックホルム症候群とか吊り橋効果と言われるような、緊急時にはいつも違う感情が沸き起こると心理を利用して……。手を差し伸べた私へ特殊な感情が千佳の中に生じることを期待する……。
そこからの作戦は簡単だった。
年末に行われる排水溝工事のタイミングに合わせて、少し千佳のお腹が緩くなれば良い。私はそのとき千佳へ少し手を差し伸べるだけ。
先ずはお昼に便秘解消薬を盛る。
仕掛けは包丁の片面に粉末にした薬剤を塗る。そのナイフで肉まんやアンマンを切って、その薬が付着した片側を千佳に食べて貰えば良い。
次は最寄り駅手前にある公衆トイレ。
一体感を味わうためには一人用の個室が使えてはいけない。清掃中の立て札と張り紙を用意しておけば、会長を多目的トイレへ誘い込むことが出来る。
これだけで準備は十分かしら……。
下剤の効きが悪かった場合には……。
念には念を入れて、もう一服、即効性の下剤を盛る方法を考えなくては……。
私が渡すのは下痢止め。でも千佳に服用して貰いたいのは下剤……。
ああ、『事前に中身をすり替えておけば良い』
私は遅効性の薬剤、即効性の下剤、それと空箱が必要な下痢止めを購入した。下痢止めの開封口の逆側から箱を開けて、即効性の下剤と中身を入れ替えて、丁寧に糊付けをしておく。これで、一見すると未開封の下痢止め薬の様。
介抱する千佳を多目的トイレの中に待たせておいて、最寄りの薬局まで走って行く。いつもより少し多めにお金を用意しておいて、その日、新たに飲み物と下痢止め薬、オムツを購入しておく。
お嬢様として育てられた千佳がそうかんたんにオムツを着用するとは思えないけれど、私としては千佳を公衆の面前で恥を掻かせる目的は無い。
そもそも、便秘解消薬の効き方次第ではお腹には何も残っていないでしょうし。
そして、計画を練った当日……。
千佳はオムツを着けずにトイレを出るという……。
『木立に用事がある』と、訳の分からないことを言う……。
私の中で、何か違う感情が芽生え始めた……。
短編ですが二部構成です。




