埋蔵金
方向性が決まったところで、それに向けて動いていく。
ぼんやりしていたものが、形になっていく過程が好きだ。
大変だが、充実している。
しかし、難題が…
部屋で、見積もりと、計算機とメモに埋もれている俺。
どこをどうしても、お金は足りない。
無職の俺。
「やっぱ、働かないと無理があるな〜」
「たかにゃん!」
「わっ!」
弁天様はいつもふらっと現れる。
「その現れ方、びっくりしますから!玄関ノックして下さいよ」
「だって、めんどいんだもん。お腹すいた〜」
まったく…
「なんかの計算?ムズ」
「ちょっと予算のやりくりが大変でして。」
「ふーん。たかにゃんてさ、あたしを誰だと思ってるの?」
「弁天様ですけど。」
「弁財天です!財抜けてる〜うける」
「まさか…宝くじ当ててくれるんですか?」
「ブッブーーー。今までのお賽銭取ってあるのですよ。」
お賽銭!なるほどね。その手があったか。でも…
「それがあるなら、自分で鳥居新しくしたりとかできたのでは…?」
「今まで、世話役さんとかがやっててくれたからさ〜自分じゃよくわからんのよ笑」
まあ、神様が自分ではできないか。
「資金を提供することはできる!どうせ、ウチのもの揃える為の資金でしょ?」
「そうなんですけど。どこにあるんですか?」
「祠の下。賽銭箱ってそこ抜けてるの。台座の石はくり抜いてトンネルみたいになってて祠の下に貯まる仕組み〜」
「すごいですね!弁天様が来た時からそうなってたんですか?」
「3代目の世話役さんの時に直してくれて。それまでは、賽銭泥棒酷かったのよ。その仕組み知ってるの もうウチしかいないんじゃないかな〜」
昔の人の知恵。勉強になります。
「今から、見に来る?」
「はい!すぐ行きます!」
上着をはおり、急いで祠へ。
「たかにゃん、お疲れ〜。早速だけど、祠持ち上げてくれる?ウチも手伝うから。」
祠を持ち上げてみる。
え?弁天様手伝ってくれないじゃん。
でも、この祠、重量を感じない。
ゆっくりと優しく傍におく。
「この祠、軽いっすね。」
「そんなわけないじゃん。ウチが手伝ったからだよ。」
あー。神の手?
祠の台座を覗いてみる。
結構深い。そして、お賽銭が小山のようになっている。…でも
「昔のお金が多いですね。」
少し、落胆して呟く。
「お金はね。」
「?」
「昔、この前の道はゴールドを運ぶ道路だったの。この山を超えて都に運んでたんだけど、結構険しい山でね。運搬の人が行き帰りに道中の安全を祈願して砂金をお賽銭にしてたのよ。」
もう一度、台座を覗く。そう言われれば、金色に輝くものがキラキラと見える。
「今、集めるから」
弁天様は、また神の手を使い砂金を集めて俺の目の前で漂わせた。
「!!!」
砂金?
砂粒かと思ったら、小豆くらいの塊たちだ。
俺の両手じゃ収まらない。
袋!
咄嗟に、身体をまさぐる。
ポケットにエコバッグが!
俺!ナイス!
急いで、ゴールドの粒たちをバックで包み込む。と…
「わぁぁぁぁーーーー」
神の手がなくなり、いきなり重力が戻ってきた。ゴールドの重みで賽銭の小山に突っ込むかと思った。が、かろうじて持ち堪える。
「弁天様!急に離さないでくださいよ。落ちるかと思った!」
「ごめん!!やらかした!大丈夫?」
弁天様といると、いつもドキドキさせられる。
俺、祠が建つまで、心臓が持つだろうか。