俺の城
まずは、引越しから。
都内のマンションを引き払う。
家具家電は、業者に引き取ってもらった。
段ボール3箱と大きなキャリーケース2つが、俺の全財産となった。
こうすると、俺は要らないものに囲まれて生活してたのだと気付かされる。
もちろん、便利なものは沢山あった。でも、年に何回かしか使わないものも結構あったし、逆にとてもスッキリして気分も軽い。
段ボールは宅配便に任せて、キャリーを両手に新居に向かう。
家電は必要だった。特に洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ。しかし、新居の家主さんが、前の住人が置いてあったものを使ってくれればありがたいと言ってくれたので、それを使うことにした。
SDGsね。
それらの家電はあの部屋に馴染んでたしw
俺が使っていたものは、サイズ的に大きかったし、何より心機一転全て捨てたかったのかもしれない。
再出発には、ちょうどいい。
駅の階段を、悪戦苦闘しながらキャリーを連れて行く。俺が連れられているようにも思うが…。
新居に着いた時には汗だくだった。
しかし、のんびりしてはいられない。掃除をして、布団を買いに行かねば。
布団がなくても、風邪をひくような時期ではないが、やっぱり布団で寝ないと寝た気がしない。
慌ただしく掃除をして、再び外に出る。
アパートの敷地を出て振り返る。
俺はニヤリと笑った。
ドラマとかで見る昭和の『ザ・アパート』だ。
今の俺にピッタリだ。中々良き。
「俺の新しい城」
ポツリと呟き、商店街へと足を向けた。
さあ、新しい布団を買わなきゃ!