弁天様の覚悟
「何の覚悟?」
弁天様はキョトンとしている。
「この先もずーっと、弁天様でいる覚悟です。」
「そりゃ、ここに来た時から、その覚悟はあるよ。そして、いつでも本家に吸収される覚悟も持ってる。」
珍しくまっすぐな眼差しで、真剣さが伝わってくる。
「弁天様ならそう言ってくださると思ってました。」
パン!と、手を叩き
「では、鳥居と祠を奉納いたします。」
「!!!」
「ちょ、ま。そんな簡単に言うけど、いくらすると思ってんのよ。」
「自分なりに調べてみました。まあ、なんとかなりそうなんで。」
弁天様は、口をぱくぱくさせている。
「結婚資金、マンションも買うつもりだったんで。結構貯金あるんですよ。もう必要ないですから。」
「イヤイヤイヤイヤ。これから使うかもじゃん。お金は大事よ〜」
「俺、そのお金使わないで、昨日死んでたんです。でも、弁天様に救われて。こんな俺に弁天様は頼ってくれて。だから、弁天様に使いたいんです。……迷惑ですか?」
弁天様は、困ったような顔をしている。
「変な人、助けちゃったな。」
ポツリと呟いた。
「それが、たかにゃんの覚悟なんだね。」
「はい。受け取っていただけますか?」
今になって断られたらどうしようと、不安になった。
「弁天、たかにゃんのお心、受け取らせていただきます。」
「やったー!ありがとうございます!では、早速、手配して来ますね。それと、引越しするんで2〜3日来れませんが何かあれば、携帯に連絡…あれ?弁天様って携帯とか持ってます?」
「やだー。ギャルはスマホ必須っしょ。」
あぁ、持ってんだ。今ドキだね。そういうとこが、神っぽくないんだよな〜
「じゃあ、番号交換を…。これでよし。」
「たかにゃん、引っ越すの?」
「はい。今の家だと2時間くらいかかるんで。さっき、ここの近くのアパート契約して来ました。」
「仕事、はやっ。ウチが断ってたらどうしたのよ。」
「正直、断られるとか、考えてませんでした。断られても、立て直しちゃったかも、ですね。」
「こら。祟るぞ〜。」
普通に笑った。何日ぶりだろう。自分が笑えることにも感動した。
「また、来ますね。」
さあ、これから忙しくなるぞ!