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俺が人生を終わらせたい理由

ピピピピ、ピピピピ

朝だ。


目は開けずに、手を振り回してスマホを探す。なんとか探し当て、アラームを止める。


身体がダル重い。3時間も眠れてない。睡眠というより、仮眠だ。

身体は二度寝を要求しているが、頭は覚醒してくる。

ふと。


この1週間は夢だったのではないか。1週間前と同じ日常が続いているのではないかという思いにかられ、飛び起きてみる。

ソファやテーブルに資料が散らばり、パソコンは開いたまま。寝る前に作業していた記憶のまま、そこにある。


『だよな…』


杉山 隆洋

29歳

無職

1週間前に会社を辞めさせられた。


1週間前、俺は大きなプロジェクトで忙しくしていた。上司がミスった。そのミスを俺のせいにされた。

わかっていたのだ。

そういうヤツだと。何人かの先輩もそれで辞めていった。

『お前は気をつけろよ』

そう言われてもいたから、気をつけていたのに。上司に腹が立つよりも、自分に失望していた。


どうやって帰ったかも覚えてないが、気がつくと家にいた。スーツのまま電気もつけず、頭が混乱したままソファに座っていた。


スマホの着信で現実に引き戻される。


愛加だ。

1ヶ月ほど前にプロポーズし、OKをもらった。プロジェクトが落ち着いたらご両親に挨拶に行く事になっていた。


「もしもし、愛加。」

「ちょっと!!どういう事?!会社辞めたって!!なんで知らせてくれないの?!私の事なんだと思ってるの?!貴方との婚約、無かった事にしてちょうだい!!信じらんない!!さようなら!!」


電話は一方的に切れた。愛加…だよな?

あんなに感情的に喚き散らすのは初めてだ。

おっとりと、ほわんとした子で、怒るところを見たことがなかったのに…。

しばらく俺はスマホを耳に当てたままだった。


それからどれくらい経ったのだろう。数分しか経ってないようにも思うし、何日も過ぎた感じもする。時間の感覚もない。


スマホが震えた。SNSの通知だ。

愛加、さっきは取り乱したんだ。俺もパニックだったし。きっと、愛加から…


先輩からのメンセージだった。


『杉山、会社辞めたって?また、アイツがやったんだな。地獄行き決定だよ。大丈夫か?


愛加ちゃんのことだけど、SNS見てくれ。なかなか言い出せなくてさ。別れて正解だったよ。お前にはもっと相応しいヤツいるよ。

今度、飲もうな!』


メッセの下にLANが貼り付けてある。

意味がよくわからなかったが、開いてみる。


!!!!!!!!


何なんだよ。俺が何か悪いことしたのか?何かの罰か?最悪な状況に最悪なものが飛び込んできた。最悪とは底知れない。


それは愛加のSNS。

俺にはSNSはやらないと言っていた。

『よくわからなくて…。でも、他の人に共有しなくても、隆くんと共有できればそれでいいから』

という言葉を俺は有頂天で信じた。


ざっとまとめると…

愛加には大好きな彼がいる。俺じゃない。筋肉質のタトゥーの入った腕に嬉しそうにしがみついている写真があった。そして姉と称する人物が出てくる。どうやら姉と付き合ってるのは俺らしい。最新の投稿は、姉が無惨な婚約破棄をされたと怒っている。これが、愛加の本心だ。

パッとしないリーマン。会話のセンスもプレゼントのセンスも最悪。ただ、一流企業に勤めているので将来安泰。


この為か。会社の名前だけで俺にしたんだ。そりゃ、会社辞めたら結婚しないわな。


笑が込み上げてきた。なんだ。そうか。ウケるな〜

そして、涙も止まらなかった。

泣きながら笑った。

笑いながら泣いた。

俺の中で何かがプツッと切れた。


どれくらい、たったのだろう。


ぐぅ〜


お腹が鳴った。


腹は減っていない。というか、お腹が空いたという感覚がマヒしている。

あれから数日、水分しか取っていない。


何かに憑かれたかのように、俺のスイッチが入った。


ずっと食べていなかったので、インスタントのスープと10秒チャージをして、シャワーを浴びた。洗面所の鏡に向かって呟く。


『今日、俺は決行する』

















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