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弁天様の怒り

「神なんていねーんだよ!

 願いが叶うなんて嘘ついて稼いでるじゃねーか!

 弁天様だって!ウケるわ!!いるなら連れて来てみ ろよ!」


プチッ

俺の理性が飛んだ。

手のひらを大きく振りかぶる。

一瞬でいろんなことが起きた。


バキッ!


ふっと弁天様が俺の中に入った気がした。

振りかぶった手のひらはゲンコツになり奴にクリーンヒット。

そしてまた、ふっと弁天様が出ていった気がした。


「お前が神を信じないのは勝手だ!

 ここのお金は神様を信じる人が、捧げたお金だ!

 お前みたいなのが触れていいものじゃない!

 弁天様を侮辱する事は許さない!!」


弁天様は、ギャルみたいな格好をしているし、短気だし言葉遣いとか、色々俺も物申したい事はあるが、神という仕事に対してはとても真摯だ。

知り合ってから1年も経っていないが、そこは尊敬する。


『隆洋、そこを退け』


頭の中で声が響く。

背中に圧を感じて振り返る。


七福神の絵で見たことがある。とても美しく凛とした弁天様が刀を持ち立っている。

俺は驚き口を開けたまま横に退いた。


「立て」


犯人に向かって言葉をかける。

しかし、奴も口をあんぐり開けたまま固まっている。


パチン


弁天様が指を鳴らすと、犯人はすくっと立ち上がった。まだ、口を開けたまま。


「そちは、わらわに会いたかったのであろう?」


刀を向けたまま、ゆっくりと近づく。怒りのオーラを纏っているのでその美しさも口調もただ、ただ恐ろしい。


「神とは人間の下僕ではない。」


そう言いながら、刀を胸に突き刺した。


「うわあああぁぁぁーーーー!」


犯人の叫び声にかき消されることなく俺の耳にも弁天様の声はしっかりと響く。


「わらわの前にその顔、2度と見せるな!!」


そして、弁天様は消えた。


犯人は膝から崩れ落ちる。

俺は駆け寄って胸の辺りを確認するが、やっぱり刀で刺したわけではなかった。

しかし、刺された以上のダメージを受けたようだ。

もう、拘束しなくても静かになった。

身体を丸め、震えていた。


遠くから、警察のサイレンの音が聞こえて来た。


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