大捕物
俺は祠に急いだ。
夜中の1時を少し回ったところ。
辺りは暗く、家々は寝静まっている。
雨も風もない。穏やかな宵だ。
空には薄い三日月と星が光っている。
祠までの道は、上り坂になっているので 気ばかり焦るが前に進めない歯痒さ。
あとちょっと…。
息を切らしながら、やっと石畳の所まで辿り着く。
そこからは慎重に目を凝らして進む。
『弁天様…』
俺はさっきの声がSOSだと思った。
何か祠で起きたんだ。
なるべく音を立てず、呼吸を整えて祠の方に目を走らせる。
チラチラと光が動いている。
そして、ガンガンと金属を叩く音。
「!」
どうやら、コスメおみくじの自販機を壊しているらしい。
『あちゃー』
弁天様が、自販機荒らしの周りで騒いでいる。
もちろん、その人物には弁天様の声も姿も見えていない。
弁天様は、おみくじの自販機を守ろうとしている。
俺の心はふわっと温かくなった気がした。
『よし!』
覚悟を決めて、動画を撮りながらライトを自販機荒らしに向ける。
「何やってんだ!!」
俺の中の野太い声を引き出し、大声を上げた。
「!!」
自販機荒らしはピタリと動きを止めた。しばらくの沈黙。
フードを被った奴はゆっくりこちらを見た。
そして、手にしているバールのようなものを振り上げてコチラに向かって来た。
ドサッ!
自信はなかった。子供の頃柔道を習っていた。試合に出ても勝った事はなかった。俺というより、相手が弱かった。と、思う。
不格好ながらも何とか一本背負、相手を組み伏せた。
すかさず、仰向けになった所に馬乗りになる。
相手も必死だろう。メチャクチャ暴れている。
こっちも必死で手を捻り拘束してフードを剥ぎ取った。
知らない顔だ。まだ若い。
捻った腕が痛いと悪態をついてくる。
俺も、息絶え絶えに警察に電話する。
通報を終えて
「何してんだよ!」
俺はソイツに向かって怒鳴る。
「うるせー!!
詐欺で儲けた金だろ!!
奪って何が悪い!!」
「???詐欺???」




