断片:女神
──吾は、悠久なる時を生きる魔なる者。
その『心繋器』を介して
現し世へと意識を繋ぐことが出来た
礼を言おう。
「ヒューマギア……? 聖遺物の事?」
──現代では『聖遺物』と呼ばれているのか
何やらあの女を
彷彿とさせるセンスだな。
「あの女? 誰の事だ……?」
──『聖女 エレオノラ』
今は何と名乗っているが知らぬが
吾を討った者たちの内の1人だ。
「それって、多分『女神 エレオノーラ』の事よね?」
「十中八九そうだろうな。女神は勇なる者の一員だったってことか」
──ククク……フフ……ハッハッハ!
女神と来たか! 実に期待を裏切らぬ女だ!
「えー……、自分を打ち倒した相手で大笑いって出来るもんか?」
「私ならきっと無理ね」
──吾は奴らを恨んではおらぬ。
何しろ不死であり悠久の時を生きる
吾は、この上なく退屈で
全てがどうでも良かったのだが
──奴らとの戦いは血湧き肉踊る物であった
更にその結果、退屈な日々から
解放してくれたのだから
むしろ感謝しているくらいだ。
にしては、奴らって呼んだり
現世に戻って来たお礼とかしてるのよね。
──ともかくだ、そなた達には何か礼をしよう。
「俺は……特に。いや、仲間を……集落の皆んなを助けてくれ!」
──ふむ……お前の仲間がどこの誰だか知らぬが
今の状況を鑑みるに
我が子達なのだろう。
とはいえ吾は今、意識しか現し世に
繋がっておらぬ
残念だが、どうこうする事は出来ぬだろうな。
「なんっだよ! それじゃあ、何なら出来るんだよ!」
「ちょっとカシュー、落ち着きなさいよ」
──良い。今の吾に出来る事と言えば
知識の伝授が精一杯であろう。
……それも、最新とは言えぬが。
知識……やっぱりユノーを介しているからか
だったら──!
「女神エレオノーラを、女神と教会の奴らを皆殺しにする方法を教えてちょうだい!」
──クハハ! 豪気だな!
とはいえ、勇の者に討たれた吾に聞くか。
「チャンスがあるとしたら、アナタしか居ない」
──ふむ……そうだな、方法がない訳ではない
ただ、殺すという意図とは
外れるかもしれぬが。
「良いわ。奴らの支配を終わらせられるなら!」
──良かろう。




