工場勤務
「あの建物ってなんなんだろうな? 屋敷でもないし、お城でもないよな」
「住居っぽくも無いし……どっちかっていうと『工場』? っぽいよね」
「やめろ! そのワードは急に現実に引き戻される!」
「カシュー君、また工場勤めだっけ? ご苦労様です」
「ホントにご苦労してるよ。だけど、こんな剣と魔法の世界に工場なんて存在するかぁ?」
「なに作ってたんだろね?」
「何でも良いけど、工場だったら『無垢なる魂』なんてないだろ。『すり減った魂』ならわんさか湧いて出そうだけど」
「たーしかに! うまいこと言うね!」
褒めるの半分、小バカにしてるの半分って
感じだな。
なので、俺はにっこり笑って言う。
「うん、ストレートにムカつく」
「ええっ! 何で!?」
え……ガチで褒めてたの? ギガ、マジか……
そんなこんなで、件の建物の前まで来た。
「近くに来ると、更に大きく感じるね」
ギガは建物の壁際に立って、上を見上げている。
「確かに……たーしかに。しかし、キレイに形が残ってるよな、どうやって住民全滅させたんだって思うくらいに」
「崩れてる建物は、だいたい地震と監視者のせいなんじゃないかな?」
あり得るのが笑えないわぁ。
「とりあえず、入ってみるか」
──主人、ちょっとよろしいですか?
「うん? ギガ、ちょっと待って。チュートリアルさんが何か言いたいらしい」
「オッケー、終わったら教えてね」
──すみません。
この建物の事ですが『聖遺物』の
工場跡の様です。
これも宿命の子の知識って事か?
すっごい前の事でも分かるんだな。
──いえ、これは……なんというか
私の中に眠る、記憶の断片
……とでも言いましょうか?
自分でもうまく表現出来ません。
うん、さらりと会話が成立しますな。
とはいえ、マイガーデンが生まれてから
誕生した人工知能が記憶は流石にないだろう……
──レディへの接触が原因かもしれませんし
他の要員があるのかもしれません……
うーん、よく分からないのは仕方無いな
これは一旦置いといて。
『聖遺物』って生産出来るんだっけ?
──現代の技術力では不可能とされています。
過去の超科学があれば
出来たのかも? って感じか。
それにしても『今』って過去よりも
技術力で劣ってんのな、ちょっと複雑。
──はい、過去の大戦で文明は一度
滅んだとも言われています。
初耳なんですが?
──初めての項目でしたので。
くっそ、チュートリアルさんのチュートリアルが
堂に入ってやがる……。
で、『聖遺物工場』という事を知らせるべきと
判断した理由は?
──工場とは言いますが、実際は実験場に
近かったようです。
つまりは『無垢なる魂』などを
生産しようとする場合……
罪の無い人々を集めて、大量虐殺染みた事を
していた可能性がある……という事か。
──はい。何が待ち受けているか分かりません
充分に気をつけて下さい。
「オッケー……と言うことらしいぞ、ギガ」
「なるほど……それは深いね。って分かるわけ無いでしょうが!」
仕方が無いので、一先ずギガに説明をする事にした。




