キャンプ
「こんな森の中で、歩きながら今後の展望を話し合えると思っていた、俺がバカだった」
「そうだね、バカだったね」
「そこは嘘でも否定して?」
そんな事を喋っているが、二人は現在
超絶早歩き中だった。
というのも、またしてもネームド
『隻眼ノアルクトス』+ウルスス多数が
近くをうろついて居るせいだ。
「なに? 熊って群れで生活するタイプだったっけ?」
「母子のセット以外は単独行動だったハズだよ? 前にネイチャー番組で見た」
「それ多分、俺も見たことあるわ。ああいう番組見てると、うっかり一日終わるから恐ろしいよな」
「然り然り。って、言ってる場合か! どうなの? 状況は?」
俺は『偵察』を用いて、奴らのいた方を見る。
「大丈夫、徐々に距離は離れてる。この前みたいにタゲられてはいなそう」
「じゃあ、良かっ……待って、前回そんな感じで安心したところに『ホットセンチピード』がこんにちわしたよね? ちゃんと見てくれてる?」
そうだった、この森での油断は命取りだった。
今度は油断なく全方向を見る。
「…………大丈夫っぽい。範囲内には居らん」
「良かった、もうちょっと行けばGSが使ってたキャンプ地があるから、一旦そこへ向かおう」
「それが良いな」
スタミナ消費が発生するか
しないかの微妙ラインを攻めた『早歩き』は
しばらく続いた。
「ふう、着いた。この早歩きって裏技じゃね? ズルだろこんなの」
「スタミナ消費ラインが設定されてて、こちらは自由に動きを調節出来る。これは想定された仕様でしょう?」
そんなわけあるか。
「これを習得しないと、ガチ勢としてやっていけないよ? 移動は常にコレ」
「しんどいが過ぎるんですが?」
「慣れれば行ける、というか普通に敵に追いつかれる事もあるから、戦闘中はスタミナ管理しつつダッシュ使った方が良いんだけどねー」
さいですか……。
「で、どうする? ここで話し合いか?」
「いや、ここでは一旦キャンプしてリス地設定。そのあとカシュー君のマイガーデンに移動、道中で女王イベントが起こればラッキー、起こらなければマイガーデンから遺跡探索に乗り出そう」
キャンプ中には話さんのか? とか思っていると
ギガがインベントリから何やらアイテムを取り出す。
「うわ、何それイカツっ」
「テントだよ? これ持ってると、ここみたいにソレ用の場所でキャンプ出来るんだよ。でっかいけどインベントリ1枠しか使わないから邪魔にならないし、リス地更新出来るから、持ってると便利だよ?」
「そうなんだ、俺もゲットしとこうかな」
ギガはささっと、テントを設置したあと
テントに駆け寄る。
「はい」
「何、急にはいって……」
「ああ、音声認識で『キャンプを行いますか?』って問いに答えただけだよ」
え、ポチってやらなくても行けるの?
「カシュー君の方にも確認出ると思うよ?」
──パーティーメンバーが
キャンプを提案しています。
承認しますか?
たまにしか聞けない事務的チュートリアルさん。
──主人?(圧)
おおっと!
「はい」
俺が承認すると、画面が暗転し
ベッドで寝た時のメロディが流れる。
……そして目覚める。
「一瞬だな……」
「そうなんだよね、旅行者系のクラスで、ちゃんとキャンプ出来るクラスがあるっぽいけどね」
「あのイカれたクラスにも、用途があったのか……。他にも色んな要素の深掘りにクラスが関わって来たりしそうだな」
「あると思う。でも自分はレアクラスの『剣豪』目指すけどね」
「レアクラス?」
「そそ、クラスアップの時に条件を満たすとなれる。やっぱりシンシャなんだから、刀使って戦いたいじゃん?」
「まあ、そうだよな。両刃の剣で戦うシンシャは、ちょっと違和感感じてた。それにしても、クラスツリーに脇道があるとは……決められない気がするぜ!」
「アハハ、まあ今度こそマイガーデンに向かいながら話そうよ?」
「そうすっか。途中でイベント起きたら無理だけどな」
俺達は神秘ノ森林庭園へ向けて出発する。




