地獄
俺はしのらーさんの手伝いで
瓦礫を退かし始める。
ぶっちゃけると、この瓦礫撤去作業
それほど大変な物ではない。
リアルな瓦礫よりはかなり軽いし
力み過ぎれば、放り投げてしまう程度だ。
「この瓦礫、毎回復活するんですね」
「一応、隠しエリアだからね。最初から見えていたらつまらないじゃないか」
「たーしかに」
今、隠しエリアって認めたよな?
なんか特別なイベントとかあるんだろうか?
「そういえば、GM権限とかでテレポート的なの使えないんですか?」
「ん? ああ、使えるには使えるんだけどね。今回はとても個人的な事だから、使いたくないんだ。使ったらバレてしまうからね、ははは」
うぉーい! 俺、良からぬ事の片棒を
担がされてるんじゃないだろうな!?
「まさか内緒なんですか? 俺、BANされたりしませんよね!?」
「それは大丈夫だよ。……話は通してあるし、申請もしてきた」
なんだよ今の間……? それに申請って?
まあ、よく分からんけど会社って
それいる? って感じの申請を要求してくるからな。
「大丈夫なら良いんですけど……そろそろ開通ですね、ほっ、はっ、ふっ! これで最後!」
「ありがとう、せっかくだし見ていくかい?」
「良いんですか?」
「ああ、きっと面白いモノが見れるよ」
そう言うとしのらーさんは、狭い穴へ潜って行く
折角なので、俺も続く。
確かに……これは地獄だわ……
眼前でオッサンの尻が蠢き
靴の裏が俺の手に当たるかどうかの位置を
行き来している。
いや、しのらーさんのアバターは
細身のナイスミドルって感じではあるんだが
それでもキツイ。
ギガの奴、よく我慢したな……
それに絶対に! 女性アバターは
先行させてはならない。
心に留めておこう。
もう少しだ、頑張れ! しのらーさん
頑張れ! 俺のメンタル!
……などと考えているうちに
ようやくその時が来た。
「ふう、さすがに狭かったな」
しのらーさんは、独り言を呟きながら
軽くストレッチしている
俺は俺で、壁沿いで座り込んでクソデカ溜息をつく。
「帰りもあるって考えると中々キツイですよねぇ」
「確かに、ね。まあ、しばらくはそのまま壁際で休んでいてくれるかい?」
「虫捕りをする……だけじゃなさそうですね?」
しのらーさんはにやりと笑い、頷いた。




