ダージラー
「あらン、いけない! はい、雅ちゃん、ご注文の『喫茶店ナポリタン』よ♪」
え、ギガの奴、またパスタ頼んでんのか?
「それからぁ、ご注文のダージリンティーです」
「待ってました!」
「……は?」
「修ちゃんも、決まったら呼んでねぇン」
ママはそう言ってウインクを残し去っていく。
待て待て待て待て、情報量が多くて
脳の処理が追いつかない上に
ママのウインクで思考停止しそうになったわ。
「うーん、まずはここからか? ギガ、この前カルボナーラ食ってたよな?」
「え? うん、食べたね。スパン短くねってコト?」
「まあ、そうだな。本人が良いなら良いんだけど」
「全然余裕! 流石に一日中パスタはキツイけど、毎日1回くらいでも行ける」
「いや、基準が分からん。それにしてもそのナポリタンはネーミングが『ファンシー』じゃないんだな」
「ホントだね、喫茶店にこだわりのあるママの名付けかもね」
ていうことは、ファンシー要素は
依子さんの仕業か……。
「たーしかに、ていうか普通のナポリタンと何が違うんだろ?」
「見た目はあんまり変わらないよね? 食べてみるわ。いただきまーす!」
──パクリ。
「これは! 濃厚でいてコクがあり、それでいてクドくない……星3つです!」
「それ、グラニーの真似か? 味についてまるで触れていないんだが……」
ギガは自分で披露した
モノマネのクオリティの低さに
頬張ったナポリタンを噴き出しそうになっている。
水を一口あおり、一息ついたギガが口を開く。
「アハハ! 食レポムズいね、甘味を食べた時のカシュー君を見習いたいよ」
「俺、食レポなんてしてたか?」
「無意識かっ!」
えー、やってたんだ俺。
「そ、それはともかく! ナポリタンは取り敢えず良い……なんでまたダージリン頼んでんだよ!? さっきはお冷飲んでるし」
「ああ、コレ? 前回飲んだら思いの外美味しくてさ、プチマイブーム到来」
「だからって、食事と一緒に頼まなくても……」
「届きたてだと、あっつくてさ〜。前回やったカシュー戦法がちょうど良かったんだよ」
「なによ、カシュー戦法て……食事はお冷で、食後にダージリンってコト?」
「そそそ! 素敵な発見をありがとう。俺は立派な『ダージラー』になれました」
「そんなん聞いたことないわ!」
とはいえ、俺も早いとこ決めないとな
「うん……? これは」




