怠け者女王の遺産
俺達は、クエスト受注カウンターの前まで
歩みを進めて、ショコラちゃんに話しかけようとすると
後ろから誰かがやってくる。
「カシュー、ここに居たか」
振り返るとそこにはガリアン……とベル爺さん?
「ガリアン殿、案内すまないの。でじゃ、久しぶりじゃな、カシュー。最近は寄宿舎に顔を出さんから、ワシの料理の腕がなまってしまわないか心配じゃわい」
大丈夫、大丈夫! そもそも
どうやったらアレ以下になるっていうんだ?
「いや、はは……どうも。ところで、何で俺を探してたのですか?」
「ふむ、カシューの最近の活躍を聞いてな。ワシもひとつ、『頼み事』をしようと思ってな?」
「頼み事?」
「ああ、クエストというよりも、本当に個人的な頼み事じゃ。カシューは『怠け者女王』は知っているか?」
……レイジーアン?
「いや、『アン女王』では無く?」
「フォッフォッフォ、そっちの名で呼ぶ者は、もはや存在しないと思ったが」
ベル爺さんの隣でガリアンも
苦笑いを浮かべて頷いている。
……えー、何このリアクション。
──正式名称は『女王アン』で間違いないはハズです。
チュートリアルさんも困惑している。
何? 『通称』みたいなもの?
「いや、良いんじゃ。まあ『このガーデンの主』じゃな。そんな彼女の『遺産』が存在している事は知っているか?」
え、女王亡くなってんの? 主不在なの?
「女王が死んでるのか? って顔じゃな。そうじゃ、本来は『管理者』は不死のハズじゃ。しかし、彼女は勝手に眠りについた」
「おかげで、『女王アンの庭園』は数多の破片級ガーデンに寄生され、一時はガーデンの機能停止の危機に瀕したこともあった」
ガリアンが補足説明をする。
やっべ、俺の所も寄生してたし
最近バレたばっかりだわ……
「へ、へぇ……良く大丈夫でしたね?」
「そこは『監視者』が手を回して……おっと」
「まあ、細かい話は良いんじゃ。ガリアン殿が少しこぼしたが、監視者が対処した多くの廃ガーデンが、ここには今も存在している」
ベル爺さんは足元を指差しながら言う。
「噂では、その廃ガーデンのどこかに『星屑の砂時計』という聖遺物が眠っているという。それを探してきて欲しいんじゃ、もちろんタダとは言わん、ワシのとっておきを用意しとるから、期待して良いぞ?」
なんか嫌な予感。
「え? 具体名出してくれないんですか? まさか、手料理……とか!?」
ガリアンが笑いそうになるのを必死にこらえている。
「それも良いんじゃが、もっと良いものじゃ。カシューには先々、必要になるものじゃよ」
「わかり……ました」
──メインクエスト
『怠け者女王の遺産』
を受領しました。




