エンカウント
来た……俺は遂にやってきた。
些か遅い時間になったが……にしても
「これがフルダイブ喫茶か、意外とこじんまりしてるな」
俺の眼前にそびえる店舗は、聞いた感じと違い
やや大きい喫茶店、という印象だった。
席数の少ない店舗なのかな?
──いざ、尋常に!
ドアノブに手をかけ、扉を開く!
カランカランカラン
「あらン、いらっしゃ〜い♪」
「……失礼しました」
即座にドアを閉じ、その場を離れようとする
待て待て待て! 何あの野太い声! ママってそういう事!?
完っ全にママだったわ、朋美のヤツ、こういう事なら言っとけって!
というか、あんな前時代的なオカマって、今なお存在してたの!?
「チョット待ちなさいよぅ! 別に取って食いやしないわよォ!」
飛び出してきたママに、ガッシリと腕を掴まれる。
くっ! 力強い!
「あ、あの間に合ってますスミマセン!」
「間に合って無いわよ! まだ何もしてないでしょォ!」
──やられる!
「あ、ママ! ……と修一?」
ママと俺は声の方を見る。
「あらン、朋ちゃん♪」
「朋美!?」
そこには見知った顔がいた。
「アッハハハは! バカだね〜、ちゃんと『ゲームカフェ はな』って書いてあったでしょ? 食われるって、アハハっ」
「くそぅ、ここ最近で一番の身の危険を感じた瞬間だったって言うのに……」
俺がゲンナリしていると、ママが申し訳なさそうに謝罪する。
「ゴメンなさいねぇ、結構強く掴んじゃったでしょう?」
「そんなに謝らなくても大丈夫です、ちょっとビックリしただけなので」
さっきから謝りっぱなしで、こっちが悪いような気がしてくる。
「そうそう、それにお詫びのクレームブリュレもとっても美味しいし♪」
「なんで朋美も食ってんの? ってか、それ俺のじゃね?」
便乗して、お詫びの品を貰ってるだけではいざ知らず
人の物にまで、その触手を伸ばすとは!
……と言うか今、夜の10時ちょい過ぎだけど
なんで朋美居るの?
「ところで朋美、こんな時間にここに居て良いのか?『あっし』が帰って来てんじゃないの?」
北村 敦、通称あっし
朋美の旦那さんだ。
「あっし、今日も仕事で遅くなるんだって。はぁ」
朋美は、食べかけのクレームブリュレを俺の方へ寄越す。
旦那が帰って来ないだけで溜め息が出るとは……お熱いことで。
「ママ! 1時間だけやってくわ! 席空いてる?」
なぜかヤケクソ気味に朋美が言う。
「ええ、1番と5番以外は空いてるわよ」
「じゃあ、3番で」
朋美はそう言うと、メンバーカードをママに渡すと
引き換えにカードキーとロッカーの鍵を受け取る。
「という事で、修一。私、ちょっとゲームしてくるから。帰りは時間が合わないだろうから、先に言っておくね、またね」
片手をあげてそう言うと、朋美は喫茶スペース奥の下り階段を降りていく。




