タイムリミット
「グラニーの所と貸出スペースを往復するのは、だいぶ無駄だな」
「焼くだけ焼いてからの方が良いよね」
そう結論づけた俺達は
貸出スペースに向かって移動する。
「お料理タイム開始でございまーす」
「キノコ焼くだけだけどな」
さて、俺の手持ちの茶キノコは12本……
95%の壁を打ち破ることが出来るのでしょうか?
「さすがに焼きキノコは、そうそう失敗しないよ。それに、とりあえず9本用意できれば御の字なわけだし」
「お前、またやったな? 脳内読むなとアレほど──」
ギガの方から料理系クラフトのSEが流れる。
「聞く耳もたないと? ……まったく、俺も始めるか」
俺はメニューを開き『料理』のアビリティを選択
焼きキノコの焼き作業に入る。
件のSEが流れ……最後の最後で
失敗SEが差し込まれる。
…………。
「なんて日だ!」
「マジかカシュー君、初手5%引くのはさすがに笑うわ」
ギガが茶化してくる。
「おのれ、もう一度だ!」
────失敗。
「知ってた! 今の流れは絶対こうなるって思ってた!」
「逆にスゲーよ……マジなの?」
「うっさいうっさい! 次だ次!」
その後は順調に成功を重ね
焼きキノコを量産していく。
その途中、俺とギガは同時に辺りを見回す。
「?」
「??」
ゲームに似つかわしくないメロディが
流れ始めたからだ。
『プレイ中ゴメンねェ、あと5分で時間よン』
……ああ、時間か。
ギガも隣で、同じような表情をしている。
「あと5分か」
「これはクエスト周るの、キツイかもね」
俺はギガの言葉にうなづく。
「時間いっぱいまで焼くか、キノコを」
「カシュー君のクラスレベルが10になるように、せめて9本用意したかったけど、ムリなら次回ログインした時に焼けばいいね」
「そうだな。あと1本しか失敗出来ないのキツすぎる」
「さすカシューお疲れ様っす」
2人は時間いっぱいまで黙々と茶キノコを焼き続けた。




