心遣いの行方
あのあと、チュートリアルさんも自重したのか
粛々と儀式が続けられ
神々しいエフェクトとともに
スタークの腕が治っていく様を眺めながら
俺は思わず息を呑んだ……けど
腕や足が千切れるのは勘弁願いたいし
できれば教会には、お世話になりたくはない。
なぜなら、マーサとの別れ際に渡した包みの
デカさにドン引きしたからだ。
「……うん、悪くないな」
スタークは治った腕でグーパーしてみせる。
「治ったよアピールはありがたいんだけど、あの包みの中身が心遣いってやつ? あんなに必要なの?」
「ああ、あれは支払いと言うよりは『積み立て』さ」
「積み立て?」
「そう、積み立て。都度払っても良いけど、予め、ああやって渡しておくと、手持ちがなくてもすぐに治療を受けられるし、色々と便宜を図ってくれるんだ」
にしたって、あの量……
使う予定を織り込み済みで探索してないと
無駄になりかねないのに、ようやるわ。
「地獄の沙汰もなんとやらとは言うけど、教会があんなにお金貯め込んでどうするつもりかしらね」
メーヴェが呆れたように吐き捨てる。
「ですから、主に慈善事業への投資と説明したでは無いですか」
「その主にが信用できないのよ、その割合には負けるけど、他の用途もあるって事でしょ? 絶対私腹を肥やしてるでしょ?」
「上層部は分かりませんが、私やマーサは、そのような事はありません」
「もういいか? そのやり取りは聞き飽きたわい」
「アタシお腹空いたー」
「右に同じ」
別動部隊組がメーヴェとネレイドの言い合いに
割って入って、スタークがそれに乗じて
この後の行動指針を決める。
「それじゃあ、ガリアンに報告を済ませ、一旦解散にしよう」
流石に、その言葉に反対するものは誰もいなかった。
俺も腹減ってきた、リアルの方で。




