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5 ネーミングセンス


 さてと。まずは能力値の割り振りからか……。22しか割り振れないから1つか2つに絞った方が良さそうだ。

 放浪者という職業の関係上か素早さや運の能力値が他と比べて高い。順当にいけばそれらを伸ばすべきなのだろうか?


 攻略情報は見たら負けの精神でやっているのでどうやれば強くなれるとか一切分からない。前作のナルジアではネッ友の言う通りに振っていたのだが、あいつと合流できるのはいつになるのか分からない。今日だってゴールデンウィーク初日だというのに仕事が入ったとかで夜からしかインできないんだとか。

 ゲームの一日が二時間なので、五日程会えないわけだ。あと四日半か。待ち合わせ場所も決めとかないとだな。


 話がズレたが、五日間もこれを放置しておくのは痛いので適当に割り振ることにする。


 魔法系は今後テイムしていくモンスターに任せるとして、攻撃と素早さを上げればなんとかなるだろう。運は……運もモンスターに任せよう。

 



 【STR】 15(+11)

 【VIT】 15

 【INT】  15

 【MND】 15

 【DEX】  15

 【AGI】 50(+11)

 【LUK】 40


 残り(-)

 


 こうなった。どっちを多くとか考えるのが面倒なので半々である。元が低いこともありSTRがやや低めだがバフをかけてもらえばどうにかなる。きっと。

 そのバフも当然テイムモンスター頼りである。早くレベルを上げなければ……。


 さってと、お次はスキルリストの確認だな。SPが8もある。


 

 【隠蔽】SP2

 【受身】SP1

 【採取】SP2

 【索敵】SP2

 【一閃】SP3

 【剣術スキル(突き)】SP3

 【探知】SP1


 

 こうしてみるとそんなにないんだと気づく。アナウンス結構あった気がしたんだが、必要そうなのは適宜その場で取っているからだろうか。耐性系とか取れそうなものは後日エフィたちに手伝ってもらえば取れるだろう。スキルの取り方は大体把握した。

 消費するSPだが、攻撃系のスキルがSP3と一番高い。他はどんな基準で1か2になるのかは分からないが、何か意味があるのだろう。


 うーむ。

 【一閃】なら使えそうだし、一個くらい攻撃スキルを持っていていいのかもしれない。あと必要だと思うのは【採取】【探知】あたりか。【図鑑】コンプリートに貢献してくれそうな面々である。【探知】は【索敵】とどっちを取るか悩みどころである。が、やはりSP節約のためここは【探知】でいこう。

 この3つで消費SPを計算してみると6、残りは2で丁度いい感じだ。


『【採取】【一閃】【探知】を習得しました』


「【鑑定】」


【採取】

 植物採取の成功率が上がり、確率で採取物の品質が上がる。


【一閃】

 的確に急所を狙い一線に薙ぐ。成功すれば確定でクリティカル判定になる。


【探知】

 レベルに応じて周囲の生命体の気配を察知することができる。

 また、自身に危機が迫った際にアラームが鳴る。尚、LUKに依存する。


 ふむふむ。大まかな内容は予想していた通りである。

 ついでに今までのスキルたちも確認しよう。


【観察】

 視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚を常時向上させる他、一部ステータスを見ることが可能。

 稀に【鑑定】と異なる結果が出るようである。


 ほ?

 【観察】と【鑑定】で結果が違うだと? というか【観察】は進化したのでもうないのだと勝手に思っていたがそうじゃないのか。【観察】して【鑑定】していないものと言えば……


【言語理解】

 自分のレベルに近い相手の言語を理解することができる。

 差が広がるにつれて複雑化、理解ができなくなる。

 また、好感度によって理解度は異なる。


 全然違う。一行目からして違っている。

 だがこれでエフィたちの言葉が分かるのに納得がいった。どこまでが近いとするのか分からないが、好感度のおかげで流暢に聞こえるということでいいのだろうか?

 ディックに通話ができず、エフィやレフくんにできるのが根拠である。


 と、まあ。このままでは夕食までに切りのいいところまで終われそうにないので爆速で確認だ。

 

【ギャンブラー】

 賭けに出た場合の勝率が高くなる


 カジノあったら負けなしじゃんね。


【異形と分かり合えし者】

 種族の異なるモブに対して初期好感度が通常より高くなる


 種族が【??】表記なのは俺だけだと思うので使えないモブはいないという認識でいいのだろうか?

 モブとはNPCやモンスターを総括した言い方だったと記憶しているので、その両方の初期好感度が高いとなると……どうなんだ? モンスターの方は図鑑埋めに役立ちそうではあるな。絆結びやすそう。

 

【放浪者】

 世界を放浪する者。転移する際にランダムでマップ内のどこかにとばされる。


 ……うん。


 スキルリストにあるスキルは残念ながら【観察】できなかった。名前からスキルの効果を当てる運ゲーなのか、【鑑定】でも相当なレベルが必要なのかは今後のレベル上げ次第ということだ。


『【鑑定】のレベルが2に上がりました』


 言ってると早いレベルアップである。他にレベルのあるスキルがあまりないのでこれが早いのか遅いのかは分からないが、普通と考えておこう。そもそも俺が【鑑定】を使った回数がエグイのかもしれないし。そっちの方が有り得る。


「あとは――」


「『ノアさん~食事が用意できたっすよ!! や~ありがたいっす、俺っちたちの好物をこんなにくれて。近々異邦人が来るとかでこの辺りに殺気立ったモンスターがうようよいるんっすよ。あの泉に行くのも一苦労なんでなかなか取れなくて!』」


 異邦人はプレイヤーのことだったよな。プレイヤーが来たことがこんな風に影響を及ぼすなんて誰が想像しただろうか。

 一応、間接的には俺の同胞のせいであるので何かしら詫びみたいなことをすべきだろうか。

 

「……牧草は泉の近くにあるのか?」


「『そうっすね、あそこが一番多いっす』」


 俺はふむとあごに軽く握った手を当てた。

 巣を見渡しても子供や老人に比べて戦闘力になる大人が心もとない。エフィがあそこにいたのも牧草の採取が目的だったのだろう。エフィやレフくんは一匹でも強いので単身で採取に行っているということか。


「なるほど、エフィの毛並みが悪いのは子供に気を使ってあまり牧草を食べれてないからだな? そういうことなら俺も協力しよう。俺の同胞が迷惑をかけているみたいだし」


「『ほんとっすか!?』」


「『おい、誰が年寄りだ』」


「年寄りとは誰も言ってない。それより、俺が定期的に牧草を採取してここに持ってくるという条件でここのスペースを使わせてもらえる……というのはどうだろう?」


「『ふむ、どんな使い方かにもよるっすね』」


 レフくん、ちゃんとリーダーしてる……。

 じゃなくて。

 

 ……なんか最初に会って道中でひゃっふ~しているレフくんを見ていたから笑いそうになる。全く。


 どうにか笑いを顔に出さずボックスからヒール草その他もろもろを取り出す。全部【アルス】に株分け可能とされていた種類だ。


「これ、株分けが可能らしいんだが、俺は畑とか持ってないからあまってる部屋の中で育てられないかなと思って。多分、この中にも食用のがあったから、俺が来れない時もそれを腹の足しにしてくれればいいし……」


「『決定! 決定っす~!!』」


 前言撤回。全然リーダーしてない。


「『おいレフ、そんな簡単に決めるな』」


「『え~でも旦那、どこに駄目な要素があるんっすか?』」


「『えっとだな……』」


「『ほら! ないじゃないっすか~』」


「『違う、私が言いたいのはこういうことを考える時間を取れということだ』」


「『でもまだ旦那も駄目なとこ見つかってないっすよね? ならいつまでも考えてないでさっさと決めた方が楽じゃないっすか?』」


 エフィの旦那まで困惑してるじゃないか……。

 俺が旦那側の立場だったら何が何でも理由を付けただろうが、今回は提案している側なので何も口は出さない。株分けしたいし。


「『まあ、今回はノアが相手だからいいが……』」


「『俺っちもノアさん以外なら疑うっすよ~?』」


「『どうだかな』」


 どうやら旦那の方も異論はなかったようで、レフくんのことを諦めきった顔で見ている。群れのリーダーの教育係はまだまだ引退できそうにないぞ、旦那。


 それから俺は株分けに興味津々な子供を含む兎たちに株分けと苗植えのチュートリアルを聞きながら知ったように教え、すっかり懐いてしまったレフくんの子供に腕枕しながら眠りについた。

 ちなみに夕食は木の実を調理したもので普通においしかった。


『【株分け】【植栽】がスキルリストに追加されました』




 ◇



 

「『おはよぉ~』」


「おはよ」


 ベッドは地面に藁を敷いただけの簡単なものだったが、不思議と全身に痛みはなく、寧ろ快適だった。

 目が覚めるとすぐ目の前にレフくんの子供の顔があり、あいさつ代わりにか鼻の先を舐めてくれる。ヴァレンティアは女の子たちと一緒に寝ているらしい。嫉妬なんかしてないんだからね。


 のほほんとした子供の顔を見て、レフくんからどこをどうしたらこんな子が生まれるんだろうかと頭を撫でてやる。会った時からずっと寝ているし、ひゃっふ~なんてしそうにもない。

 ほんと、どこにあの遺伝子があるのだろうか。


 そんなことを考えていると早起きな兎が一匹近づいて来る。


「『あらあら、すっかり懐いちゃって。ノアさん、今日はどうするのかしら?』」


「今日は街か村を探そうかと思ってる。四日後に会う予定の友人との待ち合わせ場所を決めないとだからな」


「『そうなの。ならお昼はお弁当にした方がいいかもねぇ』」


 この子供の母親、つまりレフくんの奥さんは穏やかにそう言ってキッチンの方へと跳んで行った。キッチンは女の戦場だと昨日刃物を持って“おはなし”されたのでそちらの部屋へは行けていない。しかし昨夜も豪勢な料理を作ってもらったので弁当を作ってくれると言うなら非常に楽しみである。


「『おにーちゃん、いっちゃうの?』」


「そうだよ」


「『ほんとに、ほんとに?』」


 レフくんの子供が泣きそうな声で俺の服に顔を突っ込んだ。

 設定ではステータス画面から変えないと服は脱げないようにしてあるのだが、モンスター相手だと効果をなさないらしい。もしくはそういった意図がないからなのか。

 どちらにせよ可愛いので気にしない。ちなみに泣きそうな声を聞いてレフくんの奥さんがちらりと穴から顔を出してこちらを見てきたが、その白い頬には何かの赤い液体が染みついていたので図らずしもビクッとしてしまった。


 くしゃりと長く鬱陶しい髪を掻き上げどうしたもんかと考える。


「これ、食べたい?」


「『うゅ? たべる!』」


 あざてーかよ……。

牧草以外の角兎の好物であるウルの実という苺に似た果物をあげることで無理やり慰めた。食べ物強い。


 もっもっと口いっぱいに頬張って食べる子供にほんわかしているとレフくんの奥さんが朝食が出来たと知らせに来た。子供の口元の毛についた汁を拭いつつ抱っこして大広間に向かうと眠そうに牧草を頬張っているレフくんと既に朝食を終えたエフィがそこにいた。他の兎は良く分からん。名前はないから分からなくていいのか。


「『おい、お前の子供が甘やかされているぞ』」


「『羨ましいっすね!』」


「『そうじゃないだろ』」


「『ん~つっても、ノアさんの元にいた方がいいって本能的に察してるんだと思うんっすよ。なら好きにさせたげるべきじゃないっすか!』」


 そんな会話を流しながら俺はレフくんの奥さんが平らな石の上に並べてくれるサラダやら果物やらを口に含んでいく。膝の上でこちらを見上げる子供の分まで同じ皿に盛られているからか随分と量が多い。きちんと朝ごはんは食べるタイプとはいえ、朝っぱらからがっつりという訳ではないから非常に助かる。

 喜ぶ子供の姿が見たいがためにウルの実と合わせて必要以上の朝ごはんをあげた気がする。が、これで毛並みが良くなるかもと思えばどうってことない。


 リアルだったら朝食後の紅茶を楽しみたいところではあるが、ここでまだ紅茶は見たことがないので諦める。その代わりに地下の水源から汲んできたという天然水を楽しんでいるとレフくんがちょっといいっすか? と尋ねて来た。


「『ノアさんはこれから街に向かうんっすよね?』」


「そうだが」


「『ならそいつも連れてって欲しいんっすよ』」


 そこまで言われてようやく朝食時に話していた内容とかみ合う。隣にいるエフィの様子を伺うと渋々といった感じで昨日のように説得できなかったんだろうなと分かる。


「レフくんの奥さんは?」


「『子離れが寂しいって年でもないわよ。まだその子の兄弟はいるし、また三匹生まれそうなの。たまに帰って来て生まれてくる子に武勇伝を聞かせてあげたい気持ちの方が強いわ』」


「三匹」


 夫婦愛は中々なようだ。レフくんも照れくさそうに笑って俺の膝を占拠する子供を見た。


「『ノアさんについてくか?』」


「『うん! おにーちゃんといっしょ、うれしい!』」


「俺も別に構わない。だがまだ【テイム】も持ってないんだ。危ないところに行くときはここか、安全な場所で待たせておくことになるが……大丈夫か?」


「『もちろん!』」


 おるすばんはなれてるんだよ! と胸を張る子供に苦笑する。とはいえヴァレンティアもいるので寂しい事にはならないだろう。二匹とも性格が似ているので気も合いそうだ。


「そうだ、一緒について来るなら名前も決めてやらないと」


「『なんでもいいよ』」


「そうは言ってもな……俺がカタカナだから揃えた方がいいだろうし」


 ネーミングセンスが微妙と言われる俺であるが、だからといってありがちな名前を付ける気はさらさらない。レフくんの子供だからといってマクレフとかレフソンとか付けたりしないのだ。

 うーむ。ヴァレンティアはバレンタインデーにテイムしたってだけだし、揃えると言うなら記念日か。今日は何の日だったか……。


「調べるのめんどいから、ゴールデンウィークからとって『ルーウィ』とかにしとくか」


「『ルーウィ! なまえ!』」


「『まあ、いいんじゃないか?』」


「『旦那よりもセンスあるっすよ~! 俺っちの名前、散々悩んだあげくにレフだし』」


 他の兎たちからも概ね好評のようだ。何よりルーウィ本人が嬉しそうに鼻をもひもひさせている。やはり普段も俺が微妙なんじゃなくて皆が微妙なだけなんだろう。ちなみに実家の猫の名前はまぐろである。1つ言っておくと、まぐろの好物は鮭である。

 うん。


 気付けばルーウィの周りには大勢の兎がおり、かっこいい名前貰えてよかったな! とかそんな話をしている。ルーウィも興奮した口調で返しているようだ。そんなに喜ばれては少し照れるので朝ルーウィが食べていたウルの実をあるだけ机の上に載せた。

 歓声が上がり一満足していると、ヴァレンティアが眠そうにこちらに来てルーウィの隣に座る。前と違って長髪だから肩に上りにくいのだろう。街に着いたらフード系の上着を買うことを検討しつつ皆に見送られて角兎の住処を離れた。


 


  *



 

 名前:ノア Lv6

 職業:放浪者

 種族:??


 【HP】 60/60

 【MP】 30/30


 【STR】 15(+11)

 【VIT】 15

 【INT】  15

 【MND】 15

 【DEX】  15

 【AGI】 50(+⒒)

 【LUK】 40


 残り(-)


 ◇称号

【ギャンブラー】【異形と分かり合えし者】


 ◇スキル(SP2)

 ・攻撃系

 【一閃】

 ・鑑定系

 【観察Lv5】【鑑定Lv2】

 ・収集系

 【採取Lv1】

 ・その他

 【探知Lv1】

 ・常時発動

 【言語理解】【勘】


 ◇特殊スキル

 【図鑑1%】


 ◇絆

 ディック(ゴブリン)

 エフィ(角兎)

 レフ(角兎)

 


 

 *


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[一言] 前話とステータスのAGIとLUKの値が違う気が…
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