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30 俺の中での流行語大賞


 もふもふ好きに悪い奴はいない。


「わーすごいかわいい子たちですね!」


 よって8人はみんないい奴だ。QED。


「てか知れば知るほどノア……さんってよく分かんねぇ奴だよなっておい、お前二刀流は卑怯だろ!?」


「うっう~」


 ハロウの遊び相手となっているゲイヴが爪楊枝の二本目をリフルの綿から取り出すのに負けじと近くにあった箸で対抗していた。

 その後ろでイブナスが注意しようと気を伺っているがどうもハロウが楽しんでいるから思うように注意できないようだ。


「ハロウ、ほらマシュマロやるからこっちおいで」


「う!」


「ゲイヴ。食器で遊ぶのは――」


「げっ」


 一人叱られているゲイヴがかわいそうだったので、俺もマシュマロに飛びつくハロウを軽くでこぴんだけしてマシュマロをあげた。低反発な感覚だけしたので痛みはないのだろう、特に気にした風でもなく小さい口にマシュマロを頬張っている。


 ヴァレンティアやルーウィはメイシュとシランに可愛がられている。


「こんなにおなか見せちゃって、ご主人様に嫉妬されるよ?」


「あらあら、ここがいいの?」


「……」


「くるっうぅ……」


「『ふぇぇ……』」


「……」


 嫉妬なんてしていない。

 スクショする手が止まらないだけだ。俺がマッサージするときもあんな感じだし。マッサージ中はスクショなんてできないから今してるだけだし。

 なんならマッサージの仕方を研究してるだけだし。


「お、これが気に入ったのか?」


「「――――♪」」


 リースとマースはヴィーナが気に入ったらしい。

 と、いうよりもヴィーナが使う【送風】が、か。


 リースやマースは体重が軽い分どうしても風の影響を受けてしまう。それをコントロールしようとしている際に「遊び」に転じたらしい。

 ルウと会うときに似たようなスキルを使ってほしいと強請っていたことがあった。

 今回はそれの相手がヴィーナということなだけだ。

 

「わぁ、こんな服初めて着ましたよ」


「ヴィー、ダァのかわいい? かわいい?」


「ヴィー、キーは?」


「ダァもキーも似合ってるぞ! かわいい!」


 試着室から出てきた三人は昨日大急ぎで作った俺の自信作を着てもらっていた。

 ケインはよく見るあの魔女が被っている帽子を被せたかったので白を基調としたマントやらそれっぽいのを作っていたので完全にお遊びだったのだが、着てもらうとめっちゃ似合っている。流石俺。全体が白っぽいのはと思ったので帽子やらそこかしこにネイビーのベルトを着けさせてもらった。

 ……束縛してるみたいになったが、まあ、うん。似合ってるよ!


 ダァとキヅには昨日考えた通りの甘ロりと猫耳パーカーを作らせていただきました。

 猫耳に関してはこだわり抜いており、動くたびにぴょこぴょこランダムに動く仕組みになっている。尻尾ももちろんある。そこは譲れないので。


「よし、じゃあいつ改装が始まるか分からんから外で必要なもの揃えに行こう。服の宣伝も兼ねてな」


「はい!」


 みんなの元気な声を聞いて俺は早速マップにピンを刺した場所へ向かうことに。

 ヴァレンティアたちは当然回収して俺の懐にINしている。これは譲れない。

 ハロウだけは食べかけのマシュマロをリフルの中に突っ込んで俺の頭上に陣取ったが。


 最初に向かうのはヘアサロン。

 一番気になるのはゲイヴだけだが、どうせなら皆イメチェンしちゃえばいいと思う。全体的に髪が長いんだよな。


 店に行く前に予約を取っておいていたのでそわそわしているみんなを席に着かせ、本人のしたい髪型がなければ俺が提案した髪型にしてもらう。

 みんな特に髪型にこだわりはないようだったので俺の好みを反映してもらった。


 時間がかかると思っていたが、リアルと違い【スキル】という便利なもののおかげでものの数分でみんな想像通りの髪型にしてもらっていた。素晴らしい。


 イブナス用にワックスを購入して支払いを済ませる。

 オールバック絶対似合うぞ、イブナスは。


 それからそれぞれできる部屋に欲しいものなどを買いそろえるために商店へ。

 お金のことを心配して最初は遠慮されたのだが、給料の前払いということで納得してもらった。ベッドとか好みが分かれるだろうし、まとめて買って俺のボックスで運んだ方が皆にとってもいいだろう。


「なーノア、腹減った」


「兄さん」


「ケイン」


「いや、店の中じゃないし問題ない。ずっと畏まられるのも疲れる。それより昼にするか、この人数だし出店の方がいいかな」


 ケインとイブナスは俺への態度にものすごく敏感だ。

 イブナスは以前の職業的にだろうし、ケインは最近クビになったばかりだからだろう。ただ、二人に説明したようにずっと畏まられていると申し訳なってくる。公私混同はよくないと思う。


「出店ならあっちの区画のが安くておいしいって評判だよ。味はアタシが保証するよ」


 ヴィーナが指さす方から確かにおいしそうな匂いがする。特に異論もないようなのでヴィーナの案内に従うことにする。


「あら、ここ出店が増えたんですね」


「街中での帯刀は騎士以外利き手側に帯刀しなくてはならないルールだったはずですが……はて」


「僕、薬屋で最近違法な露店が出回ってると聞いたことがあります」


 うん異邦人だな。申し訳ねぇ。

 というか帯刀の位置にルールなんてあるの俺も初耳なんだが。もしやナルジアでもそうだったりしたのだろうか。俺は帯刀して刀が足に当たるのが好きではないので街中でなくとも戦闘中以外はしていないのだが、結果的によかったのか。


「ノア、露店で買い物する時は俺らに聞いて――」


「今ノアって言いました!? ぜひお知り合いになってほしいんですけど!!」


「ノア様!? どこどこ!?」


「――!?」


 ゲイヴが俺を呼んだ途端に人が人を呼ぶ形で人だかりが形成されつつあった。

 昼時でそもそも人の多い時間帯であるのが災いして野次馬感覚の人が多数含んでいたのだろうが、人が餌に群がる蟻のようだと思ってしまったのは久しぶりのことである。

 呆気に取られて何も反応できないでいると後ろから服を引かれる。


「ノア、何してんのこっち!」


「あ、ああああああ」


 訂正しておこう。決して頭がおかしくなってしまったとかSAN値が削れたとかではない。

 「ああ」と返事をしようとして思ったよりスピードが早かったので思わず声を上げてしまっただけだ。

 人ごみを脳内でもふもふに置き換えていたのは幻覚なんかではないからな。


「次の裏路地入るぞ」


「いいけど広場だよ」


「好都合だ」


 ていうかみんな足早いな!? 俺もAGI高いはずなんだけどそれに追いつくって何。

 

 そこからヴィーナを先頭に裏路地に入り、殿を務めていた俺が物影に隠れたタイミングでハロウの【擬態】を使う。女性陣の体に触れるのはヴァレンティアたちが手伝ってくれた。男どもにはこの指とまれだ。すぐに察してくれて助かったよ。


「あれ、この路地に入ったはずなんだけどなぁ」


「うーん……一人だけならまだしも連れてた人もいないとなると転移アイテムじゃないよね。カサヴェでも似たようなことあったらしいし、隠密系スキルかなー?」


「それでも7,8人同時に隠しきれるスキルなんて見つかってない。というか逃げられたから咄嗟に追いかけてしまったが好感度だだ下がりじゃねーか、これ」


「えーうそー」


 いくら【擬態】していても俺に触れられてしまえばバレてしまうので広場で助かった。見渡しのいい場所にいなかったら諦めてくれるだろう。


 それにしても好感度とか、やはりNPCだと勘違いされているのだろうか。イサベルらに嘘をついてしまった手前、あちらから勘違いしている分には全力で乗っかっていくつもりなのだが。

 しかしどこで俺のことが出回っているのだろう? 特に目立ったことは人前でしていないと思うのだが。


 と、考え事をしているとリースとマースが心配気に頬ずりしてくれるのでそれをありがたく受け取る。


 ……てかこれじゃね?


 ぶっこわれ性能でお馴染みのケセランパサランが二匹もいるんだもんな。そりゃそうか。

 ならしゃーないわな。


「行ったっぽいな。てかノアって追っかけがいるくらい有名なデザイナーだったんだな……これいくらするんだまじで……」


「それにしてもハロウのスキルですか、あれは。テイマーでないと伺っていますがこんなに懐いているだけでなくスキルの指示までできるとはいやはや」


「あー……んん、それよりヴィーナ、あそこで服を引っ張ってくれて助かった。昼は出店じゃなくてギルドで食べようか、あそこなら冒険者は騒ぎを起こせないはずだ」


 少々わざとらしい話の逸らし方だったが、みんなは深く突っ込むでもなく俺の意見に同意してくれるのだった。にしてもゲイヴの発想はなかった。確かにみんなが着ている服に「Noir.」のロゴがあるのでそれ関連もあるかもしれない。


 とにかくまた騒ぎになっても困るので、裏路地に詳しいらしいヴィーナにギルドまで人通りの少ないルートを案内してもらった。

 大通りに出るときは頑張って【擬態】で乗り切った。キヅとダァは背が小さめということもありヴィーナが両腕に人形抱きしているのを俺が袖を控えめに掴むような形となっていた。


 人形抱きを見て新しい服のテーマが思いついたのはいうまでもない。ヴィーナがゴリラとか決して考えてもなかった。

 ちなみにゲイヴがそういっていたのでギルドに着いてから殴られていた。



 


「個室まで貸してもらうのは申し訳ないな」


「でもあれは仕方ないですよ。異邦人に関する対処はこちらでも少々困っておりまして、そちらの方々がおっしゃっていた露店のこともそうですし……しかし異邦人らには昔に大きな借りがあるのであまり強く出られないんですよね……」


 結局ギルドでも騒ぎを起こされた挙句に席どりをしようとすると周囲のテーブル卓に席を譲るようしつこくしていたりと問題行動が多発したのでギルド職員の行為で個室を貸して頂けることになった。

 こんな特別対応なのはおそらくあの誘魔の宝石事件の時と同じ職員さんだからだろう。イサベルと一緒にいたとこ見られているし、下手な対応すればクビが飛ぶかもしれないからな。


 でも勘違いするな、俺はちゃんとチップを渡したぞ!


「あれが異邦人なんですか? それにしては伝承とその……イメージが違うと言いますか」


「シラン、遠慮せずに言っていいぞ」


「ならば遠慮なく。一言で言うとウザいですね」


「ぶふぉっ……けほ、けほ。その、すみません。続けてください」


 想像よりも容赦ない一言が俺らの腹筋を試していたが、ケインはダメだったらしい。ハロウが面白がって傷口に塩を塗るような形で変顔を決めていた。

 あ、ツボに入ったようだ。


「頼んでた昼食もらってきたわよ……って、どうしたのケイン」


「おや、なかなか愉快な状況ですね」


「ああ、メイシュにイブナスありがとう、助かる」


 ギルド職員と話している間に二人には料理を頼んできてもらっていたのだが、どうやらすべて運んできたらしい。

 メイシュが両腕に二皿ずつ載せて運んできた後ろから笑顔で六皿も運んできたイブナスの方が愉快だと思う。バランスやばいな。これは早急に燕尾服も作らねば。


「ではゆっくりお食事をお楽しみ下さい。時間は気にせずとも構わないですよ」


「本当に助かる……あ、ちなみにギルドで口座を作れると知人に聞いたんだがいつでもいいから頼めるか?」


「ええもちろんです。お食事中に準備しておきますね」


「頼む」


 がちゃりとドアを閉めて振り返るとみんながやれやれといった顔でこちらを見ていた。

 見慣れたぞ、この表情は。


「あんたって割と自由人よね」


「よく言われる」


 最近特によく言われるので俺の中での流行語大賞はこれで決まりだと思う。

 

思い付きで始めた主人公が二重人格な悪役令嬢の乙女ゲームものです。

書いてて思ったのが、癖の強い主人公が好きだなぁということですね。


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