表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/37

26 「だよねーアナウンス入るよねー」


「――――!」


「マース?」


 俺の顔に縋りつくように、あるいは何かを訴えるかのように張り付きながら音にならない鳴き声を必死に紡いでいる。俺の耳もそれら全てを受け取り、呪文のようなそれを口で紡いでいく。


「――【浮遊】!」


「――――!」


 ただの音、もしくはメロディのような呪文を唱えると風が俺の身体を包み込んだ感じがした。


「『すげえっす! ノアさん浮いてるっす!』」


「『風の精……だと!?』」


 安定しない足元への恐怖から俺は目を開く。木よりも高い場所に浮かぶ俺だったが、マースが傍にいてくれるお陰ですぐに恐怖は消え失せたし、落ち着いていると地上と同様に宙を踏みしめられることが分かった。


 眠くなる原因はスリープフロッグの目を見るからだろうと推測したので目線はリースたちがいるだろう腹の中に固定する。


 どこか自慢気なマースをつつくように撫で、俺は少し考える。

 ハロウもそうだったが、【擬態】といい今回の【浮遊】といいナルジアのときには持っていなかったスキルを持っているらしい。

 【鑑定】もできず、テイマーでもない俺がそれらを確認する方法は今のところ不明だ。


 ルーウィやエフィといった話せるモンスターたちと出会ったことで、今まで当然だった話せないという固定観念が覆った。


 怖い。


 ヴァレンティアやリフルがバフ・デバフでない戦闘スキルを持っているとしたら?

 戦いの場に出して欲しいと願うようになったら?


 それをリースマースたちのように許してしまうだろう自分が「弱いこと」が何よりも怖い。


「ゲコ」


「!」


 溜めに溜めた跳躍は更に上へと上がった俺にあと一歩のところで及ばなかったようだ。

 そのまま落下していくスリープフロッグに向かって【一閃】を繰り出す。


 落下の威力も加わっているお陰か皮膚の下まで届いた感覚はしっかりとあり、回復していた時刃に塗っていたシビレソウの効果で受け身を取ることも敵わずそのまま地面に落ちようとしていたスリープフロッグ。

 だが、地上にいる二匹が黙って見ているはずがない。


「『【旋風刃】』」


「『やっとっすか! 俺っちの子を返すっすよ、【台風の目】!』」


 風系の魔法だろうか、エフィは後ろ蹴りの風圧がそのまま刃となったような攻撃を急所であるうなじに当てる。レフくんは着地点を中心に円を描いて駆けまわっていたのがそのまま台風のように風を巻き起こし、スリープフロッグを一瞬にして俺よりも高くに飛ばした。


 それを逃さず俺も同じくらいまで浮かび、まさしく台風の目のようにぽっかりと開いた着地点目掛けて再び【一閃】。


「【一閃】【一閃】、【一閃】」


 すぐに落ちるなんて許さない。

 落ちようとした瞬間に下から、横から、あらゆる箇所から【一閃】を叩き込む。もっと、攻撃スキルを持っておかなかった俺の落ち度だ。


 最後に。


「おちろ、【一閃】!」


 弱り切ったそれに力いっぱいの威力を乗せて。


「――――」


「マース、どうし――うっ」


 激しい頭痛が俺を襲い、【浮遊】は維持できずに俺の身体は高い宙から放り出される。

 ここは俺がいていい場所ではないと見捨てられたかのようだ。


 エフィたちがいるし、別に死んでも。

 

 そして俺は意識を手放そうとした。落ちたトマトのような感触を味わうのはごめんだ。


「めめぇ!」


 意識を手放そうとした瞬間、もふっと俺の全身を綿あめが包み込んだ。


「『ノア、大丈夫か!? 怪我は、意識はあるか?』」


「『ちょ、動かないっすよ!? やっぱ威力を殺しきれなかったんじゃ』」


「『おいそこ、ノアを無理に動かそうとするな! 頭を打っていたら――』」


 ああ。


「『ノア返事をしてくれ。頼むから』」


「『おにーちゃんごめんなさい、勝手に泉まで行って、ごめんなさい、死んじゃやだよ』」


 ああ。

 なんて、ことだ。


「天国か、ここは」


「『生きてるみたいだな。レフ、一発殴って起こしてやれ』」


「『はいっす』」


「いっ!?」


 ぱこーんと気持ちがいいくらいの軽い音を立てて俺の頭は犠牲となった。

 はっと目を開いた俺の視界がまずとらえたのは大きい綿あめ――ではなく、巨大化したリフルだった。


 俺が離れたのでしゅるしゅると縮んでいくその姿に絶望したのは言うまでもないだろう。

 縮んでいくと同時に綿の中にいたのだろうヴァレンティアたちも次いで出て来る。


 そう、俺が知るリフルのスキルは【収納】。生きている、いないに関わらず何でも入るのだ。

 ナルジアのときはハロウが気に入ったものを詰め込まれていたのでスペースはいつ見てもゼロだったのだが、今はまだ余裕があった。

 スリープフロッグの中にいるだろうみんなを気にせず殴れたのもリフルが【収納】してくれていると分かったからである。マース以外のみんなが【探知】に反応しないので絶望していた俺だったが、リフルだろう点だけはスリープフロッグと同じ場所に存在していたのでみんなを【収納】しているのだと分かったのだ。


 綿の中ではダメージが入らないし、それに身を包まれているリフルも同様だ。


 それからこの【巨大化】。

 これは俺の知らないスキルだ。というか知っていたら寝るとき毎回【巨大化】させてる。


「レンも、こんなスキルだったらいいのに」


「くる?」


「何でもない」


 五匹中三匹が知らないスキルを持っているんだ、ヴァレンティアやリースもあると考えていいだろう。

 なら、リフルみたいに戦闘に関わらない俺得でしかないスキルであればいい――と願うのは俺のわがままだ。


『レベルが20に上がりました。SP7を取得しました』


『【連続攻撃】がスキルリストに追加されました』


『【威嚇】を習得しました』


『称号【泉を制し者】を取得しました』


 一息ついたところでメッセージの嵐だ。

 さらっと称号ももらえていたので【鑑定】しておく。


 【泉を制し者】

 全状態異常への耐性を得られる


 わっつ?


 眠りへの耐性、ではなく状態異常全て?

 大分やばい称号ではないかこれ?


 多分ソロでの討伐だからだと思うが、こんな称号バレたら絶対面倒なことになる。

 そうだ、【隠蔽】持ってたしステータスの隠蔽ってできたり――するね!?


 よし、称号は【食を楽しむ者】とか【ギャンブラー】だけ残して後は隠してしまおう。うんそうしよう。


 《エリアボス、エルネの泉のスリープフロッグが初討伐されました》


 《エリアボス、エルネの泉のスリープフロッグがソロ初討伐されました》


 だよねー。アナウンス入るよねー。


 

 そうして俺はもやもやした感情を整理しないままエフィたちと共に巣穴へと戻るのだった。

 ……それが後に大きな問題になるとも知らずに。

 


 

 


 

 名前:ノア Lv20

 職業:放浪者

 種族:??


 【HP】 53(+20)/145〈+14〉

 【MP】 35(+10)/60


 【STR】 41〈+5〉

 【VIT】 30〈+5〉

 【INT】  30〈+5〉

 【MND】 30〈+5〉

 【DEX】  30〈+50〉

 【AGI】 153〈+15〉

 【LUK】 85〈+5〉


 残り(+48)


 ◇称号

【ギャンブラー】【異形と分かり合えし者】【先駆者】【勇なる者】【食を楽しむ者】【勇者候補】【泉を制し者】


 ◇スキル(SP24)

 ・攻撃系

 【一閃】

 ・鑑定系

 【観察Lv5】【鑑定Lv5】

 ・収集系

 【採取Lv5】

 ・その他

 【探知Lv5】【挑発Lv3】【隠蔽Lv1】【威嚇Lv1】

 ・常時発動

 【言語理解】【勘】


 ◇特殊スキル

 【図鑑7%】


 ◇装備

 ・頭

 紫狐の仮面〈AGI+10〉

 ・指輪

 双蛇の指輪×3〈DEX+45〉

 ・セット衣装

 『紡がれた衣』〈全ステータス+5〉


 ◇絆

 ディック(ゴブリン)

 エフィ(角兎)

 レフ(角兎)

 ??(土狼)


 

 *


本文コピペしようと削除しちゃって心折れたひと←

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ