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24 駄目と言われるとやりたくなるやつ


「ノア? どうしたんだ?」


「……ルウ、俺の甥っ子から連絡が来てたんだ。村までつけられるかもしれない」


 掲示板で俺たちが注目を浴びているとか何とかで、注意するようにとルウからメッセージが来ていた。街の中で【探知】は使えないので今までもつけられていたのかは分からないが、ルドレイは俺の言葉を聞いて顔を顰めた。


「たまたまかなと思っていたが、昨日のあれもそうかもしれんな。朝から気分悪いと思ったらそういうことかよ」


 どうやらまだいるらしい。窓はこちらを映さない仕様になっているが、ルドレイが知っているはずもないのでカーテンをすぐに引いた。


「くる!」


「『おにーちゃん、ハロウちゃんがいないよー?』」


「は!?」


 急いで袖やリフルの毛の中まで調べるが、確かにいない。

 ナルジアのときはテイマーのスキルで場所が分かっていたから気にしていなかったのだが、俺はまだテイマーじゃないんだった。

 早くテイマーになりたい。


「すまん、ルド。ハロウを見なかったか?」


「は? いないのか?」


「ああ、そうなんだ」


「うっう~」


「ハロウ! どこいってたんだ!?」


 話題に出したからかハロウが姿を見せた。

 ……なぜか俺の袖の中から。

 さっきちゃんと調べたはずだし、見間違えるわけがない。


「う~」


 甘えるように俺にしがみつくハロウ。怒るに怒れなくなったじゃないか、全く。


 と、思ったら。


「ノア!? いきなり姿が消えたぞ!」


 にしし、と効果音が付きそうな笑みを浮かべてこちらを見上げるハロウ。どうやら俺も知らなかったスキルがあるらしい。

 試しに【鑑定】してみるが、ヴァレンティアと同じでエラーになる。これも神楽らに相談しようと思って忘れていた。


 とりあえずはだ。

 名残惜しいがハロウを引きはがして焦って壺の中まで調べていたルドレイを落ち着かせる。


 懐で俺にぴったりとくっついていたリフルも同じく消えていたらしいので、ルドレイも俺と接触していれば姿が消えるのではないか。そして、それならば誰にもつけられることなく村まで辿り着けるのではないか。

 と提案してみる。


「なるほどな。手……繋ぐのか」


「別に手じゃなくてもいいんじゃないか? ルドレイの好きなようにしてくれていいぞ、レンたちみたいに」


 俺の肩に乗って顔にぎゅーってしているヴァレンティアやリフルの毛に沈んでいるルーウィ、ハロウは俺の頭を陣取っている。リースとマースはハロウの身体にしっぽを巻き付けてぷかぷかしており、まるでブレーメンの音楽隊のようである。全然違うが。


 まあそれを参考にしろと言われても何の役にも立たないので、ルドレイはしばらく悩んだ後に俺の手を取った。


「森までの我慢だ。さっさと行くぞ」


「了解」


 俺たちはルドレイ先導で裏口からこっそりと森に向かった。

 ちなみに森に入ってもルドレイより弱いモンスターから見つからないと知ったので村に着くまで手は繋いだままだった。

 大分悩んではいたがな。


「わーお兄ちゃんだー!」


「狐のにーちゃんだー!」


「シーラ!? パパは!? パパにはそれないのか!?」


 村に着くなり門付近で遊んでいた子供たちが一斉に俺へ向かって走って来た。

 シーラは他の女の子たち同様抱っこを強請ってきたのでみんなを順に抱き上げる。

 隣のパパには目もくれなかった模様。

 向こうはアクロバティック高い高いをしているからどちらかと言えば男の子たちに人気なんだよな。俺は人形抱きをしているだけなので、女の子たちから「しんしだー!」と喜ばれている。


「あらあら。ノアさんお久しぶりです」


「カルーア。シーラがお嫁さんに……」


「ルド、ノアさんなら歓迎すべきよ」


「……ルド、俺はシーラを嫁に貰うと言った覚えはない。俺よりもっといい男を見つけるはずだ。カルーアさんみたいに」


 子供たちの遊んでいるのを遠巻きに見ていたらしい奥様方がまあ! と大げさに反応した。

 ルドレイは俺の言葉を理解できなかったようで、未だに恨みがましい視線をくれる。


「ノアさんは、ルドみたいないいパパがいるんだからって謙遜してくれているのよ。もう」


「でもカルーアもノアが選んだプレゼントを喜んでいたじゃないか!」


「お兄ちゃんセンスいいよねー」


「それは……まあ、そうね」


 よく見るとカルーアの髪飾りはあの日選んでやったものだし、シーラもあのリボンを腕に巻いている。


「でも、俺が忠告するまでもなくラッピングしてもらってただろ」


「いや、あれもノ――」


「だろ?」


「あ、ああ」


 せっかく俺が気を利かせているのに気づかないルドレイ。皆に見えないようルドレイの背中をつねり、圧をかけることでようやく頷いてくれた。


 全く……本当に元貴族なのか怪しいな。

 いや、逆か。貴族と合わないからこそ平民になったのか。


 俺は子供たちと遊ぶふりをしながら噴水に行き、ワープ設定を行った。

 これで大分移動が楽になっただろう。

 噴水を通じてワープができるということは、自分で噴水を作ればワープできるようになるのだろうか。それならエフィたちの巣穴に作りたいのだが。


「じゃあ、用は済んだし例のところに行ってくる」


「了解。カサヴェに帰るときまた寄ってってくれ。いつでも大歓迎だぜ」


 ワープ設定をするためでは理由にならないので貰っていたテントを返すという名目にした。

 大きめのテントを新たに買ったので、あながち嘘ということではない。


 ハロウ用のましゅまろも買えたし、棚から牡丹餅とはこのことか。


 ということで村を後にした俺は久しぶりに【探知】と【鑑定】を併用しながら巣穴に向かう。


 せっかくエフィたちに会うんだし、お土産に牧草とか持っていったら喜んでくれるだろう。

 土狼の親子もまだいるだろうし、薬草と果物も沢山持っていこう。


 誤算だったのはハロウが【探知】にも引っかからなかった、まだ持っていないものを拾ってくることか。ましゅまろを貰えて嬉しいのか先行しては何か持って帰るというループを繰り返している。

 ただ、俺に渡すのでなくヴァレンティアと戯れているリフルの毛の中に突っ込んでいるのだが。


「ハロウ、そろそろ俺の近くに戻ってこい」


「う~」


 多分俺と一緒じゃないと入れないだろうし、何かを拾うのに飽きて木の棒を振り回しているハロウを呼んだ。

 入れ替わるようにルーウィが巣穴の入口へ跳ねていく。


「『おにーちゃん、早く早く!』」


「分かった」


 どう入るのかとしゃがんで地面を触ってみると、視界が暗転し、気づくとあの洞窟であった。

 ヴァレンティア以外は初めましてなので「紹介してくる!」とルーウィは皆を引きつれて奥に入って行った。


 俺は記憶を頼りに広間の方へ向かう。


「エフィ」


「『ノア!?』」


「それに土狼たちも」


「うぉるふ」

 

 予想通り広間の方に皆はいて、レフくんだけが見当たらなかった。

 きっとあの泉の方まで食料集めに向かっているのだろう。


「『ノア! 急に連絡が来たと思ったら土狼の親子を寄越し、それ以外音沙汰もないとは! こちらから連絡する手段がないのだから連絡はマメに寄越せ! あと来る前こそ連絡を入れろ!』」


「ところでお土産にウルの実と牧草を持って来たんだが」


「『返事は!』」


「……善処する」


 レフくんがいれば誤魔化されてくれるのに面倒だ。

 まるで姉のようである。

 連絡できるのなんてすぐ頭から抜けるのだから、仕方ないと思う。頑張ってそっちから連絡する手段を見つけて欲しい。


「土狼の好みが分からないから色々集めて来たんだが」


「きゃんきゃん!」


 土狼の子供は俺がボックスから取り出した果物を見て嬉しそうに尻尾を振った。果物全般が好きらしい。母親が頭を下げて感謝の意を示すので俺は構わないと手を振る。

 母親はあれだが、子供の方はもふもふしてるんだよな。

 引き離すのは酷なので連れて行こうとは思わないが。


「畑の方にも追加で株分けできる植物もってきたんだ」


「『ああ、それは助かる。子供たちが進んで世話をしているからいい退屈しのぎになっているし、偶に新しい芽が出てくるから皆楽しんでる』」


「新しい芽が! それは見せて欲しい」


「『そう言うと思って株分けしてある。今では大量に生っているぞ』」


 案内された場所は前とは打って変わって広々としている。

 【鑑定】してみるとヒール草よりハイヒール草の方が多いし、確かに俺が渡した覚えのない植物が何種類か生えていた。


 さっそく採取して【アルス】に登録しようとすると、大声で俺の名前が呼ばれた。


「『ノアさーーーーん!! 子供たち見なかったっすか!?』」


「ルーウィたちなら奥に」


「『それがどこにもいないんっすよ! 最近生まれた子供たちもいなくて』」


 レフくんの言葉を聞いて俺はすぐに【探知】を使った。

 すると、巣穴の外でいくつかの点が泉の方に向かっているのが分かる。

 範囲外に出ていなくてほっとするのと同時に、「なぜ?」という疑問が頭をよぎる。


 一応誰がいなくなったのか名前を呼んでみるが、反応はなし。

 リースとマースだけでもいると思ったのだが、きっと見張るために付いていったのだろう。


「泉の方に向かっているのが多分そうだろう。すぐに向かおう」


「『全く……泉の方に異邦人がうろついているから絶対に向かうなとあれほど――』」


「そのせいか」


 多分ハロウが言い出したのだろうことはすぐに合点がいった。

 駄目と言われるとやりたくなるタイプだからな。


 姿を隠せるので危険はないと思うが、嫌な予感がするのは【勘】のせいではないだろうな?


 ……とにかく、急いで向かおう。


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