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17 ロールプレイ宣言


 そろそろあのもふ度が残念なあいつが恋しくなってきた。

所謂「高級料理に満足したから偶には貧乏食を食べたい」というあれだ。もふ度は残念であるが、妙に癖になるんだよな。

ほら、りフルも増えてもふもふの過剰摂取状態だし。


「という訳でエフィと通話しよう」


「何がという訳でや。というか誰やその女」


「ノア兄! 私に隠れて女を作ってたの!?」


「おい姉、だからややこしくすんなって」


「全く、こんな場所ではしゃげるのは貴方たちくらいよ。あのルドでさえ緊張してたのに」


 ここは談話室の一室。流石に真夜中なので大広間は使えないとのこと。

 明日でいいんじゃないかと言ったのだが、誘魔の宝石はそれほどまでに緊急を要するものらしい。

 フォルスがイサベルの隣に控え、他に三人ほど帯剣した人が俺たちを囲むように立っていた。

 ソファが凄くふかふかだ。


 ソファは三人用と一人用が四角いテーブルを囲むように2つずつあり、イサベルは一人用に座ったので王様は隣り合っている方がいいだろうと三人用を開けるとすれば残りは1つずつ。

 順当にいけば神楽が一人で俺たち三人で座ればいいのだろうが、ヴァレンティアたちも俺と一緒に座りたいようで(ここ重要)幅を取ってしまうのと、リウの隣が普通に怖いのとで俺が一人用を頂くことになった。


 現在の配置はリフルが安定の膝。ヴァレンティアとルーウィがそれぞれ俺の左右でソファに埋まり、リースとマースは俺の肩もとでふわふわと飛んでいる。尻尾を髪に巻き付けているのでどこかに行くことはなく安心だ。


「国王陛下が参ります」


 冷ややかに告げられた言葉に俺たち一同立ち上がり、扉に向かって頭を下げた。

 作法とか全く分からないが、そうしなければならないという圧が確かにあった。頭を下げたことでヴァレンティアと目が合い、顔が少し緩む。


「いい、頭をあげろ」


 次いで開かれた扉から堂々とした声が部屋に響く。

 寝起きだろうに、と緩んだ顔をキリッとさせ頭をあげるとそこには熊のように厳つい王様がそこにいた。


 ……イサベルの言ってた「取って食われるわけじゃない」はそういう意味だったのかと納得。

 だがリフルを抱っこしたままだった俺は強かった。そして俺を見ているだろうリウも強い。リウを心配して見ているだろうルウも強い。神楽は知らん。あ、八岐は流石に城門のところでお留守番だ。城を練り歩くには少し大きすぎた。


「ふっ……流石フォルスが推薦するだけあるな」


 王様はそんな強い俺たちを見てふっと笑った。フォルスはそれに対して委縮するでもなく、むしろ好戦的な笑みを浮かべた。


「皆ぼくの部下に欲しいくらいです」


「珍しいな。っと、まあ座れ」


 ドサッとワイルドに座る王様に続いて俺たちも座る。

 普通目の前にいる神楽たちからみるだろうに王様は真っ先に俺を見た。正確には俺たちか。


「テイマーか。しかも狐の面とはな」


「いや、職業は一応放浪者で」


「「「!?!?」」」


 この場にいた人がみんな驚く。神楽と、イサベル、フォルスは元々知っているので普通にしているが、イサベルと神楽からは言い方に気を付けろ、的な視線を貰った。ルウも驚いてはいないようだが、察しがいい彼のことだ。薄々感づいてはいたのだろう。


「テイムモンスターでもないモンスターを城に入れたのか!?」


「落ち着け。まさかスキルも持っていないのか?」


「そのまさかで」


 自分たちのことを言っているのだと分かった皆はそれぞれ鳴いて挨拶してみせた。

 可愛かったので録画はばっちりだ。仕事中にでも見返そうと思う。


「信じられんな。タイニーバードはこの辺りにいないだろう? そのケセランパセランに至っては稀にしか見ることが出来ないんじゃなかったか……? それを二匹も」


「お父様。ノアはモンスターと言葉を交わせるらしいのです」


「そうなのか!! ……っと、話がズレたな。その話は後で聞くとして今は誘魔の宝石だ」


 そう言って王様が右手を執事に伸ばすと、ぽんとその手にガラスのケースが乗せられた。

 先にイサベルが渡していたのだろう。ヴァレンティアたちは誰も見向きしないのであのケースは効果を遮断する何かしらを持っているのだと思う。


「鑑定士が調べた結果、本物であると判明しました。何重も偽装がかけられていたため手間取ったとのことです」


「手間取った? ノアはそんな様子なかったわよ」


「それも後で聞こう。イサベル、これを見つけた時の詳細を教えて欲しい」


 偽装? 何それ美味しいの? だ。

 【鑑定】のレベルは4から一向に上がってくれないし、国のお抱えの鑑定士がいるのならば俺なんかよりよっぽど優れているはずだ。バグか何かじゃないだろうか。


『ノア、ノア。声は出すなや』


 びっくりした。

 頭の中に響くように神楽の声がして0.1ミリくらい飛び跳ねてしまった。すぐに自分を押しとどめたからか誰にもバレてはいない……ヨシッ!


『視界の右端にバツの印あるやろ? そこに焦点を合わせてみてや』


 こう、か?

 焦点を合わせて見ると口がマヒした感覚を覚える。


『あ? 何だこれ』


 話してみると口は動かないが喋れている状況。凄く気持ち悪い。


『おっ喋れるようになったみたいやね。【意思疎通】なんてスキルを見つけたんやけどどうなるんかなって思ったらまさかの直接対話ってな。でも口の動きバレんから隠れて話をするのが楽やね。……ところでリウちゃんの視線をめっちゃ感じるのやけどそっち見るの怖くてしゃーないが』


『安心しろ、俺も感じてる』


 目は仮面で隠れてるし、口は動いていないし、バレるはずがないだろう。俺が話半分に聞いてるのはいつものことだし。

 リフルが頭を撫でて欲しそうにするので試しに動かして見ると普通にできた。とすると動かないのは本当に口だけなのだろう。


『これ、普通に話したいときはどうするんだ?』


『さっきと同じことをするだけや。でもこれクールタイムが長いから後で頼むな』


『了解』


『で、や。【鑑定】の話なのやが、ぶっちゃけ今何レべや?』


『【鑑定】は4だな』


『実はな、わしも2なんやが……あの宝石【鑑定】できたんよな。それで一個説が思い浮かんだんやが、どうもわしらの【鑑定】の取り方、普通とちゃうらしいねん。わしはノアに教えられた通りに手に入れたから【観察】を経由した。やけどギルドで講習を受けたら直接【鑑定】が手に入るらしいのやわ。プレイヤー、異邦人は講習のテストに合格したら簡単に取得できるみたいやな。この世界の人はそうもいかんみたいやけど』


 一息に喋ってくれた神楽の話に耳を傾けながら俺はすっと目を閉じた。

 ……知らねぇよそんなの。ギルドにたどり着くまでに何日かかったと思ってるんだ。


 100%自分の責任なのだが、神楽の言った通りだとしてどうであるのか。


『…………要するに、苦労して獲得した方が強力なスキルを手に入れられるってことか?』


 久しぶりに頭をフル回転させて答えを導き出す。

 ようやく、神楽の言いたいことが分かったと俺は口元に指を置いてにっと笑った。


『ご明察。少なくともわしはそう考えるね。ノアは知らんと思うけどアルウェルにはスキル屋さんってのがあって、スキルを買うことができるんや。金は張るけどな。例えば【言語理解】……とか?』


『!!』


『まだティーちゃんらと話せへん原因はそこら辺を詳しく調べたら分かるかもしれんな。わしは、ティーちゃんらと話せる可能性があるのはノアの持ってる方やと確信しとる』


 そう話を聞くと、俺は放浪者で良かったと思う。なぜなら俺は面倒くさがりだから。スキル屋で【言語理解】を見つけたら絶対買うだろうし、それ以外のスキルに関してもそうだと思う。


『待てよ、じゃあ俺の持つスキルは大体強化版ってことか?』


『そうや、と言いたいとこやけどスキル屋に売ってなかったりする攻撃系のスキルは自分で取得するしかないから皆強化版やろうし、直ぐに取れそうなやつは強化版やけどそれが普通……みたいな感じちゃうかな。あとレベルの5ごとに貰えるスキルは強化版やなさそうや』


 なるほどな、と頷く。そもそも攻撃スキルは俺も1つしか持っていないし、あまり持っていないものと考えても良さそうではある。


『ちなみに【言語理解】はどうやって取ったんや?』


『分からん。が、確かディック……ゴブリンと素手で殴り合った後にもらえた気がする』


『ちょい待ちツッコミどころ満載やないかい』


『俺がログインして5分もなかったんじゃないか?』


 神楽が今度やってみるか……? と小声で呟いたのを俺は聞き逃さなかった。良ければディックを紹介するぞ?


『あ、ディックで思い出した。ジンは絆って知ってるか?』


『何一昔前の少年漫画みたいなことを』


『実はゴブリンと殴り合った後【異形と分かり合えし者】っていう称号を貰えて、モブの好感度が最初から少し高めになる』


『条件は』


『こっちも確かゴブリンと殴り合った後に貰えた気がする』


『……』


 そういや解放条件は口外してはいけないとか制限はあるのだろうか? 自力取得で強くなるのだったら広まれば皆強くなって意味がなくなるし。


『【意思疎通】のお陰やろな。まだそこまで手回ってないんやと思う』


 俺の思考を呼んだのかと思う程的確に質問に答えてくれた。俺の周りに超能力者が多くて困る。

 リウならまだしもルウまで俺の考えていることを先読みしてくるからな。……俺が分かりやすいだけか。こう見えても職場ではミステリアス系と言われてるんだが。


『あ、ノア質問されてんで』


『え?』


「――よね?」


「ああ」


 すぐに先程と同じ手順で【意思疎通】状態を解除する。神楽の声に集中していたために全く聞き取れなかったが、イサベルが俺に質問を投げかけていたらしい。質問と言っても最後が確信めいていたのでまあそれっぽく返事をしておく。

 リウ達からの視線が痛かったのでそちらを向くとリウとルウは訳が分からないといった表情をしていた。俺も分からない。


「確かに【鑑定】を持ってたり共通点はあるけど、ノアは変な名前じゃないし、何よりモンスター達相手に慕われすぎているわ。異邦人が来たと確認されたのは精々1週間前でしょう? 先祖の中にいたって可能性の方が高いわよ」


「だよなぁ」


「??」


 ええと、何の話だろうか?

 確かにノアは変な名前じゃない。異邦人の中には変な名前の人はたくさんいる。


「ギルドカードを照合した際にノア様とジンラク様はカサヴェで、リウ様とルウ様はここ、ナルージアで初登録をしたようでした。異邦人はアルウェルで登録をするよう案内されているはずなので異邦人の可能性は低いですね。カサヴェは海にも近いので違う大陸から来たのではないでしょうか」


 王様の隣に控えていた誘魔の宝石を王様に渡していた執事が淡々とした口調でそう述べた。

 もう、リウとルウは合流した時に登録を済ませていたんだな、くらいにしか思わなかった。やらかしたのは俺だけじゃない。魔法の言葉だ。

 ルウは姉に従っただけなのだろうが……いつものことなので気にしない。


 どうやら俺たち、NPCロールプレイをしなければならないらしい。




 **



 

「主任、あの、思ったよりもナルージアに着くのが早かったんですが」

「何人だ?」

「スタッフが遊びで織り込んだ未亡人っぽい夫人を助けてやるルートで二人、一直線に来た人が二人の四人です」

「はぁ!? 未亡人ルートはルドレイに見つけてもらえるレベルの活躍をしなきゃならんかっただろ!? しかもそっから本屋まで行ってイサベルの好感度を上げなきゃならん一番の鬼畜ルートだったはずだろ!」

「職業放浪者なんですよね、彼。アルウェルには寄ってないみたいで、【異形と分かり合えし者】のお陰で好感度はクリアされたんだと思います。あと未亡人じゃなくて未亡人っぽい、です」

「主任~! 例の彼と一緒にいるもう一人が【意思疎通】を取得してたみたいっす!」

「あれはまだログの管理できてないから今度のアプデでって話だっただろ!? 使われたのか!」

「例の件でばたばたしてた時に紛れ込んでたみたいっすね。すぐ確認したんっすけどログはないし既に使われたっぽいっす」「主任!」

「今度はなんだ!?」

「爆速で来た二人組、今話題の男の娘系配信者みたいです!!」

「お前の趣味に口出しはせんが公私混同するな!」

「え!? まじっすか!! 俺もファンなんっすよ!」  

「やっぱ配信機能追加するべきですって。てかします」

「残業覚悟! 俺も付き合うっすよ、先輩!」

「……もう好きにしろ」

 




 *

 


 

 名前:ノア Lv17

 職業:放浪者

 種族:??


 【HP】 125/125〈+12〉

 【MP】 50/50


 【STR】 36

 【VIT】 25〈+30〉

 【INT】  25

 【MND】 25

 【DEX】  25〈+45〉

 【AGI】 134〈+10〉

 【LUK】 77


 残り(+37)


 ◇称号

【ギャンブラー】【異形と分かり合えし者】【先駆者】【勇なる者】【食を楽しむ者】【勇者候補】


 ◇スキル(SP17)

 ・攻撃系

 【一閃】

 ・鑑定系

 【観察Lv5】【鑑定Lv4】

 ・収集系

 【採取Lv3】

 ・その他

 【探知Lv3】【挑発Lv2】【隠蔽Lv1】

 ・常時発動

 【言語理解】【勘】


 ◇特殊スキル

 【図鑑2%】


 ◇装備

 ・頭

 紫狐の仮面〈AGI+10〉

 ・胴

 双蛇のローブ〈VIT+30〉

 ・指輪

 双蛇の指輪×3〈DEX+45〉


 ◇絆

 ディック(ゴブリン)

 エフィ(角兎)

 レフ(角兎)

 ??(土狼)


 

 *


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