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15 「人違いでは……?」


 さてやっと辿り着いた王都。流石に今までの街よりも大きく、人通りも多い……のだろう。馬車が二台程走って尚余裕のありそうな道幅を見て推測する。

 真夜中の現在、酔っ払い以外誰もいないからな。


 王都だからか町に入るための門は閉ざされており、冒険者ランクがC以上でないと入ることが出来ないのだとか。俺たちはランクを上げたりしていないので一番下のEのまま。いや、双蛇を倒したからDになっていたんだったか。

 まあそんなことで普通なら入れないはずの俺たちだったが、ここではイサベルが大活躍した。流石王女、顔パスで付き添いの俺たちまで入れてくれたよ。さすがにバイトリザードの八岐にはぎょっとしたようだったけれど。


「八岐、ギルドで登録しといた方がいいんじゃないか? 何かあった時に必要だろうし」


「せやな。あとちゃんとした首輪、も買ってやらんとやしな」


 なぜ首輪のあとにちょっと間があったのかを聞く勇気は俺にはない。

 八岐はそれを聞いてぶんぶん首を横に振っていたのだが、見なかったことにする。

 

 俺たちは人気のない王都を見渡し、どの道こんな時間では家も買えるはずがないなと話す。そういうことで、とイサベルたちと一旦わかれて明日どこで落ち合うかの話に切り替えようとした。


「あら、あたしも行くわよギルド。依頼達成の報告をしなくちゃ」


「依頼なんて受けてたのか」


「出してた、の方ね。王都までの護衛依頼を出しといたの、指名でね。ジンラクは途中からだったからプラスで報告しないと」


 俺たちは呆然とする。

 いつの間に、というのと、あまりにも裏がありそうな話じゃなないか? というもの。要は話が進むのが早すぎるということだ。

 自慢じゃないが、もふもふに関すること以外ならば普通の人以下にまで知能が下がると思う。だから服飾関係の仕事をしている現在、もふもふがこれを着たら……などと思考にもふもふを絡ませて仕事をするようにしている。これで作業効率が1.5倍(当社比)程上がったのだから我ながら凄まじいものだと常日頃感心している。


「イサベル様は隠し事が多いからな。情報はいつも後出しだ」


「あらお疲れ様、急に現れるなって何度言ったら分かるのかしら?」


 白馬たちを王都の厩に返却しに行って来たフォルスが帰って来た。

 なぜかところどころをベタベタにして。


「ちょい! なんでそんなベタベタなんねん!」

 

「自慢じゃないがぼくは動物に嫌われやすい性質でね、歩くたびに近くにいた馬にくしゃみをかけられただけだ」


なるほど、俺が動物に好かれやすいと言った時若干羨ましそうな顔をしていた理由が分かる。

称号なんてなくても俺は元々好かれやすい質であるのでいまいち共感はできない。

 

「絶対、それだけやないやろ」


 くしゃみにしてはその、なんだ。少しばかり匂う。

 まさかと足の方を見てみると水に突っ込んできたのか濡れていて、俺の勘が当たっていることを示していた。


「馬のふ――」


「フォルス、それ以上は乙女的にもアウトよ」


「乙女でなくてもアウトだろ」


 俺はついそう突っ込む。神楽はケラケラと笑い、フォルスは若干戸惑っているようだった。

 俺が尋ねるべきかと躊躇っているとイサベルがフォルスの頭をペしりと叩いた。


「だからいつも言ってるでしょ。性別なんて気にしない人もいるって」


「……だってイサベル様は気にしてるし」


「否定はしないけどね」


 フォルスは嬉しそうな、悲しそうな表情で笑った。

 その表情に知り合いの姿を重ねてしまい、俺は思わず神楽の影に隠れた。神楽も俺の行動の意図を察して八岐を貸し出してくれた。


「先に、ギルドに向かう」


「あいあい」


「え、ちょっと!?」


 俺はただ、逃げたい気持ちしかなかった。



 



「あ、ノア兄!」


「ひっ……人違いでは?」


 そいつはいた。


「ふっふ~。そう言うと思って秘密兵器を探して来たんだよ! ルウ、例の!」


「ノア兄さんお久しぶりです、姉がご迷惑をおかけします……」


「……」


 なぜバレたんだろうね。

 

 目の前には見た目のよく似た男女がいた。一人は長い髪をポニーテールにして大きな剣を背に担いでいる、活発そうな女の子。もう一人は長い弓を背に担いだ苦労人オーラが出ている男の子。

 俺と違い髪色以外リアルほぼそのままの姿の彼らは俺が全速力で王都に来る原因となった双子だ。というか原因はその片割れなのだが。


 ルウが弓筒の他に背負っていた籠を俺にそっと差し出す。開けてみろとのことらしい。


 渡されたそれはずっしりと重く、もぞもぞと動いている。

 某動物園番組よろしくそっと蓋を開いて覗いてみる。そこには綿が詰まっていた。


「め?」


 いや、そうじゃない。これは……

  

「リフル! リフルじゃないか!!」


「めめ!」

 

「リフルぅぅぅぅぅ」

 

「めめぇぇぇぇぇ」


 籠から飛び出してきたリフルを軽々と受け止め、感動の再会を喜び合う。

 VR機器の性能が向上したおかげで元々もふもふだったのが更にもっふもふしてそれはもうもっふもふでやばい。

 しばらく頬をすり合っているとルウが説明をしてくれた。


「リフル、最初の町の牧場にいたんですよ。ノア兄さんなら見つけてないはずがないと思って、そしたらリウが『ノア兄のことだからきっとイレギュラーが起こって大分先まで進んでるんだよ! 早く向かうよ!』って」


「ほんと、リウ、お前なんなの怖い」


「やん、そんな褒められても何も出ないよ!」


「くねくねするな、肌が見えるだろ。スカート履いてるんだし」


「相変わらず優しい!」


 俺はダブっていた双蛇のローブをリウに着せてやり、目に毒な服装を隠すことに成功した。

 それよりもリフルだ。

 リフルはもう知っての通りエイプリールフールの日にテイムした子で、1人が苦手なタイプだから牧場のどこかしらにいるだろうと辺りを付けていたのだが、最初の町にいたとは。

 もふ度は歴代一位で、丸まって寝る姿は完全に綿あめである。あ、電気羊という種類なのでたまに感電するがそこはご愛敬である。


「ノア、他の人に引かれてるみたいやけどどないした……って、リウちゃん!? あ、あとルウくん」


「あ、神楽さん! やっぱりノア兄と合流してたんだね!」


「最初の町でふらふらとギルドから関係ないところに行ったので声をかけるべきか悩んだんです。追いかけようとした時にリフルを見つけたので結局見失ったんですけど」

 

 まさかの発言に流石の神楽は苦笑した。

 結果的に声をかけなかったお陰で俺と合流することができたのだから、運はいいのだろう。


神楽の後ろから若干たじろぎながらこちらの様子を伺うイサベルと目が合う。


「ええと、ノア。そちらの二人は?」


「わ、綺麗な女の人! 初めまして、ノア兄の妹、リウです! こっちは弟のルウです!」


「甥っ子たちだ、俺は姉しかいない。リウ、ルウ。こちらはイサベルさんとフォルスさんだ。お前たちの中で一番丁寧に接しろ」


 そんなことをしなくても、とイサベルがリウの褒めた言葉に少し照れて握手を交わした。

 リウはフォルスとも握手をしてぱぁっと顔を輝かせた。


「フォルスさん、女性の方なんですね! 私、かっこいい女の人にも憧れてるんです!」


「む……ん? お前……男?」


「わ……! 良く分かりましたね!」


「フォルス、失礼でしょう。初対面の人に……え? わか……え?」


 リウはローブの裾をちょいと摘み、ぺこりとお辞儀をした。


「ノア兄の妹、性別男のリウです」


 そう言って、満面の笑みのまま指でハートを作ってみせた。リウはいわゆる男の娘というやつである。

 イサベルは俺と神楽の顔を見比べどうやら本当らしいと理解したようだった。

 フォルスの仕草1つ1つが男らしいのに対し、リウはまるきり女のよう。俺が二人を当てはめてしまうのは無理もない事だった。ちなみに、リウはリアルでも女の子のような恰好をしている。


 最初は周りから何と言われるか悩み、中途半端にバレ、いじめられて家出していたのを引き留めたことから始まった。その時俺は姉さんと話し合い、しばらく俺の家で過ごさせることにした。

 女の子らしい服を着たくても買いにいくのが恥ずかしいと泣いていた彼に服を作ってあげたことが一番大きかったと思う。そもそも、彼の趣味というか心の問題に俺が踏み込むべきではないと分かっていたので不用意に質問しないで普段通り接していたのもあったかもしれない。

 あと俺がしたことと言えば本当に何もないのだ。俺の作った服を着て自信を持った彼は次帰ってきた時彼女になっていた。表情もまるで女の子だったし、仕草も女性のようだった。


 そこからはほぼ自分の力でこれが自分なのだと両親や学校を説得し、今ではモデルにスカウトされるほど。

 俺に恩を感じているらしく度々家に凸ってきては構い倒してくる。

 モデルの仕事を始めてから配信者としても活動し、誕プレで海外の高級ブランドのぬいぐるみをくれたときは普通に引いた。調べたらウン100万だ。


 引っ越したよね。


「嘘でしょ……女のあたしより可愛いって……」


「イサベル様、大丈夫。ぼくよりは可愛いさ」


「フォルスは黙っていてくれないかしら?」


「酷くないかい??」


「フォルスさんも可愛いですよ~!」


 


 *

 


 

 名前:ノア Lv17

 職業:放浪者

 種族:??


 【HP】 125/125〈+12〉

 【MP】 50/50


 【STR】 36

 【VIT】 25〈+30〉

 【INT】  25

 【MND】 25

 【DEX】  25〈+45〉

 【AGI】 134〈+10〉

 【LUK】 77


 残り(+37)


 ◇称号

【ギャンブラー】【異形と分かり合えし者】【先駆者】【勇なる者】【食を楽しむ者】【勇者候補】


 ◇スキル(SP17)

 ・攻撃系

 【一閃】

 ・鑑定系

 【観察Lv5】【鑑定Lv4】

 ・収集系

 【採取Lv3】

 ・その他

 【探知Lv3】【挑発Lv2】【隠蔽Lv1】

 ・常時発動

 【言語理解】【勘】


 ◇特殊スキル

 【図鑑2%】


 ◇装備

 ・頭

 紫狐の仮面〈AGI+10〉

 ・胴

 双蛇のローブ〈VIT+30〉

 ・指輪

 双蛇の指輪×3〈DEX+45〉


 ◇絆

 ディック(ゴブリン)

 エフィ(角兎)

 レフ(角兎)

 ??(土狼)


 

 *



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