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僕は全てを極めます!  作者: ゆるん
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世界最強は鹿と戦う

 自らの体にある魔力を一部だけ解放し、右手を魔力で纏わせる。普通は、この量の魔力は耐えきれない。何故なら、魔力回廊には限度があるからだ。一定か所を集中に魔力を集めると、そこの魔力回廊は崩壊する。


 でも、魔力回廊は鍛えることができる。明らかに僕の成長速度は異常だ。それは、僕自身にもわかる。


 今の僕なら、この程度、造作もない。


『人の分際で、よくぞここまで』


 キュームは、その角を光り輝かせ、僕と相対した。魔力は、殆ど互角。キュームも魔力回廊は同じくらい強いようだ。流石、何億年も生きているだけのことはある。


『まるで、ホイヒェライを彷彿とされる魔力だ』


 キュームの周りに、五十個ほどの魔法陣が描かれ、キュームの角自身も魔力を強める。


「おいおい、冗談かよ」


 度肝を抜かれつつも、僕も右手の魔力をキュームと同じくらい強め、周囲に五十ほどの魔法陣を用意する。


 相対する魔法陣同士は、発動しても発散するだけだった。爆散の火花が重力に従う。

 すると、僕の顔の前に魔法陣が出現する。座標を描いたか!これは防げない。


 右手を反動にして後ろに後退する。


 それでも避けきれないので体を反らしてギリギリの合間で避けた。


 このままだと頭が地面に着いてしまうのでその前に手をつく。その勢いのまま後方転回をする。危ねぇ……前世でマット運動しといてよかったわ。


 僕は、うろ覚えながらも前世で習得した後方回転を思い出し、実行した。


 足が地面に着く前に物理攻撃対応の結界を敷き、その反動でキュームに一気に突入する。


 余りの速さに、キュームは目を追えてない。横顔をそのまま蹴ろうとしたが、防がれる。

 足の面積分、結界が発生した。


「おかしいな。しっかりと捉えたはずなのに」


『……恐ろしき人の子よ。既に貴様は私を超えていたか』


 たった一挙の行動。それだけでキュームは僕の力量を知った。全く、一番怖いのは経験だよ。


『……私の周りには、近づいたら発動する結界が置かれている』


 なるほど、それなら僕の攻撃が届かないのは納得だ。


 でも、自動結界というのは、それ相応の魔力が常時減少する。それでも、先程の結界は恐ろしく硬かった。


 ……コイツも、どんだけの魔力が持っているんだか。


『───貴様に敬意を評して、私のとっておきをあげよう』


 急に空気が変わる。鹿の魔力が急激に増加する。本気か。

 僕も防御の構えに入る。どうやら、やばそうだな。


 冷や汗が垂れるも、しっかりと鹿を見据える。

 鹿の背中に羽が生え、天使を彷彿させそうな神聖さ。これがコイツの本気!後ろには巨大な魔法陣。


 ……これは、消せそうにないな。

 魔法陣から獅子の顎が見え、咆哮のような構えを見せる。


 鹿なのに獅子なのかよ!


 内心ツッコミを入れても、状況は変わらない。


『死ぬなよ───『獣王砲(じゅうおうほう)』』


 キュームの言葉と同時に、獅子の咆哮が発動。凄まじいうねりをあげながら、僕に襲い掛かる。

 僕は、先程から密かに描いていた魔法陣を表にだす。


「『六界(りくかい)』」


 六本の魔力の柱が僕を中心にして円状に出現。僕は右の所にある柱を掴む。すると、柱が変化し、光り輝く槍と化す。


「『六鈷杵(ろくこしょ)』」


 僕がその槍の名前を言うと、光が解け始め、槍の形状が見え始める。


 僕は、その槍を投げる。すると、獅子の咆哮を消滅させ、キュームの目の前まで来たところで、ポトンと地面に落ちた。槍はその後、粒子となり消える。


 キュームは唖然としている。


 僕は戦意を消失させ、魔力も封印。

 そして、その場に座る。といっても、地面は湿っているので魔法で椅子を作る。


「……戦いを受けた僕も僕だけど、なんで君は戦いを誘ったんだ?」


 疑問だった本音を、目の前の鹿にぶつける。


『……新たな『厄介者』候補を見たかっただけだ』


 呆けていた鹿は僕の問いに答えてくれた。どうやら、ようやく我に返ったようだな。


「『厄介者』?悪いが、昔話をされても僕は分からないぞ」


『その内分かるさ。否応でも』


 なんだか、意味深なことしか言わない鹿だな。まるで、ろ〇がいのジジ……


『なにか悪口を言ったか?』


「いや、なんでもない」


 図星だったが、なんでもない顔をした。すると、キュームは懐かしさを覚えた笑みを浮かべた。


『ホイヒェライもそうだったが……なんでもないと言うほど、なにかあると私は思う』


 僕はホイヒェライと気が合いそうだ。というより、キュームも落ち着いて元に戻ったな。


「そういえば、あの自動結界真似していいか?」


 それと同時にキュームは驚きの顔を向ける。そして、その目を包み隠さず言葉にして言う。


『貴様の魔力は、確かに文句は無いと言えるが……でも、難しい技術だぞ?』


 その言葉に、僕は思わずフッと苦笑してしまう。


「どうやら、僕はかなりの格下だと思ってるんだな」


 再度、僕は魔力を解放させ、それを両手で包む。凝縮させ、その魔力を少しだけいじる。両手を広げ、魔力をその場に解き放つ。


 暗かった印象の森は、魔力を放出させた途端に光り輝く。木々は青々しく生息し、花々は美しく咲き乱れる。


 鹿は絶句。


『…………ま、まさか……"聖魔法"……?いや、しかし、聖魔法は滅びたはず……』


 キュームはボソボソと呟いている。僕は、浮遊魔法を使って飛んできた小鳥に花をプレゼント。喜んでくれているみたい。


「どうだ?驚いたか?」


 キュームはもはや思考を放棄したようだ。しかも、その諦めはどこか慣れているような……


『……ホイヒェライの時もそうだったな……』


「そういえば、そろそろホイヒェライのことを教えてくれないか?」


 たまに一人の世界に入り浸っていしまっている鹿に文句を言う。


 そろそろ僕は飽き飽きしてしまう。


『貴様は、文献で調べようとしているのではないか?いちいち私の口から説明せんでもええではないか。それに……もう、終わったことなんだから』


「そう思ってるんなら、いちいちホイヒェライのことを言わないでくれます?」


『それはすまないな。貴様とホイヒェライが重なってしまってな』


 さて、僕も文献でホイヒェライを調べたいと思うからそろそろ帰るとするか。


 鹿に踵を返し、去ろうとする。その背中を、鹿はずっと見ていた。どうやら、向こうも僕がもう帰ることを知っているようだな。


 僕が思わず振り返ると、キュームは物悲しそうな顔をしていた感じがした。何故だろうな、無表情なのに。


「また来る」


 その一言だけを言って、また僕は帰り道を歩いた。さらに、僕の周りにキュームが使っていたのを少し強化した児童結界を発動。背中には、歓喜の視線が感じた気がした。


 道中でも、魔獣が襲ってくるが、キュームと比べれば、全然だった。もしかしたら、魔獣ではもう満足できないかもな。


 上を見上げると、空には遠くの方に青き恒星が輝いていた。辺りも、もう暗い。帰ったら、心配されるかな。


 足を少し早め公爵家へと急ぐ。庭には、召使がまだ庭の整備をしていた。こんなにも暗いのに、まだやってるとは。仕事熱心なのは良いことだけど、仕事のし過ぎで体調不良になったらどうなることやら。


 召使にさっさと家に入ることを促し、僕も家に帰る。


「おかえりなさい、ハージュ様。お風呂にしますね」


 レニーは、落ちついた表情で僕を見て、すぐに最善の行動を移す。


「ハージュ様!ハージュ様!」


 突然現れたミールイは尻尾を振って可愛らしく飛び跳ねている。


「なんだ?ミールイ」


 すると、ミールイは目を輝かせ、歓喜の声をあげた。


「毒中毒蘇生の魔法が完成したよ!」


「…………え?」


 絶句したのは、今度は僕のようだった。

主人公は、自意識過剰? でも、本当の事だし……。自己評価完璧っていえばいいかな?

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