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僕は全てを極めます!  作者: ゆるん
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世界最強は教える

 日々、僕の魔力は増え続けている。それが、最近の僕の悩みだ。


「どうしたのですか?御主人様」


 レニーは、三年も経ったからか、随分と大人びたが、それでもまだドジっ娘メイドは健在なのだ。


「いやさ、魔力が日に日に増え続けているからどうしたらいいんだろうって」


「なるほど、なるほど……私に常時魔力を与えたらどうなのでしょうか?」


「いや、死ぬだろ。それ」


 魔力を人に与える魔法というのは、存在する。しかし、僕の魔力は膨大だ。それを制御できる自信は僕にない。人に魔力を与え続けていると、どうなるか。四肢が破裂し、原形が留められない。俗にいう、魔力中毒だ。


 魔法で治すことができず、そのまま死に至る恐ろしいものだ。


 そんなことに、レニーを晒すわけない。


「でも、魔力中毒を治す魔法を治せばいいんじゃないですか?」


 僕のベットの下から、ひょこっとケモ耳美少女のミールイが出てくる。なんでそこから出てくるんだと疑問を口に出したいところだが、それをぐっと抑えてミールイに問う。


「そんなご都合主義の魔法が生み出せたらなー」


「そもそも、魔法ってどうやって生み出すんですか?」


 この世界の住民は、長寿だ。だから、僕のように早熟な人はそう居ない。前世で例えるなら、5歳の時に作曲したモーツァルトくらいに凄いだろう。いや、多分もっとすごい。


 この世界では、100歳で成人と呼ばれる種族が僕だ。300歳が平均寿命の僕の種族は、前の世界とは常識も違う。


 9歳で上級魔法を使う子供は世界的に見て、それだけで世界最高峰だ。


 だから、レニーたちが魔法をあまり知らないのは当然の事なのだ。


「まあ、ちょっとした話なら……な」


 §


 まず、魔法を使うには魔力が必要だ。魔力の素はマナで構成されていて、マナは血液みたいに体の中に流れている。話が脱線するけど、そのマナが通る管の事を魔力回廊という。なんでマナが通るのに魔力回廊というのかというと、それはとある頑固な研究者が、魔力回廊を「これは魔力が通っている管だ!」と言って頑なに譲れなかったらしい。


 そして結局、魔力回廊という名前になったのだが、のちにそこはマナが通ることが知られていった。もちろん、魔力回廊の名前を変えようとする運動があったが、既に俗に魔力回廊と浸透してしまったがために、その運動は衰退していった。


 話を戻そう。


 陣は、魔法を使うに必須のものだ。そして、陣を描くには、魔力と、技術が必要だ。魔力が無ければ陣は描けないし、魔力があっても陣を描く技術が無ければ陣は描けない。


 そして、新たな魔法陣を作るには、既存の魔法陣を組み合わせるのだ。様々な陣のパターンから、魔力に反応する陣が幾つか存在する。


 例えば、螺旋を描く陣や、閃光を放つ陣などがある。合計でそれらは1500ものパターンがあるらしい。その1500の中の陣のパターンから色々な物を組み合わせて、ようやく魔法が完成する。


 といっても、陣をただ組み合わせるだけでは魔法は完成しない。陣は、くっつきやすいパターンのやつと、くっつきにくいパターンがある。くっつきにくいパターンの陣を隣り合わせにしてもその魔法は発動するにかなりの魔力を有する。


 強力な魔法は、このくっつきにくいパターンの陣を無理矢理、描いているため、発動するためにかなりの魔力が必要ということだ。


 魔力が少なく済む魔法は、使用している陣のパターンが少なく、極力くっつきやすいパターンの陣を使っている。


 他にも、陣の形は四つある。一つは円型の陣。これは大体が攻撃系に属する陣だ。というのも、攻撃系の陣のパターンの殆どが扇形であるから、攻撃系の魔法を作るときは大体が円形になる。


 一つは正四角形の陣。これは防御が主な魔法陣だ。正四角形の陣が防御なのかという理由は、先程のものと酷似しており、防御系のパターンを有する陣は、殆どが正四角形だからだ。


 一つは菱形(ひしがた)の陣。これは毒系統と回復系統であり、それが菱形である理由は、毒系と回復系のパターンの陣は、正三角形が多いからだ。そして、正三角形のパターンの陣は、菱形の形が一番くっつきやすいのだ。


 一つは、台形の陣。この陣が意味する系統は、自然。自然系は、これはまた厄介な陣のパターンであり、他の陣とくっつことがない。だから、単独の陣と言える。そして、自然系統のパターンの陣は、全部が台形だ。


 この四つの形が基礎となっている。


 §


「でも、魔力中毒を無くす魔法っていうのは、難しいもんだぞ?」


「そこは───」

「「私たちに任せてください!」」


 二人同時に声がそろった。こうなってしまった以上、僕の経験上引き下げることはできないだろう。


 二人は、意外と頑固なのだ。



 時は少しだけ経ち、昼。


 僕はホグラス兄さんと話していた。


「そういえば、ハージュ。なにやら君の専属メイドの二人が忙しそうにしているが、なにをしているんだい?」


「いえいえ、二人は少しだけ魔法の勉強をしているだけです」


 すると、ホグラス兄さんは、興味が入ったのだか、驚いた声色で話す。


「二人ともまだ40歳もいくかいかないかぐらいだろう?それで魔法の勉強か。それは勉強家だね。どうだい?ハージュ、二人とも、僕の配下にくれないかい?」


「はは、ホグラス兄さん。冗談はやめてよ。僕はまだ小さいんだから兄さんの冗談を真に受けてしまうよ」


「ふふ、僕は本気で言ったんだけどな」


 やっぱり、そう譲れないか。とホグラス兄さんは正しい所作で紅茶を飲んだ。僕もそれに続いて紅茶を飲む。所作に関しては魔法でホグラス兄さんの真似をする。


 二人を譲るときなんて、毛頭ない。二人は愛おしく堪らない僕の従者だ。簡単に譲るなんて、僕はできないだろう。


「にしても、僕は君も化物だと思うよ」


「……それは誉め言葉として受け取っていいでしょうか」


 腕を組み、僕を見据えるホグラス兄さんの目は、自身に満ち溢れていた。


「まだ赤ん坊なのに魔力を感じ取り、こんなにも巧みに言葉を話す。僕はいつか君は英雄になることが目に見えて分かるよ」


「……僕は、そんなことを平然と言うホグラス兄さんのことを化物だと思うよ」


 二人で笑いあうと、そこに突如として音が現れる。それは金属の音。おっと、結界が割れてしまったようだ。そこに目をやると、次男と三男───ジュット兄さんとペーブス兄さんの決闘が見えた。


 二人は仲がいいのか悪いのか、いつも決闘をしている。しかも、真剣で。毎回うるさいので、決闘をする際は防音結界を張っている。


 でも、毎回その結界は壊される。それほどまでに、あの二人は凄まじい剣技なのだろう。


「動きが鈍ったね!脳筋兄さん!」


「兄さんと敬称するのは良いことだが!脳筋は余計だ阿保!」


 ジュット兄さんに魔力が見られた。まずい!公爵家は、優れた血を有しており、魔力も国内折り紙付きだ。そんな人が魔力をだして戦ったら……


「やるきだね!脳筋!」


 ベーブス兄さんも魔力を出し始めた。これは……。


「二人とも!やめないか!結界が壊れてるんだ!」


 ホグラス兄さんが注意しても、二人には聞こえずに魔力を放出し続けている。この二人がぶつかりあったら……流石にマズイ!


 ここは仕方ない。力を少し出すか。


 僕の体の中にある微細な魔力を手に集中させる。陣を(つむ)ぎ、魔法の放射が完了。


 そして、二人も動き出した。僕もそれと同時に動き出し、二人が交わるところまで駆け抜ける。


「おりゃあああああああああ!」


「はあぁあああああああああ!」


 二人が剣を振りかぶるその刹那───


「二人とも───」


 僕は重力系統、『圧倒的最重殴打(ギムラズ・ダブラス)』を両手に展開!


「───いいかげんにしろっ!!!!」


 二人の頭を軽く殴る。それだけ二人は地面に顔を凄まじい速度で叩きつけた。


 多分、これで二人は気絶しただろう。あとは、あと始末なのだが───ホグラス兄さんが近づいてきた。


「あっ、に、兄さん。これは、その、なんていうか、か、体が勝手に!はい。体が勝手に動きました!」


 ホグラス兄さんは僕の肩をがしっと掴むと、まじまじと僕を見た。


「あ、あの……ホグラス兄さん……?」


「ハージュ!」


 や、やばい……怒られる……?


 目を瞑り、心の準備をしていると、ホグラス兄さんが声をあげた。


「───すごいじゃないか!」


「……え?」


 僕は、そんな素っ頓狂な声を漏らした。

ブクマおなしゃす

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