世界最強と部活勧誘
「おら突き進めぇ! 一年生を捕らえるぞ!」
拝啓、母様。父様。僕は今、学園にきて人波の渦に巻かれています。そして、皆さま。どうしてこなったかというと、それは三十分前に遡ります。
§
三十分前。
「ねえ、ハージュ。部活知ってる?」
テーラーと授業終わりの時間で雑談をする。そして、このような話へと変わった。
「……この世界でもあるの?」
「えっ? この世界?」
「ああいや、なんでもない。それより、部活って何?」
危なかった。
「部活はね、同じ競技などの授業で行うものの延長線として、上級生の人たちと協力して行うものなんだよ! 例えば、魔術研究部だったら魔術のことを上級生たちと研究するとか自分の好きなことをとことんやりつくものなんだよ!」
……あれ? こいつってこんな熱血だったっけ?
「……随分と楽しそうだね」
テーラーは前のめりに、だから僕は必然と後ろへと下がる。だが、僕の言葉に、赤い少女は(赤ずきんでは決してない)コホンと咳払いする。どうやら恥ずかしかったようだ。
「と、取り敢えず! もうそろそろ部活の一年生勧誘が始まるらしいから、行ってみる?」
とかいわれつつも、手を握られて強制的に連れていかれる。どんだけこの子は部活が楽しみなのだろう。
ちょこんと、僕は食堂の席へと座る。
「ここでいいのか?」
「うん、あそこの扉から上級生の勧誘が来るらしいけど……」
詳しいのはテーラーも分かっていないらしい。テーラーが指さす扉の向こうは、とても大きく、頑丈そうな扉である。まるで、誰かが何回も壊したかのような補強が何回も繰り返されている。
「さあさあ、今年も集まってきましたね、一年生諸君」
指揮を執るのは、教頭先生のセイ先生だ。真面目な立場に居るはずの先生は、ノリノリで司会を務める。
「今年の一年生は粋がいいですからね~見頃です」
なんか一年生を新鮮な魚みたいに捉えてる人いるんですけど? え?
「では、そろそろ上級生たちがウズウズしているので、これから部活勧誘を開始します!」
突然、空気が重くなり、張り詰める。周りも見てみるが、それは皆も同じだ。
向こうにある扉がグググと軋み、今にも爆発するようだ。それは、魔力が漏れ、殺意すら感じられるほど。……一体、部活勧誘に何があるんだ……?
刹那、扉が限界へと近づき、開かれる。そこから現れるは、モンスター。
「「「う・お・お・お・お・お・お・ぉ・ぉ・ぉ・お・お・お!!!!!」」」
凄まじい怒号で開幕したその狩りは、一年生を部活へ狩りするものだった。
「ねえ……ハージュ……」
呆れたような、諦めたような、放心した目でこちらを見ているテーラーが声をかけてきた。
「……はい」
しかし、僕らはその一年生が狩りをされている姿をはっきりと見ていた。
「最初に謝っておく。ごめんなさい」
ドドドドドドドドドと迫りくる上級生は、鬼のような形相でこちを見つめた。
「首席だ! 今年の首席がいるぞ!」
上級生の目が、こちらに向く。あっ、やばい。顔を振り、放心状態を解く。そして、未だに放心状態のテーラーの手を掴む。
「逃げるよ!」
「えっ? あっ! うん!」
『魔力隠蔽』『疾走』を同時発動!
なるべく生徒に傷をつけてはダメなので、逃げるのが最優先だ。
手をつなぐだけではすぐに離れてしまうので、テーラーを抱っこする。
「えっ⁉ ハージュ⁉」
「ごめん! 今は許してくれ!」
上級生の間をすり抜け、ひたすら誰も居ないところへ駆け抜ける。
そうして、いつの間にか誰も居ない廊下へと出ていた。
「よかった……どうやら撒いたみたい」
「………………うん」
? 変な間が開いたテーラーの顔を覗き込む。それは、真っ赤に燃えていた。それは、髪の毛と見間違うほどの……あっ。
「あっ、ごめん! 今すぐ下ろすよ!」
「(……このままでもいいのに)」
ボソッと、テーラーは声を上げる。もちろん、「なにかいった?」というほど、僕は鈍感じゃない。でも、ここでは何も言わないことにした。
「それにしても、勧誘ってあういうふうに行うんだ……初めて知ったよ」
「いや、私も知らなかったわよ……あんなに過激なんだって……もう追ってこないよね?」
「流石に大丈夫だと思うよ。少なくとも、半径150メートルにはどこにも……え?」
「……? どうしたの?」
……たった今、"存在"が現れた。突然、僕たちの60メートル付近にポツンと現れた。僕は、普段魔力感知をしている。だから、誰がどこに居るのかが手に取るようにわかるのだが……どういうことだ?
「テーラー、身構えて」
「え? なんで?」
「なにかが、向かってくる」
僕たちの方へ……ドでかい"なにかが"こちらへ向かってきていた。
「あれ? 人がいる! ああああわあわわあわわわわわわああ! どいてどいてええ!」
声が聞こえる。そして、その声には、聞き覚えがあった。穢れのない真っ黒な髪の毛。間違いない、あの子だ。
彼女はデカい籠を持って、こっちへ向かってきていた。
僕は一息吸い……
「『運動停止』」
右手をかざし、籠の運動を止めた。ついでに、彼女も。
「あっ! ……あわ?」
どうやら、止まったことがわかったみたいだ。
「こんにちは、タクシーラさん」
「えっ……? ってこの声は……あっ! 前に元后様と一緒に居た……」
「ハージュです。またお会いしましたね」
前にもあったけど、この子はドジっ子なのかな?
「ハージュ、この人は?」
「タクシーラさん、元后様の助手だよ」
「えっ! 凄いお方じゃないの! どうも、テーラーといいます。よろしくお願いします。タクシーラ先輩」
「あっ、よろしくお願いします」
タクシーラさんは人見知りなのか、ごにょごにょと恥ずかしながら挨拶をする。
「で、なんでタクシーラさんはここに来たんですか?」
この人に関しては色々と調べないといけないが、一旦そのことは置いておこう。
「え、えと、元后様にこれを頼まれて……」
彼女の視線の方を向くと、そこにはロボがあった。
…………ロボ?
「えーっと……これってなんでしょうか……?」
あまりピンと来ていないテーラーは首をかしげる。
「あっ、これはメクリア国から輸入してきた、最近ブームになってるレべってやつだよ!」
メクリア国は、ここから遥か西の国、ダグゾン大陸のほうにある国だ。にしても、レべ……か。明らか機動〇士ガン〇ムとかヱ〇ァンゲリオンとかに出てくるでっけえやつなんだけど。
にしてもタクシーラさん、急に早口になったな。こういうのが趣味なのか?
「あ、じゃあ私はこれから部活なので」
「「……部活?」」
僕とテーラーは声を揃えて言った。
「もしかして、部活ってそれ使うんですか?」
「はい! そうですよ。私、レべコン部なので!」
「……レべコン部?」
遅いな! すまんな! なんとかするから!(しなそう)




